健康長寿ビジネスの最前線:2025年、寿命はどこまで延びるのか?(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田和幸2025年は内外共に波乱含みの年になりそうです。そんな中、日本人としていかに厳しい時代を乗り越えるのかが問われるようになっています。日本人の寿命は世界でも最高レベルと見なされていますが、はたして「健康寿命」をどこまで伸ばすことができるのでしょうか。
20年の日本人の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳で、いずれも過去最高を更新しています。とはいえ、いくら平均寿命が延びたとしても、健康でなければ意味がないでしょう。このまま行けば、2100年には、世界人口の4分の1は60歳以上になることが確実視されています。しかし、病気を抱え、薬漬けや寝たきりの長寿では寂しい限りです。
実際、アルツハイマーや認知症患者も増える一方で、「2025年には65歳以上の5人に1人は認知症」との予測も出されています。そうした背景もあり、今後、世界で最も成長が期待されているのが「健康長寿ビジネス」に他なりません。
そんな中、WHO(世界保健機構)では、このところ「エイジテック」を推奨し始めました。各国政府に対して、健康医療への投資、社会インフラ、高齢者向けの住宅や介護サービスの拡充を求める提言を相次いで公表しています。当面、次々に発生する感染症対策も欠かせませんが、長期的に見れば、人々の生命力や免疫力を高めるためにも、「エイジテック」と呼ばれる、「長寿と先端技術の融合」を目指そうという発想は理にかなったものでしょう。
そこで、最近注目を集めているのが、ドミトリー・カミンスキー氏です。同氏は長寿ビジネスの旗振り役の起業家で、モルドバの出身。英国で投資ファンドを数多く起業していますが、その多くは長寿関連です。
彼に言わせると、「大きく延命できる技術はすでにある」「寿命は最低でも50年増やす」「自分は軽く123歳まではいける」「過去最高齢記録は122歳まで生きたフランス人女性ジャンヌ・カルマンだったが、その上を行った人には100万ドルをプレゼントする」。
ちなみに、カルマンさんは1997年に死亡しましたが、100歳まで自転車を乗り回し、110歳まで自活していました。また、117歳までタバコを愛し、チョコレートも大好きで、何と赤ワインは死ぬまで欠かさなかったといいます。
カミンスキー氏の目標は「180歳超え」。多くの投資ファンドを運営していますが、「5年以内により精密な未来人体延命ビジネスを立ち上げる」と豪語しています。現時点の技術で「123歳は確実だ」というのが、彼の口癖です。
彼はメディア向けに未来の延命ビジネスを積極的に語るのみならず、自ら「グローバル・ロンジェビティ・コンソーシアム」と銘打った組織を立ち上げ、長寿ビジネスへの投資を加速させています。このコンソーシアムの一環として「エイジング分析エージェンシー」なる会社も起業。この会社を通じて、シンガポール政府が進める長寿へのプロアクティブ政策を後押しまでするという力の入れようです。
というのも、2015年からシンガポールでは「40歳からのサクセスフル・エイジングのアクションプラン」を導入。具体的には「ナショナル・シルバー・アカデミー」や「シルバー・ジェネレーション・アンバサダー」制度を発足させ、在宅介護や家庭訪問でヘルスサービスの質的向上を加速させ始めているからです。
一方、「アマゾン」の創業社長の座を降りましたが、世界の大富豪であり続けるジェフ・ベゾス氏も「ユニティ・バイオロジー」という企業の持つ老化細胞を除去する技術の実用化を支援しています。これにはシティバンク銀行等の国際的な金融機関も積極な投資を惜しんでいません。シティバンクの報告書によれば、「現在のアンチエイジングビジネスは世界全体で2,000億ドル市場を形成している。ただ、これには医学療法分野は含まれていない。今後、医療ビジネスが広がれば、この市場は一気に拡大するだろう」。
たとえば、骨粗鬆症の治療に対する取り組みも加速しており、25年までに膝の細胞を活性化することで、若返りビジネスにもこれまでにない追い風が吹くものと期待が高まっています。
同様に、普段は眠っているサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)を活性化させることで健康長寿を達成する研究にも拍車がかかっています。カロリー制限や運動で活性化することも可能ですが、赤ワインに含まれるポリフェノールの一種である「レスベラトロール」でも活性化できるとの医学的研究成果も明らかになってきました。病気予防と若返りが同時に可能になるというわけです。
延命効果の期待が高まるレスベラトロールは赤ブドウ、ブルーベリー、クランベリーに多いことは確認されています。残念ながら、赤ワインにはそれほど多くないようです。もし、赤ワインで活性化を達成しようと思えば、1日にボトル100本は飲まねばならない計算になります。これでは延命どころか、早死にしてしまうでしょう。
(つづく)
浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。関連記事
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