【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略 (8)DX(デジタル・トランスフォーメーション)と企業価値向上の関係
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はじめに
前回まで、『人的資本経営』を通じた企業価値向上について考察しましたが、今回からは急速に進化するDXが企業価値向上にどのように寄与するのか、中小企業の経営戦略の視点から考えていきます。
DXの考え方
経済産業省のデジタルガバナンス・コードでは、DXを次のように定義しています。「企業が急速に変化する環境に対応するために、データやデジタル技術を活用し、顧客や社会のニーズに合わせて、製品やサービス、ビジネスモデルを変えるだけでなく、業務の進め方や組織、企業文化も変えて競争力を高めること」。この定義を要約すると、DXとは「企業がデジタル技術を活用して業務やビジネスモデルを“変革”すること」です。さらに、DXは単なる技術導入にとどまらず、経営ビジョンの実現に向けた戦略策定や事業計画への落とし込みまでを含む包括的な変革プロセスといえます。
適切かどうかわかりませんが、たとえると、「DXは、単なる業務のデジタル化ではなく、まるでサナギが蝶へと変わるように、企業の姿や価値そのものを進化させる本質的な変革です」。DXにおける変化は、新たな価値を創出し、会社の経営全体を変革して新しい存在に生まれ変わるというイメージです。経済産業省の「デジタル化の3段階(DXレポート2より)」をまとめると【表1】のようになります。
DX化による企業価値の向上
DX化を推進するうえで最も重要なのは“DXを経営の問題として捉える”ことです。つまり、DX化にあたっては、誰よりも経営者がDX化を推進する目的を明確化し、ビジネスプロセスの変革を通してその目的が達成された場合の“自社のあるべき姿(ビジョン)”を具体的に描けていることが何より重要なことです。
たとえば、衣料品小売業において、在庫回転率の向上と買い物時間の短縮を目的に、RFID(無線タグ)を導入するケースが増えています。この技術により、店内の在庫管理がリアルタイムで可視化され、顧客はスマホで商品在庫を確認しながらスムーズに買い物ができるようになります。さらに、レジ待ち時間の短縮により顧客満足度が向上し、従業員の業務負担も軽減されます。
ここでも、前回までの『人的資本経営』における「人への投資」と同様に、DX化推進にかかる費用をコストではなく投資と捉え、投資が効果を生む流れをつくることが企業の持続的成長の実現、ひいては企業価値の向上につながります。具体的には、DXによりサブスクリプション型のサービスやプラットフォームビジネスなど、デジタルの力で新しいビジネスモデルを開発し、新市場に参入して新たな収益源が確保できれば、企業の成長を促進し企業価値を向上させる要因となるということです。
まとめ
今回は、DXと企業価値向上の関係について、主にDXの考え方を中心にお話を進めてきました。5年後、10年後を見据えると、DXは中小企業にとっても避けて通れない最重要課題です。次回は企業価値向上を実現するために、DX経営に求められる具体的な戦略について、さらに深掘りしていきます。
<INFORMATION>
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<プロフィール>
(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立法人名
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