米韓協力で韓国造船業に追い風?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏米国造船業の衰退
米国の造船業は1960年代の日本企業による攻勢がきっかけとなって衰退、2023年現在、全世界の船舶建造量における米国が占める割合は0.13%に過ぎないほどにまで衰退している。
米国の造船業は戦後、徐々に衰退の道をたどっていった。衰退の原因として、造船業を保護するために制定された法律の存在が挙げられる。1920年に誕生した「ジョーンズ法」は、米国内の貨物運送に使われる船舶は米国で建造されないといけないと義務づけた。この法律によって、米国の造船企業は外国企業との競争を避けるようになり、それが米国造船業の衰退を招く結果となった。
米国の造船業は国際競争力を失い、83年から2013年まで約300カ所の造船所が閉鎖した。造船業の雇用者数も1981年の18万6,700名から2018年には9万4,000名と大きく減少した。
現在、米国には大型船舶を建造できる造船所が4カ所しかない。第2次世界大戦直後は11カ所の海軍造船所と、60カ所以上の民間造船所が存在していたが、今は見る影もなく、米国の造船業は落ちぶれてしまった。その結果、米国で建造されたタンカーの価格は同じような他国の船舶に比べて約4倍となっており、コンテナ船の場合、約5倍もする。
世界首位の中国造船業
中国の工業・情報化部(工信部)が16日発表した中国造船所の24年の年間新造船実績の速報値は、受注量が前年同期比59%増の1億1,305万重量トンだった。年間受注量としては過去最高となり、初めて1億重量トンを突破した。手持ち工事は2億重量トンを超えており、昨年の年間竣工量をベースとすると4.3年分に達した。
中国は船舶建造能力において最強の国となった。LNGタンカーなども韓国が技術的な優位性を保っていたが、その差も縮まってしまった。衰退した米国の船舶建造能力と比較すると、中国のそれは米国の232倍になるほど、両国の差は開いている。
艦艇建造能力は海軍力の決め手
米中の覇権争いがますます激しくなるなか、米国の海軍力に懸念を示す報告が上がっている。米国の造船業が衰退することによって米国は艦艇などを建造、修理する能力が著しく衰えており、軍艦の数を増やすどころか、維持することにも汲々としているという。第2次世界大戦時は、米軍に船舶建造能力が備わっていたので、船舶が故障しても、新しく建造するか、修理することで、戦力を維持することができた。しかし、現在はその能力が著しく衰えており、海軍力を補強している中国とは対照的に米国の海軍力はますます弱体化している。
関連法案の整備など、造船業の強化に動く
米議会は現在のような状況を打開するため、与野党が一致して対策を講じようとしている。それは関連法案の発議である。自国の船舶建造力を強化するとともに中国への依存度を減らすため、造船業において同盟国と協力する方法を模索している。
共和党と民主党の上·下院議員4人が昨年12月に代表発議した「米国の繁栄と安保のための造船業と港湾施設法(SHIPS for America Act)」は、現在80隻に過ぎない国際貿易用の米国商船を10年以内に250隻に増やすことを骨子としている。
船舶は米国内での建造が原則だが、必要とあれば外国で建造した商船の使用を許容し、同盟国および戦略的パートナーとともに海上運送能力を上げることを目指す。その結果、現在、米国船舶を外国で修理する場合、修理費の50%を税金として払わなければならないが、これを免除できる条項も入っている。可決されれば、米国船舶を韓国で修理できるようになるかもしれない。
(つづく)
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