孫正義シリーズ(2)ビル・ゲイツ氏との関係も強力な財産

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 前回の第1回(アメリカに最大のインパクトを与える日本人・孫正義(1)(前))に続いて業界に詳しい投稿者:フェニックス氏(ペンネーム)に、孫正義氏についての寄稿をいただいた。

第2回
ビル・ゲイツこそ、孫氏が事業家へと巣立った恩人

 ここで忘れてはならない、避けて通れないのがビル・ゲイツ氏との関係です。くっついたり離れたり【疎遠】、またくっつくという色恋のくりかえしであります。色恋の経緯を紹介しましょう。

1980〜90年代: Microsoftの日本進出を支援し、ソフトウェア流通事業で協力。
95年: COMDEX買収でゲイツ氏との関係が強化。
2000年代: インターネット市場でMicrosoftと競争関係に。
10年代: クラウド・モバイル分野での協力と競争が並行。
20年代: AI・半導体分野でMicrosoftとは間接的な関係に。

 孫正義氏とビル・ゲイツ氏の関係は、「協力」→「競争」→「部分的協力」と変化しながら、世界のIT市場をリードする両者のビジネスに影響を与え続けています。単なる色恋のくっつき合い、離縁ではありません。まさしくビジネスの利害をめぐる敵味方の関係を繰り返してきたのです。孫正義氏が大言壮語を吐いてもビル・ゲイツ氏との邂逅が無ければ今日の経営者としての地位を確立することは不可能だったと思います。まさしく大恩人で間違いありません。

「敵味方褒貶」の歴史

 そして、まさに今、「オープンAI」を通して孫正義氏は「天下分かれ目の大勝負」の状況に直面しています。こういう局面では葉者同士が協力関係を結ぶのは勝利の鉄則であります。孫正義氏とビル・ゲイツ氏の関わりは、とくに1990年代のPCソフト流通事業を中心に、孫正義氏のビジネスの転換期で重要な役割をはたしました。

 詳しくは下記にまとめます。

1. 1980年代〜90年代初頭:ソフトバンク創業とMicrosoftとの提携

 転換期: 81年、孫正義氏はソフトバンクを創業し、当初はPCソフトウェアの流通事業を展開していました。

 このときのビル・ゲイツとの関わり:孫正義氏は、Microsoftを含む米国のソフトウェア会社と日本市場向けの販売契約を結ぶため、アメリカを頻繁に訪問。80年代後半、Microsoftの日本市場進出のサポートをし、日本国内での流通拡大を支援した。これにより、ソフトバンクはMicrosoft製品の主要ディストリビューターの1つとなり、日本のPC市場での地位を確立しました。

2. 95年:COMDEX買収とIT業界の拡大

 転換期: 95年、孫正義氏はアメリカのIT展示会「COMDEX」を約8億ドルで買収し、世界のIT業界の中心人物とさらに接点をもつようになります。このときにトランプ大統領と面識をもったと言われています。トランプ氏はこの当時、ラスベガスで名を売る活動をしていました。

 このときのビル・ゲイツとの関わり:COMDEXは、Microsoftが毎年新技術を発表する場として重要だったため、孫正義氏とゲイツ氏との関係が緊密になりました。孫正義氏は、ゲイツ氏をCOMDEXのメインスピーカーに招くなど、業界イベントの主催者として影響力を拡大しました。

3. 2000年代:インターネット事業とMicrosoftの競争関係

 転換期: 00年代、ソフトバンクはYahoo! Japanの成功でインターネット事業にシフト。
 この時点でのビル・ゲイツとの関わり:Microsoftはインターネット事業でも主導権を握ろうとしており、Yahoo!と競合関係になりました。孫正義氏はYahoo! Japanを通じて、Microsoftの検索エンジン(MSN)と市場争いを展開しました。この時期から、孫正義氏とビル・ゲイツ氏の関係は、協力から競争的な側面も見られるようになります。

4. 06年〜10年代:モバイル事業とクラウド戦略

 転換期: 孫正義氏は06年にVodafone日本法人を買収し、携帯通信事業に本格参入。
ビル・ゲイツとの関わり:MicrosoftはモバイルOS市場でAppleやGoogleと競争しており、ソフトバンクとも間接的に競合した。ただし、Microsoftのクラウド事業(Azure)とソフトバンクのデータセンター事業での協業も見られます。

5. 16年以降:AI・半導体戦略とMicrosoftのクラウド事業

 転換期: 16年、ソフトバンクはARMを買収し、AI・半導体分野にシフト。
 ビル・ゲイツとの関わり:MicrosoftはAI・クラウド(Azure)分野で成長を続け、ソフトバンクとも協業の機会が増加しました。しかし、ARMの買収後、MicrosoftはNVIDIAなどと提携を進め、直接的な協力関係は限定的です。

(投稿者:フェニクス)

【児玉直】

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