【講演録】D2C(ネット通販)売上高100億円突破するための最強マーケティング戦略とは?(後)

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(株)売れるネット広告社
代表取締役社長CEO 加藤公一レオ 氏
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(株)北の達人コーポレーション
代表取締役社長 木下勝寿 氏

「D2C(ネット通販)売上“100億円突破”のためのプレミアムセミナー」

 売れるネット広告社グループ(株)(旧・(株)売れるネット広告社/東証グロース)は、昨年10月30日に同社の加藤公一レオ・代表取締役社長CEOと(株)北の達人コーポレーション(東証プライム)の木下勝寿・代表取締役社長による「D2C(ネット通販)売上“100億円突破”のためのプレミアムセミナー」をトレードピアお台場(東京都港区)にて開催。これまで20年以上にわたりネット通販業界を牽引してきた両者から成功のセオリーが伝授されるということで、D2C関連企業の経営者ら130名(会場とオンライン)が参加した。クローズドセミナーにつき公開できる範囲を紹介する。

売れるネット広告社グループ(株)(旧・(株)売れるネット広告社)2025年1月1日付で商号変更

第2部

(株)北の達人コーポレーション
木下勝寿・代表取締役社長

(株)北の達人コーポレーション 代表取締役社長 木下勝寿 氏
(株)北の達人コーポレーション
代表取締役社長 木下勝寿 氏

    (紹介)(株)北の達人コーポレーションは、木下氏が「日本で最も可能性を秘めた土地」と見込んで移住した北海道で2000年5月に創業。当初は地元特産品のインターネット販売を行っていたが、北海道特産のてん菜から砂糖をつくる際に副産物として出るオリゴ糖のラフィノースをベースにした健康食品(自社のロングセラー商品「カイテキオリゴ」の前身)を扱うことがきっかけとなり、化粧品・健康食品の通販会社として自社ブランド(現・「北の快適工房」)を立ち上げた。

 2015年に東証プライム上場企業となり、22年には東京本社を設置し、札幌本社と2拠点を軸に人々の悩みを解消するニッチな商品の開発や、約30万人の定期購入顧客に向けたWEB販売を行う。現役のWEBマーケターでもある木下代表がマーケティング手法を解説する。

マーケティング戦略におけるファンダメンタルズと
テクニカルアプローチの重要性

 木下 私たちは、「日本を代表する次世代のグローバルD2Cメーカーになる」というビジョンを掲げています。本セミナーでは、Eコマースにおいて重要なマーケティング手法として体系づけている「ファンダメンタルズマーケティング」と「テクニカルマーケティング」についてお話しします。

 ファンダメンタルズとテクニカルはそもそも株式投資の言葉で、対象企業の業績や財務内容、経営者の資質などから、会社の将来性を分析して投資判断をする「ファンダメンタルズ投資」と、対象企業そのものではなく、対象企業の株価の値動きから相場を分析して投資判断をする「テクニカル投資」とがあります。これをベースに定義した「ファンダメンタルズマーケティング」は、商品そのものやユーザーペルソナ、インサイトを分析して、コミュニケーションを設計していく手法。

 一方の「テクニカルマーケティング」は、クリック率や遷移率、購入率、キーワードなどの数値分析できるフィードバックデータから顧客とのコミュニケーションを設計する手法です。そしてWEBマーケティングにおいては、ファンダメンタルズとテクニカルの両輪で回していくことが重要です。

 設計はまず、最初の段階で3C分析(商品・ユーザー・競合)の情報から、「誰に何を伝えるか」のコンセプトを確定させて、どう表現するか考え、クリエイティブをつくって広告を出稿します。この一連がファンダメンタルズ領域です。そして、広告出稿した後に出るクリック率・コンバーション率など数字の結果を基にフィードバックを行い、クリエイティブを修正して再度出し直していく部分がテクニカル領域です。昔は感覚に頼っていたものが、テクニカル領域によって、数字ベースできっちりと理論立てることが可能となりました。

 収集する情報には「フィールド情報(現場で得られる生の情報)」と「オリエン情報(整理された公式情報)」の2種類があり、その情報を基につくるクリエイティブの発展段階として「1次クリエイティブ」「1次クリエイティブ・リライト(情報の入れ替え)」「1次クリエイティブ・ブラッシュアップ(他社事例参考)」「1.5次クリエイティブ(オリエン情報再検討)」、そして、広告が飽きられると、メインターゲットの設定自体を変更するなど、もう一度ゼロに戻って考え直すこともありますが、これが「2次クリエイティブ(フィールド情報に立ち戻る)」です。私たちは、自らフィールド情報を収集・分析して2次クリエイティブをつくれる人を真の「マーケター」、それ以外を「クリエイター」と位置付けています。

テクニカルで利益を出す
「テクニカルで利益を出す」講演資料より

利益最大化のためのCPO管理とプロモーション戦略

 木下 次に、テクニカルマーケティングの部分ですが、利益を最大化するためは、CPO(顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)が重要な指標となり、【(LTV−CPO)×顧客獲得件数=利益】となります。このバランスが一番良いところが最も利益が上がることになります。

 ここで気をつけたいのは、売上が最大化すると利益が一番大きくなるのではないかと勘違いしやすいのですが、売上を高くしようとすると、CPOも高くなり、売上がとても高いのに利益が少ないという事態に陥ることです。

 客単価(もしくはLTV)が1万円の場合を例に見ると、売上最大化と利益最大化がまったく違うということがわかります。売上最大化だとCPO8,000円の投資で売上高1,800万円が最適に見えますが、利益最大化では、CPO7,000円の投資で売上高1,500万円が最適です。

 また、顧客の獲得件数の増加率については「収穫逓減の法則」が働きますので、CPOを上げることによって獲得件数が増えてはいるものの、実は比例はしておらず、拡大していけばいくほど効率が悪くなっていっています。このように、利益最大化のためには、採算が悪化する寸前で投資を止めることが必要です。

 広告を出すというプロモーションは、「目立つこと」ではなく「利益を出すこと」が目的ですので、必要最小限の広告料で成果を上げていくことが必要です。ターゲットでない人には目立たないが、ターゲットの人に届くような効率的なプロモーションのほうが持続的な成長につながりますので、ファンダメンタルズマーケティングで、ターゲットとコンセプトをきっちり絞っていくことがとても大事です。

AIとマーケティング戦略:
人間とAIの効果的な活用方法

 木下 AIと人間との関係性については、まず人間にしかできないこととAIでもできることが分かれます。「デジタルオペレーター」というデータから傾向を見て直接配信設定を調整する仕事は、AIに取って代わられます。一方で、「WEBマーケター」は、データから傾向を見て人間行動の仮説を立てて施策の手を打つ、これは人間にしかできない重要なことです。

 また、ChatGPTの普及によってマーケティングは劇的に変わってきており、AIに指示を出す「マーケター」と、AIの指示に従って作業する「デジタルオペレーター」の2つに分かれます。さらに結論づけると、ファンダメンタルズ×テクニカルマーケティングをマスターしているマーケターは、AIの活用でその成果が数十倍、数百倍になっていきます。逆にマスターしないマーケターは、AIの指示に従って広告出稿するだけの「デジタルオペレーター=AIの部下」になってしまいます。ぜひ、人間にしかできないクリエイティブ(ファンダメンタルズ)の部分をきっちりと行うことで、AIを使い成果を伸ばしていっていただきたいと思っています。

セミナー後は、売れるネット広告社東京本社にて懇親会が行われた
セミナー後は、
売れるネット広告社東京本社にて
懇親会が行われた

    当社の競合の方もたくさんいらっしゃるなかでなぜこのような説明をしているかというと好循環が生まれると思っているからです。それぞれの会社がWEBマーケティングのスキルを上げると、各社が適切なターゲットにしか広告を出さなくなります。そうなると広告料が削減でき、その会社の利益が上がります。そして各社の広告出稿が減っていくと、広告費の相場が下がっていくのです。これによって広告主全体の利益率が上がっていきます。

 そして一方でユーザー視点では、各社が適切にターゲッティングしていくと、無駄な広告が減ってユーザーに合った広告しか出なくなり、ユーザーにとってWEBメディアがとても使いやすくなると思います。すると、メディアの視聴時間の増加が期待でき、それによって今度は広告枠が増えていきます。そして、さらにメディアや広告代理店の売上増加につながり、広告主・ユーザー・メディア3者にとってのハッピートライアングルが完成するのです。1社1社がWEBマーケスキルを上げることで、デジタルメディアの世界を変えていくと思っていますので、ぜひ、あなたから始めてください。

(了)

【文・構成:松本悠子】


<プロフィール>
木下勝寿(きのした・かつひさ)

1968年神戸生まれ。大学在学中に学生企業に所属し、卒業後は(株)リクルートで勤務。その後、独立するも事業に失敗しフリーターに。無一文の時代を経て、移住した北海道で(株)北の達人コーポレーションを創業、一代にして東証プライム上場企業にまで押し上げた。代表取締役社長兼現役WEBマーケッター。「市場が評価した経営者ランキング 第1位(東洋経済ONLINE 2019年)」や「社長在任期間中の株価上昇率ランキング 第1位(日経ヴェリタス 2020年10月25日発行)」など数多くを受賞。

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