低油価で苦戦する韓国経済(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
それでは、なぜこのような原油価格の下落は起きているだろうか。中国経済の失速による需要減少、世界経済の悪化、石油需要の減少などいろいろな要因があるが、アメリカで起こっている「シェルガス革命」も理由の一つとしてあげないといけない。「シェルガス革命」という言葉を最近良く聞くようになったが、実はシェルガスは1800年代にその存在が確認されていた。ただ、地中深く埋蔵されているだけでなく岩の中に入っていたので開発できなかった。それに開発できたとしても開発コストが高かったので、開発を進めなかった。
しかし、1999年にアメリカで初めて「水平試錐」と「水圧破砕法」という画期的な技術が開発され、採掘に成功した。シェルガスの開発はブームとなり、2005年頃にはシェルガスが本格的に市場に登場することになる。その結果、ガスの生産においてアメリカはロシアを追い抜き、世界最大のガス生産国になる。もともとガスの価格は石油とほぼ同じ価格であったが、シェルガスの生産が増加することによって、ガス価格が急激に下がり、石油との価格差が5.3倍まで開くようになった。このような状況になると当たり前のようにエネルギー需要は石油からガスに徐々にシフトし、今アメリカの物価の安定と雇用創出に貢献しているのは、実はシェルガスの存在である。シェルガスはアメリカだけでなく、今後輸出を通じて日本など他の国にもその効果が波及していくだろう。ヨーロッパもロシアからガス供給してもらうリスクを減らすため、アメリカのシェルガスの輸入を積極的に検討している。このような静かなる石油からガスへのシフトが今の原油価格の下落の要因になっている。
ところで、低油価は韓国経済にどのような影響を与えているだろうか。韓国は原油の輸入に年間1,000億ドル近くを使っている。この金額は韓国輸出金額の10%に相当する金額なので、いかに大きな金額であるかはよく理解できる。今は原油価格が下落しているので14年には939億ドルになっている。一方、韓国の石油製品・石油化学製品の年間輸出額は997億ドルで、輸出全体の17.4%を占めている。これも原油価格が下落することによって少し減少しているが、20%近くの輸出を石油関連製品が占めている。即ち韓国の最大輸出品目は石油関連製品である。半導体は全体の輸出の中で10.9%、自動車の輸出全体の8.5%で、他の主要業種よりも輸出に貢献しているのは石油関連産業である。
それに、石油タンカー、掘削船などは韓国の造船産業にとっては主要な収益源であるが、原油価格が下落すると、発注のキャンセル、先送りが発生する。韓国の建設業界は中東に進出し、石油精製施設や石油化学施設を建設してきたが、このような部門にも影響が出ている。それだけでなく、関連産業である鉄鋼、機械にも深刻な影響が出ている。韓国の主軸産業は原油価格の下落によって、このように深刻な打撃を受けている。
韓国経済は輸出依存度がかなり高いが、原油価格が下落すると、輸出額も減少するような構造になっている。最近輸出の低迷などもこの構造を理解できると説明ができる。この低油価が今後長期化すれば、関連産業は人員の削減、投資の縮小を断行し、それはまた消費の抑制など悪循環をもたらす可能性がある。ところが、シェルガス時代の到来は石油需要の減少をもたらす可能性が高い。
それに、今後普及が予想されている電気自動車なども石油需要減少の一つの大きな要因になる。ガス時代の到来を見越して新エネルギー戦略と産業再編を促す時期に来ている。特に、韓国は新興国を中心に輸出を伸ばしてきたが、原油価格の低迷は新興国の経済に地殻変動を起こす可能性あるので、それを見据えた上での新しい輸出戦略も必要になってくる。一国の経済が破綻すれば世界金融市場が動揺する今の世界だけに今後の産油国の推移を鋭意注視する必要がある。(了)関連キーワード
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