飯塚エリア浮揚の契機となるか ゆめタウン開業の影響
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23年にゆめタウン開業 嘉穂劇場再開の動きも
左:ゆめタウン飯塚 / 右:嘉穂劇場 飯塚市における近年の大きなトピックの1つが、23年7月の大型商業施設「ゆめタウン飯塚」の開業だろう。
菰田・堀池地区にあった飯塚市地方卸売市場の跡地を再開発するかたちで誕生したゆめタウン飯塚は、(株)イズミが展開する総合スーパー(GMS)の「ゆめタウン」業態としては筑豊エリア初出店となるもの。青果部跡地と水産物部跡地をまたぐかたちの計約5万5,200m2の敷地に建てられたS造・地上3階建の建物施設は、延床面積約8万8,500m2、店舗面積約3万500m2となっており、施設内には飯塚市内で初となるシネマコンプレックスを備えるほか、飲食店・フードコートを含めた専門店が約100店舗入居。飯塚市にとっては、1994年10月開業の「イオン穂波ショッピングセンター」(旧・ジャスコ穂波店)や、03年11月開業の「あいタウン」以来の大型商業施設の誕生とあって、開業前から周辺への影響も含めて、地元民からの大きな期待が寄せられていた。
飯塚市内ではほかに新たな商業施設として、22年11月に複合型ファーマーズマーケット「KAHO TERRAS(カホテラス)」も開業している。JAふくおか嘉穂による同施設は、約4万1,700m2の敷地に、エリア最大級のJAの農産物直売所「かほ兵衛の台所」やフードコートのほか、本格和食レストラン、ドラッグストアなどのテナントを備えるもの。国道201号飯塚庄内田川バイパス沿いに立地し、「道の駅」やJA糸島の産直市場「伊都菜彩」のような施設として、広域からの集客も期待されている。
なお商業施設ではないが、「嘉穂劇場」の再開に向けた動きもある。1931年に開場した嘉穂劇場は、石炭産業の発展とともに娯楽の場として地域の人々に愛されてきた芝居小屋であり、遠賀川流域に48座あった芝居小屋のなかで唯一残ったもの。江戸時代の歌舞伎様式を伝える木造2階建の風情ある建物は、2006年には国の登録有形文化財となり、翌07年には近代化産業遺産として経済産業省より認定を受けており、筑豊エリアにおける文化の発信源として長年愛されてきた。だが、運営を行っていたNPO法人嘉穂劇場がコロナ禍の影響で解散となったことで21年5月から休館となり、21年9月には同劇場が飯塚市に譲渡。その後、再開に向けての協議が進められていた。それが今回、飯塚市では26年秋頃から内部を見学できるようにする方針を決定。その後は段階的に劇場再開へと進めていく方針を示しており、劇場再開の目標時期は開場100周年にあたる31年度を目指していく模様だ。一方で、改修費や付属建物の解体費などとして、少なくとも36億円程度の費用を見込んでいる。
ゆめタウン効果で勃発 新飯塚駅VS飯塚駅
左:JR飯塚駅 / 右:飯塚市役所 さて、ゆめタウン飯塚の開業は、最寄り駅となるJR飯塚駅周辺にも少なくない影響を与えている。もともと飯塚駅周辺は、炭鉱全盛期には飯塚の玄関口として栄えていた場所だが、その後の石炭産業衰退に加え、駅近くにあった飯塚市役所の移転(64年4月)や、同駅が起点となっていた上山田線の廃止(88年9月)などにともない次第に寂れていき、市内でも人口減や高齢化が顕著なエリアとなっていた。
ところが、卸売市場移転とその後のゆめタウン開業もあって、状況に変化が表れている。飯塚市では18年12月に「菰田・堀池地区活性化基本方針」を策定したほか、22年3月には「飯塚駅周辺地区整備基本計画」を策定。JR飯塚駅の駅舎や自由通路を含めた駅前広場の再整備や、交差点改良を含めた道路整備などを26年度末の完成予定で進めていくとしており、飯塚駅周辺を再活性化させていきたい考えだ。こうした動きにより、飯塚駅周辺は市内でも一躍注目のエリアとなり、開業前からこれまでに複数のマンション開発が進行。福岡市でららぽーと福岡の開業にともない、周辺エリアで新規分譲マンションをはじめとした土地開発が活発化していったように、ゆめタウンおよび駅周辺で、開発が活発化していく期待が寄せられている。
一方で、現在の飯塚市における中心部といえば、JR新飯塚駅周辺といっていいだろう。64年4月に市役所が移転してきて以来、飯塚駅に代わって飯塚市の中心駅となった新飯塚駅の周辺には、1,000床を超える巨大な民間病院「飯塚病院」や、福岡県飯塚総合庁舎など、公的機関や医療機関などが集積。また、駅東側の柏の森(かやのもり)地区をはじめとして周辺には住宅地が開発されているほか、とくに近年では駅東の至近地で複数のマンションが開発。市内でも人気の住宅地としても認知されている。
こうしてゆめタウンの開業により、飯塚駅と新飯塚駅という2つの駅の周辺が、互いに居住人気でしのぎを削っていくと思われた。だが、実際のところは、まだそうはなっていないようだ。この点について複数の地場不動産関係者に話を聞くと、次のような声が聞かれた。
「たしかにゆめタウンで注目を集めていますが、飯塚駅周辺はまだあまり新たなマンション開発なども進んでいないため、居住人気としては新飯塚駅のほうが依然として高いです」。
「ゆめタウン周辺は、もともと卸倉庫などの関連施設が集積していたわけでもなく、卸売市場が移転したからといって空き地ができて開発が進む、というような場所ではありません。昔ながらの個人商店や戸建住宅などが多く、開発しようにもまとまった土地の確保がなかなか難しい状況にあります」。
「九工大(九州工業大学)や近大(近畿大学)の学生なども、やや距離はありますが最寄り駅は新飯塚駅になりますから、住む場所を選ぶ際には、大学周辺もしくは新飯塚駅の周辺に住むケースが多いようです」。
「たとえば大規模な区画整理を実施し、駅の近くに巨大な商業ビルなどを建てるなどの駅中心の再開発を行っていかないと、一朝一夕には活性化は難しいと思います。また、新たなマンションも建ってきていますが、3,000~5,000人くらいのまとまった新たな住民が増えないことには、エリアとしての賑わいもなかなか生まれてこないでしょう」。
「意外と新飯塚駅の周辺のほうがまだ開発余地が残っているため、しばらくは新飯塚駅周辺の人気が続くと思います」。
──こうした意見を聞く限り、ゆめタウン開業で飯塚駅周辺の注目は集まってはいるものの、居住人気や開発熱の高まりについては、まだこれからのようだ。
左:JR新飯塚駅
右:JR新飯塚駅東口付近にはマンションが林立【坂田憲治】
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