リフォーム事業者の「本音」 ストック市場の伸び鈍化の懸念も

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(有)ライフスタイル
代表取締役 花田孝則 氏

 4月から始まる「4号特例の見直し」は、リフォーム・リノベーション業界に大きな状況の変化をおよぼしそうだ。では、具体的にそれはどのようなものになるのだろうか。福岡県古賀市において数多くのリノベーションの実績を有する(有)ライフスタイルの代表取締役・花田孝則氏に「本音」を聞いた。花田氏は事業者、住宅取得検討者の金銭や業務負担がさらに増し、既存住宅の流通や活用が滞るのではないかという懸念を示す。

増える事業者負担

(有)ライフスタイル 代表取締役 花田孝則 氏
(有)ライフスタイル
代表取締役 花田孝則 氏

    近年、新築住宅の建築費や土地価格の高騰を受け、既存住宅をリノベーションして暮らしたいと望むお客さまが増えています。これはコスト面のメリットだけでなく、好立地の中古物件を自分らしい空間にできるという魅力があるからです。ただ一方で、競合他社の増加などにより、リフォームの価格競争が激化し、収益性が低下している状況です。そのうえ、人件費の上昇や資材価格の高騰、さらにアスベスト調査義務の厳格化といった要因が重なり、事業者の負担は以前に比べて格段に大きくなっています。

 「4号特例の見直し」により、規模の大きなリノベーションの場合は改めて確認申請をしなければならない場面が増える見通しです。築年数が古い物件には、そもそも確認申請を取っていないものや、図面と実際の建物の建築内容が異なるケースも少なくないからです。そのような建物に対して間取り変更や構造補強をともなう工事を行う場合、現行基準に合わせた再設計、耐震や断熱性能の向上が求められ、当然、設計費や工期、そして工事費を押し上げる要因になります。少なくともお客さまのご依頼から着工までのリードタイムが、大幅に長期化します。つまり、事業者の負担がさらに増えることになるのです。

予算オーバーも

 お客さまにとっては、既存住宅の取得費用とリノベーション費用などの合算が高額になり、予算を大幅に超えるケースが増えますし、予算に合わせようとすれば、「リノベーションならではの自由度」が制限される恐れもあります。そのため、これまで「既存住宅をリノベーションすれば、新築より安く希望の空間が手に入る」と考えていたお客さまが、想定外の費用負担から計画を断念することも増えそうです。

 また、金融機関が融資審査の段階で「確認申請が出ているかどうか」を厳しく問うようになれば、近年活発化していた既存住宅の流通市場の動きが鈍化することも懸念されます。既存住宅の売買の際に、これまで以上に厳密な調査や複雑な申請手続きが必要となり、時間も費用もかさむ状況になるからです。

 とはいえ、既存住宅を活用するという流れが止まるとは考えにくく、リノベーションにも一定の需要は続くと予測されます。だからこそ、事業者側には最新の法改正や融資条件を踏まえながら、お客さまに対して適切な説明や選択肢の提示が求められるようになります。

参入障壁高まる

リノベーションの実例
リノベーションの実例

    建築士事務所としての知見をもち、構造計算や確認申請手続きを自社で完結できる企業にとっては、むしろ参入障壁が高まる分だけ優位に立てる可能性もあります。4号特例の見直しは、たとえばタタミをフローリングに張り替えるなどといった、比較的軽微なリフォームでも確認申請を行う必要があります。

 リフォーム・リノベーションを主業とするなかで、当社は一級建築士、建設業許可、宅地建物取引業の3つの許可をもつ、県内では数少ない事業者です。一般のリフォーム事業者の方の設計業務をお手伝いすることなどで、ビジネスの幅を広げたいと考えています。

【田中直輝】

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