立花孝志代表への情報提供で維新県議処分も真相は闇の中──明かされぬ文書作成者

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 斎藤知事が再選された兵庫県知事選で、維新の県議が「NHKから国民を守る会」の立花孝志代表に情報提供をしたことに対して「兵庫維新の会」は2月26日、百条委の元副委員長の岸口実県議を除名処分、元委員の増山誠県議を離党勧告処分とした。だが、真相解明には程遠い不十分な調査に基づくものだった。岸口県議との面談で渡った立花氏が入手した文書の作成者が不明で、片山元副知事と会う予定のホテルに岸口氏が現れた経過も不可解であるためだ。

 処分発表3日前の2月23日、情報の“運び屋”をした岸口氏は増山氏らと会見に臨んだが、具体的説明を拒否する姿勢に終始した。「説明をつかない行動をした」としか言わない岸口氏に対して、私が次のように問い質したのはこのためだ。

左から増山誠県議、岸口実県議
左から増山誠県議、岸口実県議

 ――今日の会見のポイントは、岸口県議が立花氏に渡した文書を誰が作成したのかと、なぜ岸口さんが(片山元副知事の)代わりに行ったのかというポイントがまったく説明されていなくて、「説明をつかない行動をした」と言って済まされると思っているのか。こんな杜撰な調査で終わったら「維新をぶっ壊す」ことになると思うが、(立花面談で同席した)民間人のAさんに「文書の作成者が誰か」と聞かなかったのか。

 岸口県議(以下、岸口) 文書の作成者については確認していない。

 ――(民間人の)Aさんが「もともと片山元副知事が(会う予定だったのに)風邪をひいたので、代わりの者が文書をもっていく」「その場に岸口さんを誘った」と(2月22日放送の)報道特集でも説明しているが、「今日は片山さんの代わりに文書を渡す場ですよ」とか説明を受けたのではないか。

 岸口 それはない。

 ――まったく説明も受けずに、その場に行って誰が作成したのかも分からない文書を渡したと。こんなとんでもないことをやったのか。

 岸口 そう言われても仕方がない。

 ――この文書のなかには「百条委員会の印象操作をした黒幕(主犯格)は竹内県議だ」と書いてあって、これは殺人幇助に近いのではないかと思うが、要は、立花氏は(昨年11月の兵庫)県知事選までに北海道の熊さんという方と、国民民主党の補選予定候補だった高橋茉莉さんを誹謗中傷で死に追い込んだとすでに知られていた。(文書を渡せば)立花氏がどういう行動を起こすのか容易に想像ができるではないか。その自覚はまったくなかったのか。

 岸口 この文書を当日拝見して、どなたがつくられたものなのか本当に承知していない。

 ――少なくとも(1月18日に)竹内県議が亡くなってから、「この文書が一因だったのではないか」「文書の作成者は誰か」と民間人の方に問い合わせて、自らの行動を償う行動をすべきではないか。自責の念にとらわれて普通だったら民間人の方に聞くでしょう。なぜ調べようとしないのか。

 岸口 竹内氏のご冥福をお祈り申し上げることは偽りのない気持ち。そのほかのことはこの場で申し上げられない。民間人の方に文書の出所について尋ねていない。その民間人の方に対しては聞けないということだ。

 ――その民間人にどんな弱みを握られているのか。そんな重要な文書を渡しておいて、なぜ聞けないのか。どんな関係にある方なのか。

 岸口 その方との関係があって聞かないのではなくて、私が聞かなかったということだ。

 ――その同席した民間人がポイントを握っているわけではないか。まったく肝心なところが抜け落ちていて、これで済むと思っているのか。

 岸口 済むと思っているのかという問題ではなくて、民間人の方にご迷惑をおかけするわけにはいかないので。

 ――どういう理由で隠すのかまったく分からない。なぜ、そんなにかばうのか。民間人が斎藤知事を再選させるために、この情報(文書)を流して、結果的に立花氏が拡散して、選挙戦を有利に展開しようとした。その文書をつくった黒幕、主犯格は片山副知事かどうか。片山(元)副知事が名前を使われているだけだったら、それを仕組んだのは誰か。その民間人か。それを明らかにしないと、今日の会見、意味がないではないか。なんでやらないのか。

 岸口 民間人の方が斎藤知事を応援しようとしたのかは私、確認していないので分からない。

 長時間におよぶ維新県議会見であったが、岸口県議は最後まで文書作成者についても、片山元副知事の代わりに立花氏と面談した経過についても具体的に語らなかったのだ。

街宣車上の立花孝志代表と筆者(横田)
街宣車上の立花孝志代表と筆者(横田)

 しかし3月1日、この民間人が投票権のない外国人であることが立花氏との質疑応答で判明した。千葉県知事選に立候補した立花氏が三ノ宮駅近くで街宣した際、次のように単刀直入に聞いてみたのだ。

 ――岸口さんと同席した民間人は中国人ではないか。立花さん、中国人の手先として動いたのではないか。(明石市の建設会社社長の)朝比奈さんは否定しているのに、中国人であることは否定しないのか。

 立花孝志氏(以下、立花) それについて僕は否定も肯定もしない。

 ――怪しいではないか。

 立花 何が怪しい。

 ――朝比奈さんのときは全面否定していて。

 立花 別に日本人ではないよ。

 ――中国利権の斎藤知事再選に関係しているのではないか。

 立花 「中国利権の斎藤知事」と言いましたけれども、斎藤さんが中国の利権でどのようなことをしているのか。

 ――そういう見返りがあることを期待して、(維新県議の)岸口さんを情報の“運び屋”にして、立花さんを“叫び屋”、誹謗中傷をするように仕向けたのがその中国人の民間人のAではないのか。(民間人のAは)片山元副知事ともつるんで立花さんは踊らされたのではないか、中国人の手先になって斎藤知事の再選のために動いたと。

 立花 中国人を馬鹿にしすぎだと思うが、今のは完全に妄想。中国の人が具体的に兵庫県でどういう利権があるのかを取材しているか。

 ――中国人かどうか聞いていて、イエスかノーかで答えてください。

 立花 否定していないではないか。中国人だと思う。だって国籍を聞いていないから。本人は「投票権はない」と言っている。だから僕は外国の人だろうと思った。

 ――外国人の勢力がなぜ斎藤知事再選に動いたのか。そこが斎藤県政の闇で、岸口さんに聞いたら「Aさんに文書作成者すら誰かと聞けない」と言っていた。そんな上下関係のある怖い人ではないか。それで立花氏が動いたのではないか。

 立花 これは横田さんの指摘は、僕はごもっともだと思う。ただ、そこを指摘する以上は、もう少し取材をしないといけない。というのは、TBSの報道特集はちゃんとAさんに取材している。横田さんはジャーナリストを一応名乗っている。ということは、すでに別のジャーナリストはAさんを特定して取材をしている。そこからしっかりと取材をされて、Aさんがどういう感じの人で、斎藤さんとどのようなつながりがあるのかという記事を書くのが横田さんの仕事ではないか。

 ――だから、ほぼ中国人ということを認めていただいたので、今後の取材に活かしたいと思う。

 立花氏とのやりとりで、斎藤知事再選の闇が少し照らし出された。片山元副知事とのパイプがあり、岸口氏を情報の“運び屋”、立花氏を竹内県議への誹謗中傷の“叫び屋”として動かす中国人の民間人は一体、どんな人物なのか。斎藤知事再選でどんな恩恵を受けることができるのか。謎は深まるばかりだ。

【ジャーナリスト/横田一】 

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