飯塚エリア浮揚の契機となるか バイパス4車線化の影響は?

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バイパス有料化の懸念とエリア浮揚効果への懐疑

 さて、冒頭に触れた八木山バイパスの一部4車線化および再有料化だが、種々のプラス効果が見込まれる一方で、懸念されるのは再有料化による交通量の減少だ。

 たとえば14年10月1日から無料化になった際には、無料化1カ月後の八木山バイパスの交通量は無料化前と比べて、篠栗IC~筑穂IC間で平日191%/休日209%、筑穂IC~穂波西IC間で平日181%/休日203%と、約2倍にまで増加した。その一方で、並行する国道201号現道および県道飯塚大野城線の交通量はほぼ半減という数値が出ており、これら2つの道路の交通量の減少分が、八木山バイパスの増加分に転換されたようだ。

 こうした過去の無料化の際に交通量が急増した経緯があるため、再有料化によって八木山バイパスの交通量減少を予想するのは、ごく自然な流れだろう。なお、無料化前の通行料は、軽自動車等・普通車・中型車530円、大型車800円、特大車1,940円などであり、それと比べると今回の再有料化の通行料(軽自動車等220円、普通車280円、中型車330円、大型車450円など)はやや安価に設定されてはいるため、交通量の半減まではいかないかもしれない。しかし、それでも無料→有料のインパクトは大きく、通行料の徴収を忌避して八木山バイパスを避けて八木山峠などに迂回する車両が出てくることは想定される。そうした交通量の減少も勘案すると、定時性・速達性の向上にはたしかにつながるだろうが、それで福岡都市圏と飯塚・筑豊エリアとの往来の総量が減ってしまっては、「筑豊地域と福岡都市圏の交流を促進」や「地域産業の支援」などはとても見込めないだろう。

 さらに“そもそも論”として、八木山バイパスの一部4車線化や再有料化が、飯塚市を中心とした筑豊エリアにプラス・マイナス両面の影響をどれだけ与えられるかについては、判断が難しいところだ。たしかに渋滞の発生頻度を抑えるほか、渋滞解消までの時間短縮など、定時性・速達性の向上にはつながるだろうし、対面走行解消による安全性の向上、さらに事故発生時などのリダンダンシーの確保の観点も含めると、4車線化には相応の効果が見込まれることはたしかだろうし、意義深いことには間違いない。

 しかし、だからといって八木山バイパス4車線化が、「=飯塚・筑豊エリアの浮揚」となるかどうかは、また別問題だと思われる。たとえば14年に八木山バイパスが無料化となったことで、交通量が倍増したことは先ほど述べた。だが、無料化以降に交通量が倍増したことで、飯塚・筑豊エリアが劇的な経済発展を遂げた、あるいは人口が急増したかといえば、そうとは言えないだろう。そのため、今回の4車線化および再有料化の影響も、飯塚・筑豊エリアに劇的な変化はもたらさないのではないか、というのが筆者の見立てだ。

 「たしかに八木山バイパスの4車線化で、福岡市方面へのアクセスは良くなるでしょう。ですが、飯塚市や筑豊エリアは、やはり福岡都市圏とは山で隔てられているという地理的かつ心理的な距離感が大きいため、いくら八木山バイパスが4車線化したところで、劇的に良くなるかといったら、残念ながらそんなことはないと思います。たとえば福岡都市高が延伸して八木山バイパスに直結するのであれば、少しは状況が変わるかもしれませんが、それは現実的には難しいでしょう」(地場不動産関係者)。

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 さて、いよいよ八木山バイパスが3月末から、一部区間4車線化&再有料化となる。もちろん交通ネットワークの充実はするに越したことはないが、これまで述べてきたように、それだけで飯塚・筑豊エリアが抱える地域課題がすべて解決するような特効薬となるものでもない。だが、市内では新飯塚駅と飯塚駅の両駅周辺を中心として開発が活発化しているほか、今現在は目立った進展が見られないが、本誌vol.39(21年8月末発刊)で取り上げた「福岡市地下鉄空港線」と「JR福北ゆたか線」の接続に向けた動きもある。さらに今年1月には、立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)と九州工業大学、そして飯塚市の三者が相互に連携することで、グローバル理系人材をはじめとした人材の育成や地域経済の活性化等を通じ、多様な人材から学ぶ場所として選ばれる大学および飯塚市を目指すための連携協力に関する協定書を締結。こうした官学連携による地域活性化に向けた動きなどもあり、県内4位の人口を擁し、筑豊エリアの中心として君臨する飯塚市の現状は、決して悲観するものではない。

 今後、29年度には八木山バイパス全区画の4車線化も完了することになるが、さまざまな契機をプラス方向に積み重ねていきながら、飯塚・筑豊エリアの活力が増していくことを期待したい。

【坂田憲治】

新飯塚駅・飯塚駅ではマンション開発

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