欧米と日本、職人の地位に差 建設業の存亡左右する育成と待遇改善(前)
-
-
九州鉄筋工事業団体連合会 副会長
福岡県鉄筋事業協同組合 副理事長
古澤英樹 氏鉄筋工事の業界団体・(公社)全国鉄筋工事業協会(以下、全鉄筋)では、2024年11月にヨーロッパ、25年1月にアメリカの建設業界の現状を視察した。全鉄筋の下部組織で九州各県の鉄筋工事業協同組合をまとめる九州鉄筋工事業団体連合会(以下、九鉄連)の副会長、そして福岡県鉄筋事業協同組合の副理事長を務める古澤英樹氏は、「そこで得た知見を基に、業界を挙げて人材育成および待遇改善を狙う」と話す。日本とアメリカおよびヨーロッパの建設業界の違いについて、古澤氏に話を聞いた。
4度の欧米視察
九州鉄筋工事業団体連合会 副会長
福岡県鉄筋事業協同組合 副理事長
古澤英樹 氏──海外視察の目的についてお聞かせください。
古澤 コロナ禍で中断していた海外視察を4年ぶりに再開し、2024年11月にヨーロッパ、25年1月にアメリカへ視察を行いました。19年のアメリカ、20年のヨーロッパ視察に加え、今回で4回目の海外視察となりました。海外視察の目的は、日本の常識に縛られがちな我々の視野を広げること、専門工事業界が業種を超えて問題意識を共有すること、参加メンバーを核として次世代の交流を図ることです。
ヨーロッパには国交省主導の下、専門工事業界や大学の教授など30数名、アメリカには(公社)全国鉄筋工事業協会と(一社)日本型枠工事業協会が主体となり約20名で視察を行いました。それぞれの地域で得た知見は非常に大きく、とくに建設業界における教育制度や職人の地位に関する考え方の違いを肌で感じることができました。
──海外視察を行ったきっかけは。
古澤 きっかけは、(一社)建設産業専門団体連合会(以下、建専連)の岩田正吾会長からの推薦でしたが、当時、国交省で専門工事業を担当していた室長には視察の企画段階から積極的にサポートいただきました。個人的にも、「元請・下請」という概念がほとんど存在しない海外の現状を直接見たいという気持ちもありました。日本では職人の社会的地位が決して高いとはいえませんが、ヨーロッパやアメリカではそうではないという話を聞き、それを実際に確認したいと思ったのです。
──アメリカ視察では、どのような点が印象に残りましたか。
ユニオン研修施設での実習風景(ニューヨーク) 古澤 とくに印象的だったのは、職人育成に関する違いです。アメリカでは労働組合(ユニオン)が主体となり、職人を育成する教育機関を運営しています。たとえば、ラスベガスでは2~3年間の教育プログラムがあり、職人は学びながら給料を得ることができます。その後は即戦力として現場で活躍できるようになるのです。さらに、教育者を育てる仕組みも整っており、職人が継続的に学べる環境が構築されています。日本では各企業単位で職人に対して教育を行いますが、アメリカでは行政やユニオンなどが教育を行っており、教育する側に大きな違いがあります。
──ヨーロッパ視察では、いかがでしょう。
古澤 ヨーロッパでは、いわゆる「ギルド」制度が根付いており、職人が社会的に高い評価を受ける仕組みが整っています。たとえば、イギリスの「CSCSカード」という資格制度があります。このカードをもっていないと現場に入れないため、職人にとって資格取得は必須です。また、教育に対しても多くの時間と資金を投じられ、技術や知識の向上に努める姿勢が日本と大きく異なります。また、フランスではツール・ド・フランス=職人巡歴制度による職人育成システムについて学びました。このシステムは15世紀から続く伝統だといいます。「職人の家」という寄宿舎付きの訓練校があり、若い入職者が最初に泊まり込みで訓練を受けます。そこである程度の能力が付くと、そこから修行の旅に出ます。さまざまな会社を経験しながらスキルを積んで戻ってくると、一人前と認められる制度です。
ヨーロッパでの会合 (つづく)
【内山義之】
<プロフィール>
古澤英樹(ふるさわ・ひでき)
福岡県生まれ。九州国際大学卒業後、1993年4月、(株)マルショー鉄筋工業に入社。2004年4月、同社代表取締役社長に就任。16年7月に福岡県鉄筋事業協同組合副理事長、同年には九州鉄筋工事業団体連合会副会長に就任した。月刊まちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)法人名
関連キーワード
関連記事
2025年2月25日 13:402025年2月21日 15:302025年2月20日 13:002025年3月6日 12:002025年2月26日 13:302025年2月6日 11:002025年1月24日 18:10
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す