地所レジの「リノレジ」 ZEH水準・省エネ基準5割超に

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三菱地所レジデンス
リノベーション事業二部 開発第三グループマネージャー
藤本直樹 氏

 今年4月以降に着工される新築住宅は、すべて省エネ基準に対応した物件とすることが求められる。分譲マンションや賃貸住宅も例外ではない。三菱地所レジデンス(株)は、マンション住戸の買取再販を行うリノベーション事業「リノレジ」において、ZEH水準や省エネ基準に適合した住宅が50%を超えた。同社では、リノベ事業を新築分譲、中古住宅販売に続く「第3の事業の柱」(リノベーション事業二部の藤本直樹氏)として展開に注力。今後もZEH水準・省エネ基準の比率5割以上を維持していく方針だ。

減税や融資で有利に

 「リノレジ」事業は、「ザ・パークハウス」シリーズなどの自社供給物件に加え、耐震基準を満たした他社物件についても買い取り、新築に準じた省エネ機器や住宅設備など必要なリノベーションを行った後に一般消費者に販売する、2013年からスタートした事業だ。販売時のソフト面でのサポートが特徴で、設備などのアフターサービスや販売後の24時間駆け付けサービスのほか、ZEH水準や省エネ基準のメリットを可視化。第三者機関であるBELS評価を取得するとともに「省エネルギー性能報告書」を発行し、住宅ローンの借入額や控除額の優遇といった経済的メリットを訴求している。22年の着工案件からは「リノレジ」におけるZEH水準や省エネ基準の取り組みを積極化。24年の取り扱い件数(133件)のうちZEH水準は17件、省エネ基準が62件となり、全体に占める割合が約59%となった。

 ZEH水準や省エネ基準に対応するためには、日射遮断や開口部の断熱など住戸の断熱性能を高めるとともに、エネルギー消費が少ない住宅設備機器を導入する必要がある。「リノレジ」では、複層ガラス樹脂サッシや内窓の設置など高断熱窓への変更といった建築のアプローチ、高断熱浴槽やLED照明、高効率な冷暖房機器、節湯水栓などへの交換といった設備のアプローチによって、ZEH水準・省エネ基準へのリノベーションを行っている。建築と設備によるアプローチを組み合わせて、エネルギー消費量を計算。新築マンションの省エネノウハウを生かして、機器の選定や必要な工事の検討を行い、ZEH水準・省エネ基準化を実現する。

 住戸のリノベーションという性格上、「機器によるエネルギー削減が中心であり、まずは省エネ基準への対応が基本」(藤本氏)であるとし、可能な場合はZEH水準まで高めていく。今後は、壁断熱などの取り組み強化も検討している。

リノベーションでZEH水準の省エネ性能を確保した2005年竣工の「パークハウス深川高橋キャプション」の住戸(提供=三菱地所レジデンス)
リノベーションでZEH水準の省エネ性能を確保した
2005年竣工の「パークハウス深川高橋キャプション」の住戸
(提供=三菱地所レジデンス)

仕入れは立地や需要考慮

 住戸の仕入れは、同社の新築分譲マンション販売時の下取りのほか、「リノレジ」のホームページからの売却の問い合わせ、三菱地所グループ内外の仲介事業者からの紹介などとなっている。販売は「リノレジ」ホームページのほか、三菱地所ハウスネット(株)、グループ外の仲介事業者などで行っている。リノベーション物件は、すぐに住み替えが可能という特性がある。新築を含めた購入時の選択肢として、子育て世帯やシニア世帯など多様化するライフスタイルのニーズに合致した立地の物件を取得していく。

 展開エリアは1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で、マンション立地がメイン。24年12月末までに約2,100戸の取得実績があるとしている。また、関西エリアのリノベーション物件は、三菱地所グループのアーバンライフ(株)が展開。新築分譲マンションを展開する福岡などのほかのエリアへの展開については、現時点では未定となっている。

新築での取り組み反映

 三菱地所レジデンスは、CO2排出量を30年までに19年比50%削減することを目標としており、具体策の1つとしてマンションのZEH-M Oriented化を掲げている。新築分譲マンション「ザ・パークハウス」と新築賃貸マンション「ザ・パークハビオ」は、対応可能なものから順次ZEH化し、25年以降に販売を開始するすべての物件についてZEH-M Oriented以上とすることを目指している。

 「リノレジ」は新築でZEH化・省エネ化に取り組む専門部隊のサポートを受けている。また、「(これまでの取り組みでリノベーションでの)知見も蓄積されてきており、当初は難しかった角住戸にも対応できるようになってきている」(藤本氏)という。工事費用などコストアップ要因となるが、環境配慮やサービス充実に対して顧客からの満足度も高いという。また、新築分譲マンションで採り入れている、スマートロックやエアコン、照明などIoT機器の制御をスマートフォン1つで行う「HOMETACT(ホームタクト)」を導入した物件もあり、引き続き、新築での新たな取り組みを展開し差別化を進めていく。

 同社では、顧客に対する選択肢の1つとして、今後もリノベーション事業のZEH水準・省エネ基準の物件を積極的に進めていく方針だ。

建築と設備の2つの手法によりZEH水準や省エネ基準の性能を確保
(提供=三菱地所レジデンス)

<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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