訪日中国人観光客は何処を訪れたのか

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雪景色 イメージ    中国は春節連休中(1月26日~2月8日)、日本を訪れた観光客の数がどれほどだったか定かではなく、少なくとも30~40万人と見られる。

 故郷の大連に帰省し旧暦正月の二日目に居住地である東京に戻ったというある友人の話では、帰りの飛行機は満席で、見たところ90%は中国人であり、チケット代も通常の二倍だったという。

 中国の旅行サイト最大手「トリップドットコム」の調査によると、この春節連休の海外旅行先で一番人気だったのは、タイではなく日本であった。俳優の王星さんがタイで拉致されたこと、またこのところ中日関係が改善していることが理由とみられる。

 それでは、中国人は日本のどこを観光したのだろうか。

 東京に到着した中国人観光客に対する本紙の調査によると、大きく分けて三通りの観光ルートが浮かんできた。

 初めて日本を訪れた人は、まず東京を2日間観光し、その後新幹線で京都や奈良に行き、関西国際空港から帰国するという人が多かった。日本でもとくに有名な2つの都市を訪れるという定番のルートは、近代的な国際都市から高速の列車で2時間半走り、一気に千年もタイムスリップして、なごみの古都に染みわたる中国の文化を感じとるというものである。

 この観光コースは交通も便利であり、日本語が分からなくても自由に行動できる。

 しかし、何度も訪日した経験がある人は北海道へと足を運び、そのほとんどがスキーのメッカであるニセコや、大平原である富良野や美瑛に向かうことが多い。目的は雪景色である。北海道で降る雪は細かいパウダースノーで、どこも1m以上も積もっている。見渡す限り白一色の原野、といった童話のような世界に身を置き、すがすがしい空気のなかで温泉につかる。それこそ極上の気分である。

 富良野や美瑛に来る目的はもちろん、「青い池」を見るため、そして雪原にたたずむ1本の木を見るためである。

 一面の銀世界。純白の大地に抜けるような青空、ポツンと伸びる木の陰。素朴で美しい光景の前に立つと、自ずと心のなかまで静かに癒してくれそうな気分になる。

 ただし青い池は雪や氷に覆われ、その美しい全貌を見ることは難しい。北海道にきた中国人観光客は、小樽に行くことが多い。中国人からすればロマンと愛が詰まった街なのだ。中国で上映された映画「Love Letter」が多くの人の感動を誘った。北京からやってきたというある夫婦は、この映画を見たことがきっかけで愛し合い、結婚し、かわいい女の子が生まれたと話してくれた。今回は小樽のロケ地を訪れようと、渡航前に改めてもう一度入念に「Love Letter」を見ておいたという。

 「ただ残念なことに、ヒロインの中山美穂さんが昨年亡くなってしまった。花束をささげたい」夫はこう話していた。

 また、東京から北陸新幹線に乗って小京都と呼ばれる石川県金沢市に行き、金沢城や古い町並み、日本三名園の1つである兼六園を訪れ、日本海の魚介類を味わうというルートをたどった人も多かった。さらにその後、バスで岐阜県に向かい、世界文化遺産の白川郷で雪を眺め、温泉の街・高山で過ごし、最後に特急列車で名古屋や京都に行くというコースである。

 多くの中国人観光客にとって、白川郷で雪景色を見るのは憧れである。連休中は中国のSNSで、豪雪の現地で捉えたきれいな写真が随分と披露されていた。

 和歌山県も中国人観光客の人気スポットである。高野山で仏教の世界を見て弘法大師の御廟を参拝し、港のある温泉地の白浜へ行き、さらに世界文化遺産の熊野古道を歩く。最終日は大阪で城を見たりショッピングをしたりして、関空から帰国の途につく。この観光コースも最近人気を集め始めている。

 福岡から入国した場合は、概ねまず大分県に行き、九重高原で知られざる特産品「豊後牛」を味わい、峡谷にかかる日本一の大橋を眺め、由布院で風情のある町並みを楽しみ、別府で10種類以上の温泉につかる。十分満喫できる五日間のコースである。

 中国人観光客はリピーターも増えており、地方の都市にも足を運ぶようになっている。

 政府観光庁が1月15日に発表したレポートでは、2024年の外国人訪日客の数は過去最高の3,686万9,900人で、 2023年より47%、コロナ禍前の2019年よりも15.6%多かった。国別に見ると、最も多いのは韓国で881万人、2023年より26.7%多かった。次が中国で同じく187.9%増の698万人、三位が台湾で43.8%増の604万人、四位がアメリカで33.2%増の272万人となっている。

 中国人観光客の698万人という数字は、前年比では大きく増えたものの、2019年の960万人と比べるとまだ三分の二にとどまっている。ただこの年初早々の勢いから見て、日本政府によるさらなるビザ発給条件の緩和も受けてこれから増え続け、年間で1,000万人の大台を超える可能性もある。

 ただし日本の社会では、中国人に対する期待度がここ数年で変化している。

 コロナ禍前は中国人観光客を「救世主」と見ており、訪日客のなかで人数もトップ、1人あたり消費額もトップで、「二冠達成」であった。その「救世主」がコロナ禍を経て再び訪れるようになったが、数は減り、逆に欧米や東南アジアから大量に押し寄せるようになったことで、にわかに「中国人がいないと随分楽だ」などという感情が芽生えてしまった。またも大勢の中国人がやって来るなか、「来ないでほしい」といった気持ちが生まれている。ホテルも満杯、観光スポットも大混雑で、「中国人が多すぎて観光資源がパンクする」などという見方も出ている。

 このような気持ちや世論が形成されたことで、自民党内部で、政府による中国人へのビザ発給要件の大幅緩和策に反対したり抵抗したりする動きも出ている。

 ただし地方自治体は、これと正反対の姿勢を示している。訪日客のほとんどが主な観光都市に集まってしまい、地方の多くの景勝地は閑古鳥が鳴いていることから、中国人観光客の来訪を強く願っているのである。

 日本社会にはこのような対立も生じている。


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