「深層学習」(ディープラーニング)とは何か!(後)
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(株)Preferred Networks リサーチャー 松元 叡
人間には見えなかった新しい世界を
――10台の脳が連結して同時に成長していくとは、本当に驚きました。長谷川 「機械学習」同様、「分散学習」についても、私どもは、創業時から研究開発を続けています。そして今はさらに進歩したものを実現させつつあります。10台のロボット車の脳が同時並行的に進歩していくことは素晴らしいことですが、このケースの場合、皆、同じ脳になってしまう欠点があります。
今、我々が開発している「分散」は、ロボット車10台が各々ほしい知識だけをトランスファーできるものです。九州を走る車は、北海道の知見で必要ないものもあります。また、北海道を走る車は、九州独自の知見をもらっても嬉しくないものがあります。一方で、どちらの地域を走る車にも役立つ知見も存在します。
このように、個々の車で学習された知識が「分散協調」できる仕組みを「エッジ・ヘビー・コンピューティング」と呼んでいます。これが可能になると、また新しい大きな世界が開けてきます。――またまたすごいことになっていますね。時間もきました。松元さんは、今後、どのような研究開発を進めていきたいと思っていますか。
松元 「深層学習」は今、大変なブームになっています。しかし、現在「深層学習」において、膨大なデータを集めるのは人間で、研究者にとっては、とても泥臭い領域が残っています。もし、次にブレイクするとすれば、この作業も何らかのかたちで、機械ができるようになってくるのではないかと感じています。いずれにしろ、この研究の面白さは、ニューラルネットというアルゴリズムを使えば、本来人間がやっていたことを機械がやってくれるばかりでなく、人間には見えなかった新しい世界を見せてくれることだと思っています。
――最後に長谷川さんの方から、読者に本日のまとめ的なお話をお願いできますでしょうか。
長谷川 「機械学習」から「深層学習」へ進んでいく流れのなかで、だんだんデータサイエンティストやプログラマーが必要とされる場面が変わってきます。画像認識にしてもそうですが、人間には目が2つしかありませんが、さきほどのロボット車などは何百ものセンサー(目)をつけて動いています。データさえ与えれば、人間がアルゴリズムを考えなくても、機械自身が考え、望んだ効果もだせるようになりました。さらに言えば、機械は2つの大きな特徴を持っています。1つは、24時間、365日働くことができることです。もう1つは、知能(頭脳)を交換できることです。すでに実用化が始まっている「深層学習」という最先端技術の応用範囲はとても広いので、これからの世の中は大きく変わっていくと思います。
――本日は、ありがとうございました。
(了)
【金木 亮憲】<プロフィール>
松元 叡一(まつもと・えいいち)
筑波大学附属駒場高等学校、東京大学理学部物理学科卒業、2015年3月に東京大学大学院総合文化研究科修士課程卒業後、同年4月(株)Preferred Networksに入社。受賞歴として、(1)07年、国際情報オリンピック(クロアチア大会)日本代表銅メダル、(2)08年、国際情報オリンピック(エジプト大会)日本代表銅メダル、(3)08年、国際物理オリンピック(ベトナム大会)日本代表銀メダル、(4)11年、ACM国際大学対抗プログラミングコンテスト(ICPC)東大代表として国際大会(アメリカ)出場、アジア大会(フィリピン)優勝、(5)12年、iGEM(The International Genetically Engineered Machine competition)ソフトウェア部門でリーダーを務める。アジア予選金賞、国際大会本選で特別賞受賞など。関連記事
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