アビスパ、逆転勝利で首位に立つ 福岡2-1横浜FM

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 サッカーJ1リーグ・アビスパ福岡は12日、ホームのベスト電器スタジアムに横浜F・マリノスを迎えて第10節の試合を行った。

    アビスパは3月を無敗(3勝1分け)で終え、4月もアルビレックス新潟と浦和レッズをそれぞれ1-0で下して6戦無敗。開幕3連敗がまるで嘘のような好調を維持している。対するマリノスは1勝3敗5分けと大きく出遅れ、7得点9失点と得失点差もマイナスで順位は18位。9得点7失点で6位のアビスパとは好対照のチーム状況だ。

 試合は両チームの状況がそのままピッチに表れるかたちでスタート。左サイドのMF藤本一輝がDF志知孝明と連携しながら再三ペナルティエリア内に侵入し、次々とチャンスを迎える。4分には藤本の仕掛けからMF松岡大起がボレーシュートを放ち、7分にはドリブルでペナルティエリアに侵入した藤本がGK朴一圭と一対一の状況をつくるが、いずれもJ1トップクラスの実力を誇るGK朴が立ちはだかり、ゴールを死守する。

 するとピンチの後にはチャンスあり、とばかりにマリノスに好機が訪れる。11分、マリノスDF宮市亮が右サイドから鋭くクロスを送ると、これをDF安藤智哉がブロック。こぼれ球が流れた左サイドからエリア内に走りこんできたのは、2020年に当時J2のアビスパに在籍し、11ゴールを挙げてJ1昇格に大きな役割をはたしたFW遠野大弥だった。遠野が鋭く右足を振り抜くと、シュートはアビスパゴールに吸い込まれた。

 先制点こそ奪われたものの、試合は依然としてアビスパのペース。32分には右サイドのDF前嶋洋太が中央に送ったパスをMF名古新太郎が受け、左足を一閃。しかし名古のシュートはわずかにゴール上に逸れていく。そして36分、マリノスボールのスローインをカットしたDF前嶋からMF名古、MF見木友哉とつなぐと、中央付近に進出してきていたMF藤本がエリア外から右足を振り抜く。マリノスDFがマークにつく前に放たれたミドルシュートは、GK朴のセーブもおよばずゴール左下隅に吸い込まれた。アビスパが前半のうちに同点に追いつく。さらに前半アディショナルタイムにはFWシャハブ・ザヘディが完璧なヘディングシュートを叩き込むが、これはオフサイドの判定。1-1の同点のまま前半が終了した。

 後半、両監督は守備面を補強する交代カードを切る。アビスパは前半にイエローカードをもらったDF田代雅也に代えてDF上島拓巳、マリノスは前半アシストを挙げたものの、守備面では弱点となっていたDF宮市に代えてDF松原健を起用。DF松原が加わって守備を立て直したマリノスが、徐々にペースを握っていく。

 このまま引き分けか…。そんな空気を変えたのが、この日ベンチスタートだったMF岩崎悠人だ。MF藤本に代わってピッチに立った岩崎は、持ち前のスピードと運動量でマリノス守備陣を縦横に切り裂き、一気に押し込んでいく。そして80分。マリノスは自陣からパスをつなぎ、前線のFW井上健太にボールが渡るが、ここにMF見木が鋭く詰めてボールを奪う。こぼれ球を拾ったFW紺野和也がドリブルで運び、前を走るFWナッシム・ベン・カリファにスルーパス。右サイドの深い位置に侵入したFWベン・カリファが追走してきたDF前嶋にパスを送ると、前嶋がゴール前に高速のグラウンダークロスを入れる。そこに走りこんでいたのは、このカウンター攻撃の起点となったMF見木だった。見木の左足ダイレクトシュートはGK朴の反応速度を完全に上回るスピードでゴールに突き刺さり、ベスト電器スタジアムが大歓声で揺れた。

 試合終盤、マリノスの決死の攻撃をアビスパ守備陣がしのぎ切り、このまま試合終了。他会場での試合結果を受け、アビスパはクラブ創設以来初めて、J1首位に立った。だが、試合後に金明輝監督や選手たちが語ったように、まだ喜ぶ段階ではない。 シーズンは3分の1も終わっておらず、まだ何も成し遂げてはいないのだ。とはいえ、今のアビスパが見せているパフォーマンスは順位表の一番上に名を連ねるのにふさわしい。

 今、最も面白く、最も強いアビスパ。ぜひ、スタジアムでその姿を目撃してほしい。

【深水央】

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