【連載1】今こそ推したいアビスパ福岡:なぜ強い、今年のアビスパ(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

堅守で耐えるサッカーから攻防一体・刺激的なサッカーへ

 今、アビスパが面白い。

 2020年の昇格以来、長谷部茂利監督のもと「しぶとく強い」戦いを貫き、J1での厳しい戦いを勝ち残ってきたアビスパ福岡。そして今年、金明輝監督が実現しているのが「面白く、そして強い」サッカーだ。長谷部監督が築いた守備の文化を引き継ぎながら、高い技術と身体能力を持つ選手たちが、磨き上げた連携で魅力的な攻撃を繰り出す。これが25年バージョンのアビスパスタイルなのだ。

金明輝監督が率いる2025年のアビスパは、攻守両面で素晴らしいプレーが光る
金明輝監督が率いる2025年のアビスパは、攻守両面で素晴らしいプレーが光る

 昨年までのアビスパのサッカーは、組織された守備で相手の攻撃をしのぎながら、一瞬の隙を見逃さず「蜂の一刺し」を繰り出すというもの。ボクシングでいうなら、ガードを固めて相手のコンビネーションを辛抱強くブロックし続け、打ち疲れた相手のガードが下がったところにカウンターを叩き込む戦法だ。耐えて耐えてしのぎながら、一撃で切って落とす瞬間のカタルシスは何物にも代えがたい。玄人好みのスタイルだったといえよう。

 対して今年のアビスパは、フットワークを使ってジャブを繰り出し、常に動きながら試合の流れをコントロールするスタイル。相手が焦って前に出てくればスッとかわしてカウンターで仕留め、相手が防御に徹する構えなら主導権を握り続けて存分に打ち崩す。いわば硬軟自在、攻防一体のアグレッシブなスタイルだ。

 結果だけでなく、プレー自体も攻撃的で面白い。これが、今のアビスパの魅力なのだ。

選手層から見る2025アビスパの魅力

 では、そのアビスパにはどんな選手たちがいるのだろうか。まずは今シーズンの新戦力から見ていこう。

中盤を制圧するMF見木。「いい守備からいい攻撃」を体現する、アビスパの心臓
中盤を制圧するMF見木。「いい守備からいい攻撃」を体現する、アビスパの心臓

 まず、MF見木友哉だ。昨シーズン、古豪・東京ヴェルディで背番号10を背負った見木は、MF松岡大起とコンビを組むダブルボランチの一角だ。長谷部アビスパでは、ここはチームの心臓と呼ばれ、今シーズンからFC町田ゼルビアに移籍したMF前寛之の指定席だった。開幕前は、前の不在がどう影響するか危惧する声が多かったが、今では見木がその穴を埋める以上の活躍を見せている。見木はここまで10試合に先発し、2ゴールを記録。しかし驚くべきなのは直接的なゴール以外の貢献度だ。ここまでの総走行距離はリーグ5位、こぼれ球奪取回数は1位。縦横無尽にピッチを走り続け、ピンチの芽を摘み、攻撃の起点になる。アビスパの攻守は、見木を軸に変転する。

 次にDF安藤智哉。安藤は今シーズンの補強で最大のサプライズ。J3今治、J2大分とステップアップをはたし、アビスパでは不動のレギュラーポジションをつかみ取った。190cmの長身ながらボールキープの技術に優れ、臨機応変に攻撃参加してすでに2ゴールを挙げており、攻撃面も魅力だ。本業の守備ではJ1を代表する強力なFWを向こうに回して圧倒的なプレーを見せ、アビスパの堅守を象徴する選手となっている。

安定感のある守備、そしてここぞというときの攻撃参加がDF安藤の魅力
安定感のある守備、そしてここぞというときの攻撃参加がDF安藤の魅力
早くもアビスパサポーターの心をつかんだDF安藤
早くもアビスパサポーターの心をつかんだDF安藤

 MF藤本一輝も印象的なプレーを見せている。福岡市南区出身、小学校時代は油山カメリアFCでプレー。ここ数年アビスパは福岡に縁のある選手を集めているが、藤本もその1人だ。サガン鳥栖U-15、藤枝明誠高、鹿屋体育大を経て大分トリニータでプロ入り。昨シーズンはFC町田ゼルビアで金明輝監督の薫陶を受けた。アビスパではサイドを主戦場に攻守両面で強度の高いプレーを見せ、4月12日の横浜F・マリノス戦では待望の今季初ゴールを挙げた。

180cmの恵まれた体格、攻守に惜しみなく走るメンタリティが光るMF藤本
180cmの恵まれた体格、攻守に惜しみなく走るメンタリティが光るMF藤本

 徐々に実力を発揮しつつあるのがMF名古新太郎だ。昨シーズンは鹿島アントラーズでリーグ2位の9アシスト、5ゴールを挙げた名アタッカー。ボールを扱うテクニック、キックの精度に優れ、コーナーキックやフリーキックで決定的なシーンをつくる能力に秀でている。鹿島ではなかなかレギュラーを掴めず、昨シーズンようやく本領発揮しただけにアビスパ入りの決断には驚く声が多かった。今シーズン当初はコンディション面から出場機会が少なかったが、徐々にプレー時間を増やしている。期待された攻撃面はもちろんのこと、守備に回っても献身的なプレッシングで相手守備陣に圧力をかけ、カウンターの起点をつくるプレーを見せている。

正確なキック能力が光る、MF名古のセットプレー。アビスパの新しい得点源だ
正確なキック能力が光る、MF名古のセットプレー。アビスパの新しい得点源だ

(つづく)

【深水央】

【連載2】

関連記事