コストコ誘致が地域活性化の呼び水に 小郡市、加地市長3期目の挑戦

 任期満了にともなう小郡市長選は13日告示され、現職の加地良光氏の他に立候補の届けがなく、無投票で加地氏の3選となった。5月15日に3期目を迎える加地氏にコストコ誘致を起点とした地域活性化の成果や、今後のまちづくりビジョン、さらに課題として捉えている農村部の振興について話を聞いた。

3期目の意気込みとこれまでの歩み

加地良光氏
加地良光氏

 ──3期目に入りました。現在の思いをお聞かせください。

 加地良光氏(以下、加地) 1期目、2期目の8年間で、小郡市の持つ課題と可能性の両方が見えてきました。そのなかで、コストコの誘致をはじめとした将来のビジョンが一定形になってきたと感じています。職員との信頼関係も深まり、行政の動きも加速しています。3期目はこれらの土台の上に、具体的な成果をさらに積み重ねていきたいと考えています。

コストコ誘致による波及効果

 ──コストコ誘致の具体的な影響はいかがでしょうか。

 加地 一番大きかったのは、まず小郡市の知名度が一気に上がったことです。以前は『山口県の小郡ですか?』と聞かれることも多かったのですが、今では『コストコのある小郡』として認知されています。毎日3,000人から7,000人もの来場者があり、市外・県外からの人の流れが生まれました。たとえば、市内の観光イチゴ園がコストコ会員向けに10%割引を打ち出したところ、来園者の3~4割がコストコ会員の方という例も出るなど、直接的および間接的な好影響も生まれています。

 ──地元の雇用にも影響がありましたか。

 加地 従業員は約300人、そのうち半数が正社員です。市内の若年層が働ける職場が増えたことも大きな意義です。高校卒業後に地元に残る選択肢が増え、Uターン就職の受け皿にもなり得ます。

 コストコ進出と連動して、住宅開発も進んでいます。農地を転用したミニ開発が複数進行中で、200戸規模の住宅地も造成が完了。福岡市やその近郊の都市部に比べ、住宅地や戸建住宅が買いやすいという地の利もあり、都市圏の住宅需要が小郡まで波及してきました。今後も人口増加の要因となることが期待されています。

まちづくりのビジョン、2本のインターとゾーニング

加地良光氏    ──掲げてある「まちづくり構想」について、お聞かせください。

 加地 現在、筑後小郡インターチェンジと小郡鳥栖南スマートインターチェンジを起点にした2本の『まちづくり構想』を進めています。とくに筑後小郡インター周辺まちづくり構想では、駅中心のまちづくりゾーン、小学校や中学校、幼稚園が集まっている生活にぎわいゾーンなど6つのゾーニングをして、取り組んでいます。これにより地元の開発意欲も高まり、140戸規模の住宅開発や、古墳跡の国指定史跡化を見据えた文化財活用も進行中です。

 もう一方の小郡鳥栖南スマートインター周辺まちづくり構想では、まだ対象地域が市街化調整区域にあるため、水害対策と連動したまちづくりを模索しています。ここでは、いかに調整区域の課題と向き合いながら、適切な開発を進めるかがカギとなります。

JR九州の物流拠点と産業戦略

 ──小郡市、鳥栖市付近では物流施設建設が進んでいます。

 加地 「物流の2024年問題」により近年、小郡市でも物流施設の新増設が加速しています。とくにクロスロードエリアは物流施設エリアに適しています。今年7月には、JR九州が自ら造成から取り組んだ物流拠点が稼働します。これはJR九州としても最大規模および戦略的な投資で、小郡を物流の拠点として選んでもらえたことは非常に光栄です。それだけのポテンシャルを評価していただいたのだと思っております。ただし、物流一辺倒では雇用が生まれにくいため、将来的には雇用を生むような次世代産業といわれる製造業やデータセンターなどの誘致も視野に入れたバランスある産業戦略を進める必要があります。

 ただ課題もあります。味坂・御原地域などは農業中心の地域ですが、優良農地の規制や高齢化により集落の活力低下が進んでいる状況です。そうしたなか、国の地方創生伴走型支援制度により、小郡市が全国60自治体の1つに選ばれました。今後、農業の付加価値向上や体験型観光農園、農業系スタートアップなど、多様な角度から地域再生の可能性をさぐっていきます。自然を身近に感じる良い環境のなかで子どもを育てたいという人の転入につながれば、持続可能な自然農業環境豊かな地域ができるのではないかと思います。

将来像──市全体のゾーニングと魅力形成

加地良光氏    ──最後に、これから目指す小郡市についてお聞かせください。

 加地 市全体を俯瞰(ふかん)したときに、稼げるエリア、生活にぎわいエリア、住宅エリア、そして自然と農業の豊かなエリアと特徴のあるエリアが明確になり、小郡市のまちづくりはよりビジョンが具体化してきました。そのようにしてみえてきた今が、まさに3期目のスタートなのかなというふうに思います。人口も現在5万9,000人前後で推移しており、6万人突破も視野に入れています。住みやすく、働きやすく、誇れるまちであることを目指しています。

 加地市長の言葉の端々からは、小郡市のまちづくりに対する強い覚悟と冷静な現実認識が垣間見えた。交通利便性、住宅需要、農村課題──それぞれの課題とチャンスをバランス良く捉えながら、市民とともに未来を描く3期目の歩みに注目したい。

【内山義之】


<プロフィール>
加地良光
(かじ・りょうこう)
1964年11月生まれ。埼玉大学経済学部卒業後、(株)NBC長崎放送に入社。同社退職後は、(株)TVQ九州放送へ入社し、アナウンス部長や報道部長などを歴任し、地域に根差した情報発信に努め、2017年、小郡市長に就任。25年4月、無投票にて3選となった。

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