自律を獲り、自立できるか(前) ~親が子にやれること~(1)

あるシングルマザーが傷ついていた──フルタイムで働いて、娘の面倒は夕食まで実母が看てくれている。毎日夜遅く帰って、子どもにご飯をつくってやれないこと、娘と一緒にいる時間がどんどん短くなっていること、ただただ苦しいと──子どもと一緒に笑っている母との会話を観るだけで、自分は何をしているのだろうと涙が出てしまう。この世で一番大事な存在と一緒に夕食をとる代わりに、自分は遅くまで会社で残業している。罪悪感ばかりが募り、楽しく笑える余裕がないのだと。
親の時間が足りない
男性がどうとか、女性がどうとかではない。男性でも家事をメインで担っている人もいるし、これから担おうとしている人もいるだろう。何より、家事をやるのはパートナーだったり家族だったり、まわりの誰かを助けるためではない。その人自身が生きるために家事は必要なもの。パートナーがいて、その人が普段主になって家事を担当することは、何も悪くない。母親にやってもらうことも、それ自体は悪いことではない。その家族の選択だ。でも、その家事をやっている人が、常に健康で問題なく家事ができるとは限らない。もし、その日がきたとき、残された人が何もできないと、その生活は途端に破綻する。

子どもが小さいとき、もう少し一緒に居てあげられたらと思うが、小学生、中学生と大きくなっていくにつれ、その先は受験をはじめいろいろな壁がある。働く女性はむしろ子どもが小さいときよりも、小学校高学年になったあたりで仕事を辞める選択をするというデータもある。保育園のように預かってくれる場所もどんどん減っていくし、習いごとをするのにも、母親のサポートが不可欠というケースは少なくない。10年仕事から離れた(フルタイムで働いていない)女性を社会がどう扱うか、いうまでもないだろう。
子どもをもってフルタイム労働をしている女性は、産育休後も継続的に働いている人ばかり。自身のキャリアアップのためにも、何より生活のためにも働きに出なければならない。彼女は今、立ちはだかる厳しい社会の壁に、憤りを感じているのだ。子どもと一緒に居たい気持ちも、消耗したくない気持ちもあるだろう。でも、だからといってしょうがないじゃないかと、屈したくないと思っているのだ。女性は、育児の責任を主体的に負う確率がいまだに高い。なぜなら母親の人生は、子育て前から、子育て中も、もちろん子育てが終わってからも続くのだから。...

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