【インタビュー】沖園リエ氏(れいわ新選組)「すべての人が安心して暮らせる社会を実現したい」(前)
れいわ新選組
参議院福岡県総支部長 沖園リエ 氏
夏の参議院福岡選挙区(改選定数3)は、10党派から候補者が名乗りを上げるなど激戦の様相を呈している。れいわ新選組参議院福岡総支部長・沖園リエ氏は、団塊ジュニア世代の1人で、非正規雇用などを経験。福岡パレスチナの会などの市民運動を通じて政治を変えなければならないことを実感したという。沖園氏にパレスチナ支援運動への取り組み、2度の選挙経験を通じての消費税廃止やジェンダー平等社会実現への思いなどを語っていただいた。
パレスチナ連帯運動への共鳴

沖園理恵 氏
──れいわ新選組より参院選の福岡県選挙区への立候補表明に至った経緯を教えていただきたいと思います。
沖園リエ氏(以下、沖園) 昨年10月の衆議院選挙で福岡2区から立候補いたしました。 衆院選に立候補をした理由は、福岡2区の自民党議員で防衛副大臣を務めていた鬼木誠さんを落選させるためでした。国政の知識もありませんでしたが、私が所属しているフリーパレスチナに取り組む活動をしている「福岡パレスチナの会」の皆さんから「沖園さんしかいない。鬼木誠氏を落選させよう」との声が上がり、立候補いたしました。
約7,1 00票で落選したのですが、もともと選挙に勝つつもりはありませんでした。結果、鬼木さんは小選挙区で落選しました。一方、立憲民主党の稲富修二さんは、いつも2番手で比例復活されていましたが逆転しました。
裏金問題などで自民党に嫌気を感じている人がたくさんいるなか、鬼木さんが南極観測船・しらせが持ち帰った南極の氷を、自分の選挙区の子どもたちに配りました。これは公職選挙法違反で、選挙区の意識がないのであれば2区以外の子どもたちにも配ればいいし、チラシなどで広く広報を行い、福岡市中の子どもに呼びかけをすべきです。鬼木さんに対して何よりも許せなかったのは、私たちはイスラエルボイコット運動に取り組んでいました。この運動はイスラエル製の製品を購入しないという取り組みです。
──イスラエル製の兵器のボイコットですね。
沖園 兵器だけではなくて、たとえば自家製の炭酸水を楽しめる「ソーダストリーム」はイスラエル製品です。夏場に家庭で気軽に炭酸飲料を飲むことができます。その他にもスーパーで並んでいるグレープフルーツやオレンジなどにもイスラエルからの輸入品があります。
イスラエルボイコット運動(BDS)は、パレスチナのガザ地区で虐殺を行っているイスラエルの商品を購入しない、イスラエルに投資をしない、イスラエルを支援している企業をボイコットするという3つの柱で取り組んでいます。私たち消費者ができることは、周囲の人に呼びかけて、イスラエル製品の不買運動をすることです。経済政策でイスラエルの行動を市民レベルで封じ込めることができます。
日本で最初に成功した例が無印良品です。2010年に無印良品がイスラエルに出店することを公表しました。無印良品は環境や人権に配慮しており、利用者のなかには熱烈なファンもいます。最初に反応したのは、無印良品の大ファンの人たちでした。「私たちの大好きな無印良品が、パレスチナの人を虐待しているイスラエルに出店するのは嫌だ」と不買運動を始め、無印良品は出店計画を中止しました。表向きには採算が取れそうにないなどの理由を述べています。
世界中にイスラエルボイコット運動が広がっており、イスラム教徒の国である中東、インドネシア、マレーシア、などでも活発に行われています。
福岡市でも行われたパレスチナ支援デモ

──以前天神のデモをお見かけしました。知人にも参加した人がいます。福岡にもパレスチナ出身の方がいることを初めて知りました。
沖園 嬉しいです。ありがとうございます。どのような党派でも、どのような人でもウエルカムです。デモのときは「一緒に歩きませんか」と沿道の皆さんに呼び掛けています。
両親がガザ地区出身の大学生エルジャマル・アラアさんは福岡市で生まれ育ったのですが、6歳を最後に両親の故郷を訪問できていません。アラアさんは日本生まれなので、日常会話は日本語です。23年10月のガザ攻撃が始まるまでは、友人から「パレスチナってどこにあるの?」と聞かれていたそうです。攻撃が始まってからは学校の先生や友人から「パレスチナ、今大変なことになっているね」と関心を抱いて心配してくれるようになったそうです。
1948年5月14日にイスラエルが建国され、多くのパレスチナ人が強制移住させられることとなりました。最初はパレスチナ地域の20%ぐらいの部分だったのですけど、それがどんどん広がってしまって、実質支配を拡大し植民地化しました。
現在、パレスチナは西岸地区とガザの2カ所だけが残っています。パレスチナ住人の意思を無視して勝手にイスラエルを建国して、移住を始めて人々を虐待しています。当然、周辺国のアラブの人たちの憤りは高まり3次にわたる中東戦争が勃発しました。しかしイスラエルはすべてに勝利しました。アメリカが大量の武器と資金をイスラエルに供与するからです。国民も全員徴兵制で「戦わなければ、生き残れない」と教えられています。長年に渡るユダヤ人迫害やホロコーストなど壮絶な迫害を体験し、トラウマから過剰反応をしてしまうようです。日本では在日米軍の軍人も自衛隊員も基地を出たら武装していません。しかし、イスラエルでは軍人はもちろん、民間人でも銃を所持し、武装しています。街中を歩くと銃を肩にぶら下げて歩いているんですよ。
本当に悲しい話ですが、イスラエルは侵略を進め自分たちの入植地をつくっています。日本でも大手ハウスメーカーが、大型開発をして、山を崩して新興住宅地をバーッとつくるでしょう。あれとまったく一緒です。
パレスチナ人が住んでいる土地を、「今日からここを俺たちの入植地にする」って言って、ひどい時には火をつけて村を焼き滅ぼしました。ブルドーザーで住居を笑いながらなぎ倒して「俺たちの新しい町をつくるのだから、お前らは出ていけ」と言って追い出すのです。パレスチナはオリーブがとても有名ですけど、オリーブの木は長寿です。パレスチナ(現・イスラエル)には屋久杉みたいに樹齢8,000年のオリーブの古木があって、大切にされています。
イスラエルでは、オリーブの木もなぎ倒して、土地を平らにして、住宅地をつくってどんどん入植者を募集しています。 税金は控除しますとか、ここに入植したら、最初の数年間は生活が安定するまで給付金を払いますよ、就職先を紹介しますよ、と呼びかけて、世界中に散らばったユダヤ人たちがイスラエルに集まるように、呼びかけをしているんです。新大陸(アメリカ)に入植した人たちが銃で武装して、現地のネイティブアメリカンが野蛮で危険だからと、虐殺したのと同じです。 それが現代で行われているのです。イスラエル人は正当防衛扱いで一切罪に問われることがない。一方、パレスチナの民衆は武器をもっていません。
ハマスが2023年10月に、たくさんの人を殺し、誘拐したと国際問題になりました。でも彼らにとっては自分の国を取り戻すための決起行動でした。実際にはイスラエルのドローンからの反撃によって、巻き添えになったイスラエル人も大勢いるそうですが、イスラエル側は発表しません。すべてがハマスの攻撃によって死者が出たというふうに報道されています。
日本にとって無関係の遠い話ではありません。防衛省は攻撃型ドローンの購入を検討していたのですが、7つあるドローン候補のなかから1つを選ぼうとしていたんです。その7つのうちの5つがイスラエル製でした。ほかはイタリア製やアメリカ製です。防衛省は「たとえば災害で孤立している人とか、山間部で遭難している人とか、そういった人を発見するために探知機能が必要」と説明していますが、嘘です。
私たちはイスラエル製の攻撃型ドローンを、防衛省が輸入すると聞いて、倫理的にそんなことを許してはいけないと思いました。イスラエル製のドローンには「ガザで実証済」とのキャッチコピーがついていました。
そこで、防衛副大臣でドローン選定にも関わっている鬼木誠さんの事務所にドローンの輸入に関して中止を求める要請文を提出しました。さらに、質問事項の回答を求めて期日を指定して申し入れました。しかし、期日に行くと事務所はもぬけの殻でした。
(つづく)
【近藤将勝】
<プロフィール>
沖園理恵(おきぞの・りえ)
1974年福岡市生まれ。県立早良高校、福岡大学大学院卒、大濠高校勤務などを経て、2023年、福岡市議会議員に市民グループから立候補。現在natural natural(株)フードプランナーとして勤務しながら「子ども食堂」支援やパレスチナ支援団体「福岡パレスチナの会」「働く女性のホットライン」などで活動。
公式SNS:https://x.com/rieokizono
https://www.instagram.com/okizonorie/