NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
今回は6月1日の記事を紹介する。
さる5月8~9日、第39回世界天才会議が東京国際フォーラム・ロビーギャラリーで開催された。この世界天才会議はBIS名誉顧問をBIS設立当初から34年間にわたりお願いしているドクター中松が主宰されているユニークな会議である。
今日、日本のGDP per Capita(1人あたり国民総生産)は、1990年代からの35年で2位から38位に衰退。50位に転落するのも時間の問題とみられている。ここまで日本の経済力が落ち込んだのは1990年代のバブル崩壊以来、日本の経営者が、先行投資など経営リスクを避け、利益拡大に走ったことだ。過去30年近く従業員の給料は初任給を20万円台に押さえ込み、もっぱら利益の社内留保に努め、そのため今日、企業の社内留保利益は日本の一年間のGDPに匹敵する600兆円近くに積みあがっているという。
日本の衰退をとどめるには落ち込んだ日本の半導体、AI(人工知能)、ロボットなどの先端科学技術を振興する以外にないのではないか。その意味で、ドクター中松の『世界天才会議』に大いに期待する次第である。
ドクター中松は個人としてIBMにフロッピーディスクなど16の特許を譲許したことで有名である。今月26日に97歳の誕生日をめでたく迎えられるが、生涯現役で、今も年に5~7件の特許を取得。発明王、エジソンを抜き、世界一の3,000件近くの個人特許を保持されている。またトランプ政権との間で紛争になっているハーバード大学のノーベル賞学者が中心となって創設した「イグ・ノーベル賞」第1回受賞者で東大出身初の受賞者でもある。
筆者の出身校である鹿児島ラ・サール高校から京都大学医学部で博士号を取得。在宅医療に従事の岡部亮医師が、哺乳類が消化管を介して呼吸不全を改善しうることを証明。2024年度イグ・ノーベル賞を受賞したことはドクター中松との不思議なご縁だと痛感している。
本年の世界天才会議には筆者もかつて発明展に招待された台湾から75の大学および研究所、企業、タイから13社、そのほか米国、カナダ、ロシア、ブルガリア、モロッコ、香港に加え、中国からも6社が参加していたことだ。
そのなかでも目を引いたのは、台湾、タイからは小学生、中学生、高校生も大学生に混ざり参加していたことだ。アジアの時代に力を発揮しつつあるASEAN(東南アジア諸国連合)を含め、半導体、電子機器で力を発揮しつつある台湾やタイからは若者が多数参加。それに比し、日本からは学生参加は皆無で日本の将来に大きな危惧の念を抱かせられた。
主催元の日本からは8社が参加していたが、躍進しつつあるアジアのタイ、台湾を見習い、日本からも小中学生、高校生、大学生も参加し、衰退しつつある日本の科学・技術力を振興させることが必須だと痛感した本年の第39回世界天才会議であった。
<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)
鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。