「化血研」の隠蔽体質~問われる国の責任(前)
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化血研の隠蔽体質
「常軌を逸した隠蔽体質」を見破れなかった厚生労働省の責任は重たいものがある。ワクチンや血液製剤の日本有数のメーカーである一般財団法人「化学及血清療法研究所」(熊本市:以下化血研と呼ぶ)は、40年以上にわたり製造記録を偽造するなど隠蔽工作をしながら、国の承認書と異なる不正製造を続けていたからだ。
発覚のきっかけは内部告発だった。厚労省によると、今年5月に化血研の職員を名乗る匿名の投書が届いたため、この情報をもとに抜き打ち調査を実施。不正が明らかになったという。
事態を重く見た厚労省は、6月に血液製剤、9月にワクチンの出荷停止を指示するとともに、詳細な内部調査を実施するよう求めていた。
そのため化血研の第三者委員会は、2日に開催された厚労省の専門家委員会に調査結果を報告。その報告書によると、1974年から不正が始まったという。当初は一部の血液製剤について加温工程を変更。90年代に入ると担当理事の指示を受けて、製造効率を上げるため血液を固まりにくくする添加物(ヘパリン)を使用するなど、国の承認書と異なる不正製造が組織全体で常態化していったという。
そのような不正行為をしていた中、化血研は10年前の2005年12月26日、創立60周年を迎え次のような歯の浮くようなコメントを載せていたのだ。
私どものルーツは1926(大正15)年、熊本医科大学長であった山崎正董博士を理事長に、大学内に設置された「財団法人実験医学研究所」にさかのぼります。この研究所の活動は大学の微生物学教室の主導で行われ、当時、急速に発展した微生物学・免疫学・血液学の研究に併せ、その成果であるワクチンや抗血清、診断抗原等を製造・供与し、わが国における伝染病の予防、治療、診断に貢献してきました。 しかし、1945(昭和20)年の熊本大空襲で壊滅し、残念ながらその機能を消失しました。8月の終戦を境に戦争による心身の疲弊と衛生状態の悪化は全国的に極限に達し、悪疫のまん延が憂慮される状況となりました。戦争の災禍で中断された研究所はこのような事態を受け、「化血研」としてよみがえったのです。
創設以来、諸先輩方をはじめとする役職員一同のたゆみない努力と、関係各位からのご支援により、2005(平成17)年には創立60周年を迎えることができました。しかし、今やめざましい技術革新の時代に突入し、一瞬の怠惰が企業の存亡につながりかねません。また、法令遵守や情報公開、環境保全など、企業の社会的責任を果たしていくことが求められてきております。
今後も私どもは社会からの信頼を大切にして、技術集団としての高いレベルを保ち続け、財団の使命である「世の中の役に立つ安全性・有効性の高い医薬品の開発・供給」を目指し、不断の努力を続けてまいります。(つづく)【北山 譲】
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