2024年11月25日( 月 )

「化血研」の隠蔽体質~問われる国の責任(後)

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問われる国の責任

第109回治験審査委員会議事録
化血研は今年創立70年の記念すべき年であったが、2日付で宮本誠二理事長以下、全理事が辞任するという、まさに「血まみれ」の非常事態を迎えている。
 化血研は血液製剤では業界第2位、ワクチンでは市場の3割を占めており、出荷停止に伴う製品不足が深刻化しているという。
 そのため緊急対応として「沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活性ポリオ(セービン株)混合ワクチン」は一般財団法人阪大微生物研究会に続き、12月14日から北里第一三共ワクチン(株)が供給を開始。また「組み換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来)」はMSD(株)、「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン」は阪大微研が代替供給するという。
 しかし代替で済まされるのだろうか。第三者委員会の報告によると、血液製剤は感染リスクをなくすため、国が認めた承認書通りに製造することが厳格に求められている。しかし化血研は89年以降、新薬の製造工程で止血効果がなくなるなどの問題が生じたため、発売が遅くなることを恐れた担当理事は製造工程の変更を指示。
 不正製造の常態化は薬害エイズ問題が起きた1980年代後半から90年代前半にも続いていた。89年、血友病患者らがエイズウイルスに汚染された輸入非加熱血液製剤を投与され、感染した血友病患者らが提訴。96年2月に菅直人厚生労働大臣(当時)が謝罪し和解。今回の不正はその訴訟の最中にも続けられており、組織ぐるみの隠蔽を承認したのは、まさにエイズ訴訟の和解直後の96年9月の常勤理事会だったという。
 理事会に出席した血液製剤の製造部門担当者は、「実際の製法は承認書と異なる」ことを説明。そのため「国の査察の際には、虚偽の製造記録を提示する」ことを示唆したが、出席した理事の誰一人として「医は算術」とばかり補償費用の確保を優先し、疑義を挟まなかったというから驚きだ。
 更に報告書は、「不正は、早期の製品化や安定供給を最優先したことに起因している」と指摘しているが、それを裏付けるように2日夜の記者会見で、宮本誠二理事長は、「弁解になるが、献血を扱うメーカーとして製剤を早く出したいという思いがあった」と弁明。まさにトップ自らが隠蔽工作に手を染めていたことを認める発言ではないだろうか。
 ワクチンや血液製剤は直接人体に注入されるものにもかかわらず、40年以上にわたり不正を見逃していた厚労省の責任は重たいものがある。更にこのまま化血研を存続させるようなことになれば、国の医療行政そのものが問われることになる。
 安倍総理は、オリンピックのメイン会場となる新国立競技場建設を「ぜロベースで見直す」と発言し、白紙に戻したのと同様、化血研を速やかに解体して国民に信を問うべきではないだろうか。


(了)
【北山 譲】

 

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