アビスパ福岡 天皇杯3回戦は白熱の福岡クラシコ、PK戦でギラヴァンツを下しベスト16へ

福岡の怒涛の攻撃を北九州が全員守備で跳ね返す

福岡クラシコに挑むアビスパ福岡の選手たち 撮影:ヒデシマ氏
福岡クラシコに挑むアビスパ福岡の選手たち 撮影:ヒデシマ氏

 16日(水)、ベスト電器スタジアムで行われた天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会3回戦は、アビスパ福岡(J1)と福岡県代表のギラヴァンツ北九州(J3)の福岡対決となった。福岡の意地とプライドを賭けた5年ぶりの“福岡クラシコ”の一戦に、平日夜の試合にもかかわらず、8,712人もの観客がスタジアムへ駆けつけ、熱い応援を繰り広げた。

 試合は90分で決着がつかず、両者無得点のまま延長戦へ。前後半15分を戦うも、0-0の引き分けとなり、PK戦に突入。PK戦では福岡が4-2で勝利し、天皇杯3回戦を突破し、ベスト16進出を決めた。

 公式戦は6月28日の神戸戦以来となる福岡は、短期のオフも挟み、リーグ戦同様の布陣で挑む。終始福岡がペースをつかみ、左右、中央からとボールをつないでチャンスをつくり出す。とくに、再三にわたる右サイドの紺野和也の技と岩崎悠人のスピードを生かしたコンビネーションプレーは見応えがあったが、ガチガチに引いて守る北九州の壁にことごとく跳ね返されてしまう。

 この試合、福岡は24本のシュートを放ち、コーナーキックは18本、直接フリーキックは14本と圧倒的に攻めたてたが、ラストの精度と北九州の堅守に苦しみ、最後までゴールをこじ開けることはできなかった。

 北九州サポーターの目の前で行われたPK戦は、福岡が先攻。1本目のキッカーがそれぞれGKに阻まれる展開に。その後、2本目、3本目を両チームが決めた。北九州の4本目は、福岡のGK小畑裕馬がこの試合2本目となるセーブを見せる。福岡は4本目と5本目をしっかり決め、PK戦は4-2で福岡の勝利となった。

 試合後の記者会見で、福岡の金明輝監督は「山ほどあった決定機をポジティブに捉えるしかない。あとは決めるだけ。試合では点は取れなかったが、(勝利という)結果をもってきたことを評価したい」と述べた。

 また、北九州の増本浩平監督は「耐える時間が長いのはわかっていた。そんななかでも選手たちはもっとアグレッシブな攻撃をしたかったと思うが、負けたくないという気持ちの強さから、少しのチャンスで勝ちにいくように伝えた。思っていた以上に質的優位をつくられてしまった」と悔しさをにじませた。

GK小畑裕馬、ルヴァンカップの悔しさを糧に

 PK戦の流れに影響する大事な1本目、先攻の福岡は金森健志に託す。しかし、北九州のGK田中悠也にセーブされる。その様子を見た小畑は「まだ1本目。僕が1、2本止めたら勝てると思っていた。冷静でした」と話す。その言葉通り、1本目と4本目、2本のPKを止め、勝利に貢献した。

PK戦で2本セーブの活躍、GK小畑裕馬 撮影:ヒデシマ氏
PK戦で2本セーブの活躍、GK小畑裕馬 撮影:ヒデシマ氏

 小畑には、6月8日に行われたルヴァンカップ・プレーオフラウンドの広島戦第2戦での苦い思い出がある。今回の試合と同じくスタメンでゴールを守るも、延長後半開始時に小畑の姿はなかった。PK戦を見据えて、ベンチ入りしていたGK永石拓海に交代していたのだ。交代の意図について、金監督は「前日のPK練習で永石が止めていた」と会見で明らかにしたが、小畑はこの試合を振り返り「自身でPK戦までプレーしたかったが、少しでも可能性が高い方にということで交代することになった。本当に悔しかった。しかし、そこは結果で示すしかない。今日はそのチャンスがきたので、どんなかたちであろうが勝ってやろうという気持ちで入った」と話した。

 スタジアムにとどろいていたサポーターからの大きな小畑コールは、逆サイドでゴールを守る小畑の元にしっかり届いていた。また、小畑は「負けが許されない特別な試合と理解していた。(金監督が)信じてまかせてくれたと思うので、僕は自分の仕事をまっとうするだけだった」と語った。今後のリーグ戦について、「アシストも付くので」と、得意とする足元を使った前線へのパスも積極的に狙っていく。

帰ってきた精神的支柱・奈良竜樹主将

 この試合では、福岡の主将である奈良竜樹がおよそ3カ月ぶりに公式戦のピッチに立った。ベスト電器スタジアムでの試合としては2024年5月18日のJ1リーグ・C大阪戦以来の出場となった。

 奈良は、24年6月に左膝の手術を受けており、今年3月のルヴァンカップで復帰したものの、再び戦列から離れており、状態が心配されていた。しかし、今回スタメン出場で90分間、安定したプレーを見せており、リーグ戦での本格復帰も近そうだ。

 久々に実戦復帰した奈良は「トーナメント戦なので、他の試合結果を見ても簡単な試合はないなという印象はある。本来なら90分で勝たなければいけない試合だったが、まずはチームとして勝って次に進むことができてよかった。相手が思った以上に引いてきて、難しいところもあったが、点をとらなければいけない場面はあった。チームが目指すところの一歩手前まではきていると思うが…。リスク管理の部分など、もっと繊細にやらなければいけない場面もあった。公式戦での出場は久しぶりにはなるが、練習試合もしっかりできたし、チーム練習も実戦さながらのいい練習ができているので、試合勘など戻ってきている」と語る。

怪我から復帰のDF奈良竜樹 撮影:ヒデシマ氏
怪我から復帰のDF奈良竜樹 撮影:ヒデシマ氏

 福岡クラシコの雰囲気について「今日の試合も同じ県同士の対戦でサポーターの方もたくさん来ていただいていい雰囲気の中試合ができた。実は今回、アビスパとして北九州と戦うのは初めて。福岡にはもう1つのダービーがあるし、そういうダービーの試合は選手としても気合が入るし、サポーターの皆さんも楽しめる試合になると思う。両チーム、いい雰囲気をつくってくれたことに感謝したい」と話した。

 金監督も奈良について「彼が入ることで1本芯が通る、そんな感覚がある。彼のチームに対する関わりや言動があると違うなと感じる」と語り、今後さらなるDFラインの安定に期待が高まる。

【川添道子】

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