【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略(14)現場改善だけで終わらせない、中小企業の未来設計

はじめに

 これまで本連載では、「中小企業におけるDXの第一歩」として、現場の業務改善、人材育成、社内の意識改革など、いわば“守りのDX”を軸にしてきました。しかし、DXの本来の目的は、業務の効率化ではありません。変化する時代に対応しながら、“新しい価値をつくり出す企業”へと進化することこそがDXの真のゴールなのです。

DXから事業変革へ── “攻め”の経営を実現する3つの視点

 今回は、業務改善のその先、「攻めの経営」を実現するために、中小企業が取り入れるべき3つの視点をご紹介します。

【視点①:顧客起点の発想に立った価値創造】

 たとえば、ある飲食店では、POSデータや予約サイトの顧客層分析を基に「平日夜に来店する30〜40代女性」の来店頻度が高いことに着目し、メニューや営業時間、SNS広告の内容を見直したことで、低迷していた売上が前年比120%まで回復しました。このように、「売りたい商品を売る」のではなく、“顧客が本当に求めている価値”をデータで読み解く姿勢が、DXの大きな武器になります。

【視点②:デジタルでつくり出す新しいビジネスモデル】

 建設業のA社では、3Dスキャン技術(Matterport)を活用し、建設現場の遠隔見積やVR施工管理サービスを新事業として立ち上げました。それまで現場に毎回足を運んでいた手間やコストを省き、他社との差別化と収益の多角化を同時に実現しました。
 このように、デジタル技術の活用は単なる効率化にとどまらず、まったく新しいビジネスの「柱」を育てることにもつながるのです。

【視点③:他社との共創による市場の開拓】

 また、地域の商店街で、異業種3社が「共同デジタル販促プロジェクト」を立ち上げた例もあります。お互いのLINE公式アカウントを連携させたり、地域全体のキャンペーンを仕掛けたりすることで、単独では難しかった新規顧客の獲得に成功しています。DXを進めるなかで、“横のつながり”を生かすことも立派な戦略です。とくに中小企業では、業種を超えた知恵の共有が突破口になることが少なくありません。

未来を描き、設計できる企業へのステップ

 大企業のように一気にデジタルを導入することは難しくても、「小さく試す → 振り返る → 改善する」というスモールステップなら、中小企業にもできるはずです。たとえ最初は試行錯誤でも、“やってみる文化”が社内に芽生えたとき、すでに企業の未来は変わり始めています。たとえば、ある機械部品製造業では、トップがDX推進の思いを語って社内から「自分もやってみたい」という社員を募り、小さな実験を繰り返しました。少し時間はかかったものの、そのプロセスを経て社員の主体性が引き出され、「自分で考えて動く」文化が醸成され、DXの取り組みが自然と組織の“当たり前”になったのです。

まとめ

 DXはあくまで「手段」です。その先にあるのは、「変化を恐れず、自ら未来を設計していく力」をもった企業です。次回以降は、そうした“自ら考え、動ける組織”のつくり方についても、さらに深く踏み込んでいきたいと思います。

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(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆
(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立

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