韓国経済ウオッチ~航空産業の三国志(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
航空産業は、今後の新成長産業として、現在、日中韓で注目を集めている。
航空産業が注目を集めている理由は、市場の成長性と巨大さにある。「ボーイング787」を例に話をするとよく理解できるかもしれないが、ボーイング社はボーイング787を850機生産する計画を持っており、1機当たりの値段は200億円ほどになるので、この機種だけでも売上の合計は17兆円になる。航空産業がいかに巨大であるかが、すぐわかるだろう。
それに航空産業は、労働集約的な作業工程で構成されているため、雇用創出の効果が大きいうえ、市場参入の障壁も高くて、安定的な収益が見込める分野でもある。自動車では2万~3万個の部品が必要だが、航空機だと100万~200万個の部品が必要になるし、航空産業は機械、自動車、ITなどとの関連が深く、産業全般の底上げ効果も期待できる。
ところが、ご存知のように世界の航空産業は、今まで米国とヨーロッパが主導してきた。しかし、最近この市場に中国、日本、韓国が、技術力をベースに挑戦状を叩きつけようとしている。
航空産業は、旅客機や戦闘機、ヘリコプター、無人飛行機などの完成品市場と、部品、メンテナンス、運用などで構成されている。海外旅行の増大などで、乗客数は今後10倍くらいに、それに旅客機の数は5倍以上の成長が見込まれている。このような推移を考慮して、2020年の航空産業の市場規模は、70兆円になるとも言われている。とても魅力的な巨大市場をめぐって、日中韓では今どのような動きがあるのかを、今回、取り上げてみよう。
まずは中国の動向から見てみよう。
中国商用飛機有限責任公司(COMAC)は、去る11月2日に上海で、中国初の中型旅客機である「C919」をロールアウトした。C919は、COMACが2008年から自社開発に取り組み製造した飛行機だ。航速距離は4,075kmで、座席数は標準型が158席と168席になっている。ただ、飛行機の心臓であるエンジンは、米国のGEアビエーションとフランスのスネマクとの合弁会社であるCFMインターナショナルで製作したターボファンエンジンを搭載している。そのため現段階では、この飛行機はまだ100%中国の技術で製造したとは言えない。
しかし、C919はかなり好評を博しており、予約販売台数は517機に上っている。COMACは今後20年間で、2,000台の販売を目標としているとのことだ。これが実現すると、金額としては約18兆円の売上になる。
COMACの会長は、「C919は中国が初めて独自開発し、製作した飛行機で、意義が大きいし、今後、飛行機を輸出することを夢見ている」という抱負を明らかにした。
なお、形式名のC919のCは「china」で、9は「永久」を、19は「190席級」を意味する。COMACは、長期的にエアバスとボーイングに次ぐ航空会社を目指しており、航空産業のABC時代を開きたいという夢を持っている。
ほかに中国は、300席以上の大型旅客機であるC292も開発中である。中国はこの大型旅客機をロシアと共同開発するため、両方で130億ドルを出資するという
共同開発契約の提携も予定している。中国の航空業界では、今後、全世界的に3万7,900機の需要があり、自国では6,020機の需要があるだろうと予測している。中国が飛行機の開発に乗り込んだのは、このように自国の需要だけでも十分市場があると判断したからだ。
それに中国は毎年100の空港を建設し、2030年まで2,000の空港を確保するという計画も立てている。中国は旅行者数の増加と空港建設を軸に、航空産業を育てていく構想だ。(つづく)
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