危険ドラッグで暴走 ベンチャー経営者の末路(後)
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天神の目抜き通りで危険ドラッグによる暴走事故が起きてから1年9カ月余りが過ぎた2015年10月下旬。事故を起こした荒木氏が代表を務める(株)テンペストパワーは、福岡地裁に破産を申し立てた。
暴走から逮捕、会社は倒産
事業の立て直しを図っているさなかの14年2月4日、荒木代表は前述した危険ドラッグによる暴走事故を引き起こした。福岡市中央区渡辺通りで、普通乗用車が車9台に衝突するなどして12人が重軽傷を負った事故だ。事故の様子が撮影されており、車がぶつかりながらも止まることなく衝突を繰り返す衝撃的な映像が、繰り返しニュースで流された。
運転していた荒木代表が「同乗者が吸った危険ドラッグの副流煙を吸ってしまった。故意に吸ったのではない」と否認していたことに加え、危険ドラッグの成分解析に時間がかかったため、事故後しばらくは逮捕されなかったが、14年10月9日、ついに危険運転致傷罪の被疑事実で逮捕された。逮捕直前には新体制への移行もほぼ完了しており、売上高も月商5,000万円程度にまで回復していたが、代表の逮捕が文字通り致命傷となった。逮捕により、それまで伏せられていた代表の名前がマスコミで大きく報じられたことで、自社サイトを除く、すべてのインターネットショッピングモールが取引を停止。荒木代表も逮捕により身動きが取れなくなり、会社としては完全に機能を喪失した。
荒木代表が否認していたため、拘留時には接見禁止がつけられた。弁護士とは刑事事件の打ち合わせもあり、会社は放置状態となっていた。容疑を認め保釈が認められたのが、14年11月6日。その翌日から債権者に債務整理開始通知を送ることになったが、この時点では、テンペストパワーの正確な状況が掴めておらず、破産の方針は固まっていなかったという。弁護士とともに被害者との示談交渉に奔走し被害弁償を進めていった結果、15年2月13日、荒木代表は執行猶予付きの判決を受けた。これにより刑事事件は一区切りついた。同時にテンペストパワーが再起不能であることも明らかとなり、破産を決意したようだ。パソコンなどが押収されていたことで破産申請に手間取ったが、15年10月23日、ようやく申請することができた。
危険ドラッグの使用は論外だが、そこに至る経緯に落とし穴があったような気がしてならない。荒木代表は野心的で合理的な経営者だった。兄から引き継いだ事業を育てた手腕は評価に値する。一方で、合理的に過ぎる面が人間関係の障害になった印象がある。わずかなスタッフとコミュニケーションを取り意志統一を図れなかったのは、経営者として大きな問題だ。想像だが、こうした人間関係のあつれきが、危険ドラッグに向かわせた印象もある。危険ドラッグ使用は軽い気持ちからのようだったが、その代償はあまりにも大きいものとなった。
(了)
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