維新と自民の急接近で高市総理誕生はほぼ確実──両院議員総会でも反対論は皆無

 「高市早苗総理か玉木雄一郎総理か」が注目されていた臨時国会冒頭の首班指名選挙だが、一気に決着がつきそうな事態に急変した。15日午後6時頃から高市氏と吉村代表(大阪府知事)と藤田共同代表が面談、翌16日から両党トップと政策担当者を交えた政策協議を始めることが即決され、同日朝に開かれた両院議員総会でも「自民党との連携に賛同する意見が相次ぎ、反対論は皆無でした」(出席した維新議員)というのだ。

日本維新の会と自民党の両執行部の会談
日本維新の会と自民党の両執行部の会談

 15日午後4時からは三党野党代表(野田代表と玉木代表と藤田共同代表)の面談が先んじてもたれたものの、立民と国民民主党の基本政策に玉木代表が固執し続け、結局、幹事長と国対委員長で再協議した後に二度目の代表面談を目指すことを確認するにとどまった。

 その間隙を縫うように自民と維新のトップ会談が開かれて、一気に政策協議スタートにまでこぎつけた結果、首班指名での政権交代が絶望的な状況になってしまったのだ。

 15日の高市氏との面談後の会見で吉村代表は、「高市新総裁から連立を含めた打診、そして連立を含む首班指名の協力への打診があった。それに向けた政策協議を明日(16日)から開始するということを我々の方から申し上げた」と切り出し、自民党との連携に前向きな姿勢を見せた。そして、政策協議がまとまれば、首班指名で高市氏と書くことも明言した。某テレビ局の記者はこう解説してくれた。

日本維新の会の吉村洋文代表と藤田文武共同代表
日本維新の会の
吉村洋文代表と藤田文武共同代表

「国政選挙で議席を減らし続けている維新にとって、『副首都構想』などの目玉政策は党勢回復に不可欠。それで、与党の一員になって政策実現をアピールすることを最優先課題にしているのでしょう。小泉大臣が新総裁になることを前提に自公連立入りを維新は目指していましたが、パイプが細いとされた高市新総裁となっても与党になる方針に変わりはなかったのでしょう。しかも維新の連立入りに反対していた公明党が抜けたことが、自民急接近の追い風になったのです」 

 ただし公明の連立離脱の原因は、政治とカネの規制強化案(公明党案)を自民党が飲まなかったことだ。しかも裏金議員・萩生田光一氏を幹事長代行の要職に起用したことも公明党の怒りを買った。そんな裏金議員復権の古き自民党と連携することは、これまでの維新の支持者を失うリスクをともなうのではないか。このことを吉村代表に聞いてみたが、気にしている様子はなかった。

 先の維新議員は、こう話す。

「両院議員総会では十数人が発言しましたが、自民党との連携に否定的な意見はほとんど出ませんでした。政策実現をする絶好のチャンスがきたと捉え、副首都構想はもちろん憲法改正や社会保険料改革や公共事業見直しなどを進めようという意見が相次ぎました。藤田共同代表は与党になることで党が消滅してしまうかもしれないと発言していましたが、両院議員総会でも『たとえ党がなくなっても政策をするのだ』『公明が離脱して自民党が弱体化している今こそ、政策実現のチャンスだ。今なら政治とカネの規制強化も飲むだろう』といった熱っぽい意見が相次ぎました」

 16日午後3時からの政策協議でまとまるのか否かは予断を許さないが、少なくとも維新が首班指名で野党統一候補に投票する可能性はゼロに等しくなった。野党間の話し合いよりも自民と維新との協議のスピードのほうがはるかに速いためだ。

 これまでは国民民主党の決断が首班指名を左右すると見られてきたが、今回の自民との急接近で状況が激変、維新の動向が最も注目されることになった。

【ジャーナリスト/横田一】

関連記事