福岡の魅力向上に貢献、ふくやがグランプリ受賞 商工会議所がアワード開催

 福岡商工会議所・魅力あるまちづくり委員会(委員長:金子直幹・福岡トヨタ自動車社長)は12月9日、福岡トヨタホール スカラエスパシオで「Attractive City Fukuoka Awards 2025」を開催した。文化芸術や地域経済の発展を通じて都市力向上に寄与した個人・団体を顕彰する本アワードは今回で3回目。「まちの誇りを、みんなで讃える日。」を新たなブランドステートメントに掲げ、市民とともに地域価値を再発見する場として華やかに執り行われた。

(左から)金子委員長、林田氏(西鉄)、川原氏(ふくや)、長谷川氏、谷川会頭
(左から)金子委員長、林田氏(西鉄)、川原氏(ふくや)、長谷川氏、谷川会頭

グランプリ:(株)ふくや──「共存共栄」が育んだ都市の食文化

 最高賞のグランプリには、(株)ふくや(福岡市博多区)が選ばれた。1948年の創業以来、明太子を福岡を象徴する名産品へと押し上げた功績は、食品産業の枠を超えて、都市ブランド形成に大きく貢献した点が高く評価された。

 とくに、創業者・川原俊夫氏が製法特許を独占せず公開し、地場産業全体の成長を促した「共存共栄」の精神は、福岡の食文化と産業の発展を支えた象徴的なエピソードである。

 登壇した川原正孝代表取締役会長は「明太子が博多土産として外貨獲得に寄与し、まちづくりにも貢献してきた」と語り、企業の発展と地域への還元が不可分であるという理念を強調したうえで、「今後も『強い会社、いい会社』として地域と歩んでいきたい」と決意を示した。

 特別賞・委員長特別賞──伝統の継承と未来都市への革新

 特別賞には、漫画家であり博多町家ふるさと館館長・長谷川法世氏が選ばれた。代表作『博多っ子純情』などを通じて、博多の情緒や人情を全国へ発信し続けてきた文化的貢献が評価された。スピーチでは、デジタル化が進む時代にあっても「インクの匂い」への愛着や、博多の魅力を語り継ぐ意義を熱く語り、会場に深い共感を呼んだ。

 一方、委員長特別賞には、天神ビッグバンの象徴プロジェクト「ONE FUKUOKA BLDG.(ワン・フクオカ・ビルディング)」が選出。今年4月の開業以来、累計900万人を集客し、人・モノ・情報が交わる「創造交差点」として都市機能を牽引している。西日本鉄道の林田浩一代表取締役社長執行役員は「文化とビジネスが融合する場として、福岡をさらに盛り上げたい」と意気込みを示した。

都市の価値をかたちづくる「シビックプライド」

 式典冒頭、金子委員長は「都市ブランドとは外部が決めるものではなく、私たち自身の『誇り』によって育まれる」と語り、アワードの根幹となる理念を示した。また、福岡商工会議所の谷川浩道会頭も、他都市との優劣ではなく、博多流の“おもてなし”と“自画自賛”の精神こそが街の熱量を高めると指摘した。

 会場では「MIDORINOMARU」による演奏や福岡ゆかりのアーティストによるパフォーマンスも披露され、伝統と革新、そして地域への深い愛情が共鳴する一夜となった。

 本アワードは、福岡がもつ「都市の質」を内外に示す重要な節目であり、地域の魅力創出に向けた新たな歩みを刻む機会となった。

【児玉崇】

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