2024年11月25日( 月 )

台湾テレビ局のインターネット戦略

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taiwan_tenki 台湾には様々な思想を持つ放送局、新聞社がある。その中で独立系テレビ局と言われるのが「民視」だ。民視グループは、台湾で一般的に会話されている北京語(普通話)の番組を放送するほか、台湾南部でよく話されている台湾語(閩南語)のニュースや番組も放送している。

 「公平・中立」をうたっていながらも、独立派の民進党の動向に注目した内容が多く、与党・国民党時代下では、政府批判の報道が多い。その民視はテレビ離れ・デジタル化の流れをにらみ、テレビニュースや番組をYouTube公式チャンネルで配信している。日本でも、YouTubeを使って番組を配信する放送局も出てきたが、テレビ視聴に誘導する番宣やニュースの特集のみに限定されていた。基本的に日本のテレビ局ではネット配信の収益システムを作っておらず、無償のサービス程度の扱いで、ニュースが全てアップロードされないのは、「ニュースは数時間経つと腐るため、配信に人員を割くのは、時間、人件費の無駄」と考える傾向が強いためだ。ネットでの番組配信は「ノルマ」ではなく「ついで」だと捉えられている。

 民視同様、台湾のテレビ局では、華視、中天、三立、東森、TVBSなどの大手がこぞってYouTube公式チャンネルを開設。1日に数本単位で番組がアップされる。元来、台湾テレビ局・ニュースチャンネルは生放送と、その生放送を収録し、2回~3回のリピートをかけるという手法が取られている。1時間の中で、15分~20分は生放送で、残りの40分~45分は再放送されているという構成だ。時刻や即時性はそれほど問われていない。

 日本では他局より「1秒でも先に伝えたい」という「即時性」をベースにした競争を重視しているが、台湾では再放送に耐えられるような構成づくりが重んじられ、「面白さ」「深読み」「切り口」などが競争されるポイントになる。そのぶん、インターネット上にアップロードされた時に、見やすいのは台湾のニュースに軍配が上がる。

 台湾テレビ局のインターネットサイトには、自社の宣伝などが埋め込まれている。そして、台湾以外の香港やシンガポール、アメリカなど台僑が多く住む地域にも展開することが想定され、国境を越えた海外ビジネス戦略が打ち出されている。

【杉本 尚丈】

 

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