福岡再開発2026 天神・博多以外も開発旺盛

箱崎CP跡地で整備進む

 2024年4月に九州大学(九大)・箱崎キャンパス跡地の再開発事業者としての優先交渉権を、住友商事(株)(東京都千代田区)を代表とし、九州旅客鉄道(株)(JR九州)や西日本鉄道(株)(西鉄)、西部瓦斯(株)(西部ガス)らで構成される企業グループが獲得した。

 住商グループらの提案では、特徴的な「イノベーションコア」を中心として、ゾーン特性に応じた交流・発信・実証を促すスマートステージの整備や、街の骨格を形成する5つのメインストリートなどを整備。また、「箱崎創造の森」と題して緑化率約40%・樹木1万本以上による圧倒的な緑量の緑空間の確保を進めていくほか、九州大学時代の街割りグリッドや街並み高さなどを継承し、近代建築遺産と調和するスカイラインの形成などを行っていくとしている。具体的には、業務・研究機能としてイノベーション拠点「BOX FUKUOKA」やライフサイエンス研究拠点「ライフサイエンスパーク」、新たな駅前ビジネス街区「North gate Hakozaki」などのほか、交流・にぎわい機能として福岡・九州の豊かな食をテーマにした日本最大級の食のエンターテイメント交流拠点「フクオカサスティナブルフードパーク」や「ブック&カフェ」「交流広場」などを盛り込んでいる。ほかに、「箱崎版地域包括ケアシステム」を構築した医療・福祉機能や、九州大学100年のレガシーを継承した教育機能、各ゾーンの立地特性や利用シーンに合わせた生活支援機能などが盛り込まれているほか、多様な人たちが安心して暮らし、交流やコミュニティが生まれる多種多様な居住機能なども整備していく方針。具体的な居住機能としては、2,000戸の分譲住宅や単身者向け賃貸住宅、高齢者向け住宅、共同社員寮、学生寮などが挙げられている。

 その後、25年12月までに「九州大学箱崎キャンパス跡地地区における事業基本計画書に係る審議委員会」が2回開催。新たなまちづくりに向けて、計画案のさらなるブラッシュアップなどが図られている。第2回審議委員会で提示された「事業基本計画書(案)」によると、28年度には「第1期まちびらき」として、「BOX FUKUOKA」「フードパーク」「商業(A-1、A-2街区)」「多世代交流施設」「分譲住宅(A-3街区)」などの施設が開業予定。その後も段階的なまちづくりが行われ、学校(インターナショナルスクール、外国語専門学校)、ライフサイエンスパーク、総合病院などが順次開業していくほか、28年度からは分譲住宅の供給も始まり、36年度までに大部分が完成する計画となっている。

 こうした計画案の一部見直しや検討など、これから再開発による本格的なまちづくりを行っていくための下準備が進んでいるのと並行して、基盤となる道路インフラなどの整備も順次進んでいる。25年5月には、箱崎キャンパス跡地の中央部を東西に横断する都市計画道路「堅粕箱崎線」が供用を開始。同10月には中央部を南北に縦断する都市計画道路「原田箱崎線」も供用開始した。現在工事中の道路も25年度中に完成する見通し。これから同跡地で再開発によるまちづくりが進もうとしているなか、都市基盤としての道路インフラは、一足先に整えられる模様だ。

箱崎/貝塚

 インフラ整備ではほかに、箱崎キャンパス跡地のすぐ近くを通るJR鹿児島本線の千早~箱崎駅間において、今後の再開発を見込んでJR新駅が設置される予定となっており、25年12月に新駅の名称が「JR貝塚」と発表された。「JR貝塚」駅は、西鉄貝塚線および福岡市地下鉄の貝塚駅の東側付近、既存のJR箱崎駅から約1.7km、JR千早駅からは約2.3kmの距離となる場所で、現在はJR線路の踏切があるところに、踏切を廃止するかたちで設置される。新駅の東西を歩行者などが行き来できるよう市が自由通路を整備する方針で、新駅の開業時期は27年を予定している。

 そのほか、今回の住商らグループによって再開発が進められる南側エリア約28.5ha以外の、北側エリア約20haについては、福岡市立箱崎中学校の移転を含めた公共施設の再配置および移転跡地の活用などが、福岡市が主体となって行われる予定となっている。「貝塚駅周辺土地区画整理事業」として、JR貝塚駅および貝塚駅(福岡市地下鉄/西鉄)の駅前広場のほか、エリア内の道路・公園・緑地などの再配置を行う方針。施行期間は、事業計画の決定を公告した21年3月29日から、29年3月末(清算期間を除く)までの予定だ。

マリノア跡地に新アウトレット

(仮称)三井アウトレットパーク福岡(マリノア跡地)
(仮称)三井アウトレットパーク福岡
(マリノア跡地)

    24年8月に閉館した西区小戸2丁目のアウトレットモール「マリノアシティ福岡」の跡地では現在、三井不動産(株)と福岡地所(株)の2社が共同で、新たなアウトレットモール「(仮称)三井アウトレットパーク福岡」の開発を進めている。

 計画では、「マリノアシティ福岡」時のアウトレット棟を建て替えるとともに、一部既存建物をリニューアル・再活用する方針。敷地面積約8万5,200m2に、RC造・地上2階建の商業棟を新築するほか、S造・地上4階建の既存の商業棟をリニューアル。さらに、S造・地上6階建と地上4階建の立体駐車場を新築するほか、S造・地上4階建の既存の立体駐車場のリニューアルも行う。全体では、延床面積約11万7,800m2に約200店を計画しており、インターナショナルブランドやセレクトショップ、スポーツ、アウトドア、キッズなどのアウトレット店舗に加え、飲食店も出店する予定で、九州最大級のアウトレットモールとなる。また、海辺の立地を生かした広場にはイベント利用可能なステージも設置する。なお、屋外アスレチック施設「ノボルト」は建替え対象外で、今後も営業を継続する。

 三井不動産グループが展開するアウトレットモールブランド「三井アウトレットパーク」としては、今回が九州初進出。25年11月に着工し、27年春の竣工および開業を予定している。

九電・電気ビル西館

 九州電力(株)(以下、九電)と(株)電気ビル、(株)十八親和銀行((株)ふくおかフィナンシャルグループ傘下)、福岡商事(株)は現在、九電が本店を置く渡辺通二丁目地区において、「(仮称)渡辺通二丁目プロジェクト」を共同で進めている。

渡辺通二丁目プロジェクト
渡辺通二丁目プロジェクト

    同プロジェクトは、エネルギー・金融を軸に幅広いソリューションの提供で地域のサステナビリティ経営の実践・浸透を進め、九州の発展を支援促進する両グループが、それぞれが有する経営リソースを生かすことで、地域に開かれた福岡都心のまちづくりを進めていくもの。コンセプトとして「協働・共創の促進」「脱炭素ビルへの挑戦」「地域との共生」を掲げ、新しい働き方への対応や再生可能エネルギーなどの利用によるCO₂排出量実質ゼロを目指したオフィスビルを建設していく計画。加えて、沿道の魅力づくりや、天然芝の緑地広場・カフェなどを拠点とした地域の賑わいや交流促進などに取り組むことで、社会課題や環境課題の解決および地域の活性化に貢献し、持続可能な社会を実現していくとしている。

 25年10月に設置された工事看板によると、新たな建築物の名称は「電気ビル 西館」となっている。S造・地上15階建のビルとなる予定で、主な用途はオフィスのほか、飲食店、物販店舗、駐車場など。26年2月頃の着工を予定している。

空の玄関口がリニューアル

 25年3月、増設整備が進んでいた福岡空港の第2滑走路が供用開始となった。今回新たに増設された第2滑走路は、既存滑走路(延長2,800m)の西側210mの位置に並走するかたちで整備されたもので、延長は2,500m。滑走路の配置は、空港の敷地が狭くても2本目の滑走路を設けることが可能な「クロースパラレル方式」を採用している。

 ただし、2本の滑走路の距離が近いため、同時進入・出発は原則として不可となっており、今回供用開始となった第2滑走路は原則として国際線の離陸にのみ使用。そのため、発着処理能力の向上は限定的で、混雑緩和に過度の期待はできない状況となっている。

福岡空港

 一方で、増改築工事が進んでいた国際線旅客ターミナルビルが、25年3月にグランドオープンを迎えた。国際線旅客ターミナルビルの床面積が従来の約2倍に拡張され、保安検査場および出国審査場を移設・拡張。保安検査・出国審査通過後のエリアには、従来の約4倍の広さとなる新免税店のほか、「賑やかな屋台街」をイメージしたフードコート「HAKATA FOOD HALL」がオープンした。ウォークスルー型の免税店の中央にはランドマークとなる櫓(やぐら)を設け、出発間際まで福岡らしさ・日本らしさが感じられるよう演出されている。さらに11月には免税店お菓子・食品エリアがオープンしたほか、12月には搭乗待合室もリニューアル。これにより、22年5月から進んできた国際線ターミナルビル等の増改築工事がすべて完了した。

 一方で、国内線ターミナル側では、旧立体駐車場の跡地で25年4月から、国内線ターミナルビルと一体となった商業・ホテル・バスターミナル機能を有する複合施設の整備がスタートした。新たな複合施設は、地上11階建の延床面積約4万m2となる計画で、既設の国内線ターミナルビル(地上5階・地下2階建/延床面積約12万8,000m2)に接続するかたちで整備される。コンセプトを「旅する空港」とし、空港ならではのエモーショナル(非日常)な空間でローカル(福岡・九州)とグローバル(アジア)を旅することができる唯一無二の商業施設を目指しており、到着口(北)正面に1階から4階をつなぐ大階段を配置。フロアごとに異なる表情を見せることで、上階へと惹きつける仕掛けを施す。1~4階部分は商業フロアとして物販や飲食店が入るほか、5~11階部分には(株)西鉄ホテルズによる空港直結型ホテル「ソラリア西鉄ホテル福岡エアポート(仮称)」(全165室)が入居。さらに新複合施設の1階部分には、路線バスや高速バスの乗車拠点となるバスターミナル機能も新たに整備される。この新複合施設の誕生により、商業面積は新たに約1万1,000m2増え、国内線エリア全体でこれまでの2.2倍に拡張。飲食・物販・サービス施設などの店舗数は新たに約180店舗増え、既設の国内線ビルと合わせて約270店舗とこれまでの3倍になり、国内空港最大級となる。新複合施設の竣工は27年春ごろの予定で、グランドオープンは27年夏頃を目指している。

鉄道インフラの拡張検討

 福岡市では、市内を走る鉄道インフラの延伸や拡張についても検討している。

 25年11月に開催された市議会交通対策特別委員会では、将来の需要増加に向けて、福岡市地下鉄七隈線・橋本駅と空港線・姪浜駅間の延伸の可能性や、七隈線・博多駅と福岡空港国際線ターミナル間の再延伸の可能性について、検討していく方針を示した。また、現在は4両編成で運行している七隈線の車両を6両に増やすことも併せて検討していくといい、来年度予算案での関連費用計上に向けて調整する方針。

 橋本駅と姪浜駅間の接続については、地元住民からの要望も根強いといい、両駅がつながれば博多駅を含めて環状型の交通網となり、混雑緩和や地域全体の鉄道ネットワークの利便性向上が期待される。しかし一方で、七隈線と空港線の線路幅や車両規格が異なるため、相互乗り入れは困難なうえ、2駅の距離が離れていることで、事業期間や事業費が膨れ上がる懸念もある。ルートについては福岡高速環状線の地下部分を通すのが現実的とみられるが、中間駅をどこに設けるのかも課題だ。

 一方で、七隈線・博多駅から福岡空港国際線ターミナルまでの再延伸については、橋本駅~姪浜駅間の延伸に比べると、距離的には実現可能性は高そうに思える。しかし、博多駅から福岡空港にかけての地下部分には強固な岩盤が存在するとされており、こちらも一筋縄ではいきそうにない。

 さらに福岡市では、現在は貝塚駅での乗り換えとなっている、地下鉄・箱崎線と西鉄・貝塚線の相互乗り入れによる直通運転の実現可能性についても、検討していくとしている。ただし、現在の西鉄・貝塚線の各駅は、地下鉄車両を受け入れるだけのホームの長さが確保できていないため、実現に向けては各駅の大幅な改修工事が必要となるなど、そう容易ではなさそうだ。

福岡市地下鉄/福岡家庭裁判所跡地

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 福岡市内では今回取り上げたほかにも、唐人町2丁目の「こども病院」跡地で進む再開発プロジェクトのほか、英・高級ホテルのインターコンチネンタルホテルズ&リゾーツが入居予定の「福岡家庭裁判所跡地」の再開発、Park-PFIによる清流公園などのリニューアル整備、大濠公園の南側隣接地で29年度の開館を予定する新たな福岡県立美術館、閉園後に沈黙を続けている「かしいかえん」跡地の再開発、活用が検討されている博多区の「冷泉小学校」跡地の再開発など、さまざまな再開発プロジェクトが進行中もしくは検討・計画されている。こうした市内各所での再開発プロジェクトによって都市の新築代謝が進んでいる現状は、依然として都市・福岡のポテンシャルが高く評価されている証だともいえる。だが一方で、建設費等の高騰が続いている昨今、今後の状況によっては中止となるプロジェクトが出てきてもおかしくはない。今の再開発の勢いがどれだけ続いていくか、引き続き動向を見守りたい。

【坂田憲治】

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