【トップインタビュー】「身の丈経営」を貫き、堅実な成長を目指すは「福岡No.1デベロッパー」
(株)コーセーアールイー
代表取締役社長 諸藤敏一 氏
自社ブランド「グランフォーレ」シリーズを中心に、福岡都市圏を中心とした九州各県および首都圏でマンション事業を展開する総合デベロッパーの(株)コーセーアールイー(東証スタンダード/福証)。安定した経営のために事業の多角化に注力しながらも、福岡の地場デベロッパーのリーダーとして業界を牽引し続けている、同社代表取締役社長・諸藤敏一氏に聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長 児玉直)
26年1月期は増収増益
当初予想からも上振れへ
──まず、2026年1月期の見通しについては、いかがですか。
諸藤敏一氏(以下、諸藤) 昨年12月8日に発表した「連結業績予想の修正に関するお知らせ」のなかで触れさせていただいておりますが、26年1月期通期の連結業績は、売上高100億1,600万円(前年同期比30.9%増)、営業利益5億9,500万円(同85.3%増)、経常利益7億8,700万円(同57.0%増)、当期利益5億3,100万円(同55.7%増)と増収増益となる見込みです。以前に発表していた当初予想と比べると、売上は若干下回りますが、販売費等の効率化に努め、経費支出の抑制を行うことができたことで、利益面は増加する見込みとなりました。
代表取締役社長 諸藤敏一 氏
その前の25年1月期は、資産運用型マンション完成物件の減少と次期完成・売上計上予定物件の先行支出などを要因として売上高が100億円を下回ったほか、24年1月期比で減収減益となっていました。それが、26年1月期ではグランフォーレ小山城山町(栃木県小山市)やグランフォーレ高見馬場(鹿児島市)、グランフォーレ百道三丁目レジデンス(福岡市早良区)などを引き渡したほか、グランフォーレ姪浜駅南レジデンス(福岡市西区)やグランフォーレ室見レジデンス(福岡市早良区)、グランフォーレ日吉プレシャス(福岡県久留米市)などの販売を開始しており、順調に契約高を積み上げていきました。そのため、再び売上高100億円超となったほか、利益面でも増益となる見込みです。
土地価格の高騰により
用地取得のチキンゲームに
──現在のように物件価格が高騰していくなか、同じ売上高100億円でも、その内訳は変わってきたのではないですか。
諸藤 おっしゃるように、かつて当社が売上高100億円を計上するためには、単純計算で平均単価2,500万円程度の物件を約400戸供給する必要がありました。しかし現在では、同じ100億円の売上高を計上するために、半分以下の180戸程度で達成できてしまいます。つまり、供給戸数が半分以下でも売上規模が維持されているということは、1戸あたりの単価が以前の倍以上にまで跳ね上がっていることを意味します。
──販売価格が高騰している最大の要因は、やはり土地価格の高騰なのでしょうか。
諸藤 もちろんそれだけではなく、資材価格や人件費の高騰なども要因としては大きいのですが、やはり我々のようなデベロッパーにとっては、土地価格の高騰が一番大きな要因となっています。現在の土地の入札は、まさに崖に向かって走っているような感覚で、用地取得をめぐる壮絶な「チキンゲーム」の様相を呈しています。そのため、当社の社内においても土地の仕入れが、最大のエネルギーを必要とするセクションになっています。
たとえば、我々地場・福岡の人間が「坪200万円、無理をしても坪400万円だろう」と考えて入札に参加しても、東京の大手デベロッパーは平気で坪800万円──つまり我々の予測の2倍近い金額を入れてくることがあります。彼らにとって、東京の相場に比べれば福岡の土地は「安い」と感じるのでしょう。そうなると、我々地場にとっては、なかなか土地を仕入れることが難しくなってしまいます。
ですが、そうした中央・大手デベロッパーが高い値段で土地を仕入れることで、マンションの販売価格は跳ね上がってしまい、福岡の都心部でも1億円を超える価格のマンションが徐々に出てきています。しかし、福岡の平均年収は400万円程度です。たとえ共働きでも、1億円を超えるマンションを一般の人が買うのは、本来であれば非常に厳しいはずなのです。このままでは、福岡の人間が福岡のマンションを買うことができないというような、おかしな状況になりかねません。
自己資本比率にこだわり
「身の丈経営」を堅持
──そうした状況下で、御社が経営において最も重視している指標は何でしょうか。
諸藤 私は当社の上場準備を行っていたころから、一貫して「利益」と「自己資本比率」にこだわってきました。というのも、我々のようなデベロッパーという業種の宿命というか、致命的な欠陥は、売上至上主義に走りがちで、ともすれば自らの「身の丈」を超えた経営をしてしまうことです。
過去の歴史を振り返れば、かつて1兆円の売上を誇った中央の大手デベロッパーや、福岡で大量供給・販売を行っていた地場大手デベロッパーなどが、バブル崩壊やリーマン・ショックなどの影響で、あえなく破綻していきました。こうした企業の共通点として挙げられるのは、販売数や売上などの数字ばかりを追っている一方で、自己資本比率がそれほど高くなかったことです。
私は、我々のようなデベロッパーが経営を行っていくにあたっては、最低でも自己資本比率50%は必要ではないかと考えています。そうでなければ、リスクを恐れて銀行側もなかなか融資をしづらいでしょう。私は銀行に対して、「もし計画が失敗して売れ残ったとしても、この定期預金を解約すればすぐに返済できます」と言い切れる経営を目指しています。根性や気合いだけで借金は返せません。こうした確固たる財務基盤があるからこそ、銀行も安心して融資をしてくれるのです。
──今後、金利の上昇も予想されますが、経営への影響はどう見られていますか。
諸藤 やはり金利の上昇については、非常に警戒しています。将来的には1%程度まで上がる可能性があると見ています。もし100億円の借入があれば、金利が1%上がるだけで年間1億円、月々で約1,000万円近くの余計な支払いが発生します。これは非常に恐ろしいことです。だからこそ、将来的には無借金経営を目指したいと強く思っています。
ストックビジネスを拡大
新たに物流事業にも参入
──現在は、マンション事業以外の新たな収益の柱の構築についても模索されていますね。
諸藤 当社はマンションデベロッパーですが、先ほどからお話ししていますように、現在のように物件価格が高騰していく状況下で、マンション事業だけに過度に依存していては、次第にジリ貧になってしまいます。そのため当社では、徐々にマンション事業への依存度を減らすとともに、安定した収益源となるストックビジネスを増やしていく戦略をとっています。
たとえば、当社の事業セグメントは現在、「ファミリーマンション販売事業」「資産運用型マンション販売事業」「不動産賃貸管理事業」「ビルメンテナンス事業」の4つですが、このうち不動産賃貸管理事業とビルメンテナンス事業がストックビジネスにあたります。これら2つのセグメントは、売上全体に占める割合はまだそれほど高くないものの、いずれも堅実な成長を遂げてきております。
──加えて、新たに物流事業にも参入されるとお聞きしています。
諸藤 佐賀県基山町において当社初となる物流倉庫および物流倉庫用地を取得してロジスティック事業に参入し、「GF-LOGI基山センター」として今年1月末に竣工を迎えたところです。
この物流センターは、九州自動車道・鳥栖ICから約3.1kmの国道3号沿いに位置しており、物流・工場の適地である鳥栖および基山エリアの限られた事業用地において、数少ない開発可能地の1つです。ここは、巨大な消費地である福岡市内へのアクセスが優れているだけでなく、「2024年問題」といったトラックドライバーの時間外労働の上限規制のなかでも、九州全域をカバーできる広域配送拠点としても優れた立地で、中継輸送の拠点としての需要が極めて高いところです。すでに入居者は決定しており、年間で約1億円の賃料収入が見込めます。
面白いことに、物流事業に参入したことで、「コーセーアールイーは物流もやるのか」と認知され、これまでは入ってこなかったような5,000坪や1万坪といった広大な土地の情報が仲介業者から寄せられるようになりました。これは情報の入り口を広げるという意味でも非常に大きな成果です。まずはこの基山の物件を試金石として、今後は物流関連の開発にも注力していこうと考えております。
初任給増と奨学金支援で
長期的な企業価値の向上へ
──御社では、大卒の初任給を大幅に引き上げましたね。
諸藤 やはり企業の成長にとって、人材こそが最も不可欠な経営資源です。そのため、26年4月に入社する営業職の大卒新入社員の初任給を、改定前の26万円から30万1,000円へと4万1,000円引き上げます。また同時に、26年2月から給与水準の改定を実施し、営業職で平均約9%、全社員で平均約5%の基本給を底上げするベースアップを実施します。
今回の給与水準の改定は、定期昇給とは別にベースアップを実施することで、人手不足が顕著な我が国の労働市場における競争力を強化するとともに、従業員の待遇改善に取り組むことで、急激な物価高に見舞われる社員の生活を守っていきたいという思いがあります。それによって社員のエンゲージメントを深めてモチベーションの維持・向上を図ることで、お客さまへ提供する商品やサービスの品質向上、ひいては長期的な企業価値の向上につなげていく方針です。
さらに当社では福利厚生の一環として、今年4月以降に新卒正社員として入社した方を対象に「奨学金代理返還制度」を導入しました。これは「日本学生支援機構」の奨学金を受けていた社員に対し、会社が月額上限1万5,000円を最大10年間にわたって負担し、社員の奨学金返還を支援するというものです。
今の若者は、大学卒業時に300万円から500万円という奨学金という名の多額の「借金」を抱えているケースが少なくありません。毎月3万円や4万円の返済を行いながら、福岡で高い家賃を払って生活するのは本当に大変なことです。そのため、会社がこの返済を引き受けることで、社員の経済的負担を軽減して生活の安定化につながり、仕事への集中や自己成長の機会が増えると考えています。こうした踏み込んだ支援を行うことで、社員1人ひとりが安心して働きながら、それぞれのより良いキャリアを築いていけば、長期的には当社の企業価値の向上につながると確信しています。
──最後に、御社の今後の方針についてお聞かせください。
諸藤 当社は1992年8月の創業以来、経営理念に掲げた「理想の住まいへ飽くなき挑戦」に沿って、福岡都市圏を基盤としてマンション事業を中核とした事業を展開してきました。今後も持続的に成長し続けることができる企業となっていくためには、人材の育成・登用や事業エリアの拡大、不動産関連事業の創出、業務の効率化、マーケティング力の向上など、取り組んでいかなければならない課題は山積しております。その1つひとつの解決に向けて、全社グループ一丸となって取り組んでいかなければなりません。
今後も、現在掲げている「ブランド力・供給戸数で福岡No.1のデベロッパーを目指す」というビジョンに沿って、適正な利益水準を維持しつつも、資産価値の高い商品を継続して供給して「グランフォーレ」のブランドイメージを向上させていくことで、持続可能なまちづくりに貢献しながら、地域に根差した企業として、堅実に成長し続けることを目指します。そのためにも、先ほども述べたようにあまり高望みも背伸びもすることなく、堅実な「身の丈経営」を続けていくとともに、持続的に企業価値を向上させることで、ステークホルダーの皆さまのご期待に応えていきたいと思います。
【文・構成:坂田憲治】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:諸藤敏一
所在地:福岡市中央区赤坂1-15-30
設 立:1992年8月
資本金:15億6,245万円
売上高:(26/1連結見込)100億1,600万円
<PROFILE>
諸藤敏一(もろふじ・としかず)
1955年6月、福岡市生まれ。九州共立大学経済学部卒業。㈱すまい取締役を経て、92年8月に(株)コーセーを創業。2005年1月に(株)コーセーアールイーに商号変更した。07年に福岡証券取引場に上場し、12年4月の大証JASDAQ(市場統合にともない13年7月に東証JASDAQ)、16年9月の東証二部を経て、17年10月に東証一部(22年4月に東証スタンダードへ移行)上場をはたす。社外では(一社)九州住宅産業協会の理事長(2010年〜2020年)も務め、業界の発展に貢献した功績から14年には「春の黄綬褒章」を受章。現在も福岡のデベロッパー業界を牽引し続けている。








