2016年最大の課題、隣国・中国は環境問題を解決できるのか(4)
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参議院議員 浜田 和幸 氏
緊急対策も改善見られず
こうした状況を受け、中国では脱石炭化に向けてさまざまな試みが始まってはいるようだ。しかし、現状は厳しい。2015年末にパリで開催されたCOP21に提出された資料によると、中国における石炭使用量は増え続けている。国内には1,171カ所の石炭火力発電所が稼働している。新たに155カ所の発電所の建設許可も下りたばかりである。中国は、国内の電力需要の3分の2をいまだ石炭に依存しているからだ。しかも、中国政府はこうした石炭火力発電所を海外輸出の目玉と位置付けているのである。2010年からの5年間だけでも27か国に92の火力発電所を建設輸出した実績を誇る。中国の輸出入銀行が資金融資を行い、世界各国に石炭火力発電所を建設しまくっているのが現状だ。
また、12年、中国の自動車保有台数は1億台を突破した。自動車による排気ガスは増大する一方である。というのも、中国では新車の場合でも、排ガス規制が欧米や日本と比べ、基準が緩くなっているからだ。しかも、それ以上に規制の緩い中古の自動車も多く使用されている。急速なモータリゼーションが、中国の環境悪化に拍車をかけている側面は否定できない。
道路の総延長については、ヨーロッパと中国の自動車道路の距離は、ほぼ同じになっている。しかし、鉄道に関しては、中国はヨーロッパの4分の1以下。また、都市部における公共交通手段についていえば、東京都内では、2,364キロメートルの鉄道が交通量90%以上を分担しているのに対し、北京では、公共交通手段に自転車の利用率を含めても、交通量全体の50%に達していない。
こうした公共交通手段の遅れも公害問題の解決に障害となっていると言えるだろう。しかも北京においては、人口の76%が主要幹線道路の50メートル以内、あるいは高速道路の500メートル以内に居住しているとのデータもあり、健康への悪影響が懸念される所以である。
いずれにせよ、中国では環境対策に関する法整備の遅れが目立っている。1987年に大気汚染防止法が公布され、汚染物の排出濃度と排出総量を規制する試みが始まった。1990年代後期には、SO2(二酸化硫黄)規制区と酸性雨規制区が決定され、こうした区域内では、厳しい規制の枠がかぶせられたのも事実ではある。
さらには2000年には大気汚染防止法が改正、強化された。そして自動車排ガスについても、排出基準を段階的に高めており、現在では軽自動車の汚染物質、排出制限値とその測定法が制定され、自動車公害への対策が進められている。
とはいえ、こうした規制がありながら、すでに言及したように、PM2.5の蔓延という前代未聞の健康被害をもたらす事態に陥っているのが今の中国だ。要は、これまでの法律や規制がザル法だったということの証明である。事態を重視した中国政府は13年1月、北京市において工場の操業停止、建設現場の工事中止、路上での排ガス検査、公用車の削減など、緊急対策を矢継ぎ早に打ち出した。そして、大気汚染に関する技術政策や規制基準の強化なども発表した。しかし、今日に至るも事態の改善は見られない。(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。関連キーワード
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