【クローズアップ】MrMaxの次の一手 食品・PB・人材戦略で描く成長再設計

 足元の好業績は、そのまま将来の成長を保証するものではない。これは流通業全般に共通する現実であり、(株)ミスターマックス・ホールディングスも例外ではない。出店ペースや業態開発、小売本業の収益力といった論点にも課題は残る。ただ、見落とせないのは、同社が現在の追い風を単なる業績上振れで終わらせず、次の成長モデルの再設計につなげようとしている点だ。食品で来店頻度を高め、PBで収益性を補強し、商圏に応じて店のかたちを変え、さらにブランドと人材の戦略を組み替える。直近の決算資料や取材内容、組織再編の動きを重ねると、そうした多層的な変化の方向性が浮かび上がる。

最高収益更新の中身

 (株)ミスターマックス・ホールディングスの2026年2月期第3四半期の連結業績を見ると、営業収益は1,108億6,000万円で前年同期比8.8%増、売上高は1,067億1,300万円で同9.0%増、営業利益は36億1,400万円で同23.5%増、経常利益は36億7,400万円で同27.3%増となった。営業収益は第3四半期として過去最高を更新。営業収益、売上高、利益のいずれも増加基調にあり、会社予想に対する進捗も順調である。足元だけを見れば、同社は回復局面というより、収益構造の修正が一定程度機能し始めた段階に入ったとみるほうが実態に近い。

 部門別では、増収の中心は食品だ。食品売上高は427億5,800万円で前年同期比15.4%増、売上構成比は40.1%となり、初めて4割台に乗せた。食品の伸びが全社売上を押し上げたことは明白だが、重要なのは、それが既存店売上高の改善や客数増とも連動している点である。物価上昇の追い風だけでは説明しきれない変化が、店頭で起きている。

食品4割時代の意味

 もっとも、この伸びをそのまま「食品企業への転換」とみるのは早計だろう。取材で会社側が繰り返し示したのは、食品を成長の入口とはみる一方、それを経営の唯一の軸に据える考えではないという認識だった。食品は来店頻度を高める力が大きく、物価高局面では消費者の関心も高い。しかし、利益率は非食品に比べて相対的に低い。食品の売場を広げ続ければ、売上は伸びても全体の粗利構造には圧力がかかる。

 従って、同社にとって食品は「伸ばすべき部門」であると同時に、「全体収益との均衡のなかで運営すべき部門」でもある。この点はMrMaxの業態認識そのものにもつながる。取材では、自社は食品スーパーでもドラッグストアでもホームセンターでもなく、それらを内包した独特のディスカウント業態だとの説明があった。つまり、食品強化の狙いは食品専門店化ではなく、生活必需品を軸に顧客接点を増やし、住関連、家電、日用品まで含めたワンストップ性を高めることにある。食品比率の上昇は重要な変化だが、その意味は「食品への特化」よりも、「店全体の再編集」に近い。

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コメが客数を呼び込む

 その象徴がコメである。取材では、昨年6月以降の備蓄米対応が集客に大きく寄与したことが語られた。品不足が意識される局面で供給を切らさなかったことが来店動機となり、マスコミ露出も相まって新規客の獲得につながったという。その後、備蓄米の販売終了後もコメの売上は高水準を維持しており、会社側は初回来店客が継続購買につながった可能性をみている。

 単発の特需を継続来店へ転換できたとすれば、これは単なる商品ヒットではない。顧客基盤形成の入口として大きな意味をもつ。コメの供給対応は、同社の食品戦略の性格もよく表している。直営で生鮮を深く抱え込むのではなく、まずは需要が大きく、価格感度が高く、来店頻度に直結する商材で存在感を高める。日常の買い物のなかで「この店に行けば必要なものがある」という認識をつくることが、食品売場全体の価値を押し上げる。

 同時に、洗剤、ペットフード、酒といった生活必需性の高いカテゴリーで価格訴求を強めたこと、10月の創業100周年記念セールが客数増を後押ししたことも全体の伸びを支えた。費用面では人件費やキャッシュレス決済手数料の増加があるものの、会社側は概ね想定内とする。足元の増益は、値上げ環境に乗った受け身の結果ではなく、供給対応、価格政策、販促を組み合わせた成果とみるべきだ。第3四半期累計の既存店売上高が前年比7.5%増となったことも、その裏づけとなる。

ワンストップ再構築へ

 今後を占ううえで注目すべきなのは、食品の伸びそのものよりも、食品をどう全体戦略に組み込むかである。取材では、食品売場は拡大傾向にあるが、やみくもに広げるわけではないと説明された。惣菜や弁当、生鮮3品については、自前のノウハウを深く内製化するのではなく、外部パートナーと連携しながら売場を構成していく考え方を取る。これは食品スーパー化ではなく、ディスカウント業態としての効率を維持しながら食品機能を強める方向性にほかならない。

 問われるのは、食品の量ではなく、食品が店全体の価値にどうつながるかである。顧客にとって、食品を買いにきたついでに日用品や家電、住関連商品まで一度にそろう利便性が高まれば、来店頻度だけでなく買上点数の増加にも波及する。逆に、食品だけを拡大しても、非食品との回遊や買い回りが起きなければ、同社本来の強みは生きない。食品強化の本質は、食品の専門性競争に踏み込むことではなく、食品を起点に店全体のワンストップ性を再構築することにある。

PBが粗利を支える

 その一方で、収益面を下支えする役割を担うのがプライベートブランド(PB)である。決算資料によると、PB売上高構成比は第3四半期時点で23.1%に達し、中期的には30%を目標としている。食品部門の伸びが目を引く一方で、会社側が収益戦略として重視しているのは、むしろPBを含む非食品の強化とみるべきだ。売上構成比だけではなく、粗利の質をどう高めるかという論点が大きい。

 取材で印象的だったのは、家電分野におけるPBのつくり方である。メーカーの旧モデル品をロットで確保し、自社向け商品として販売することで、機能は十分だが価格は抑えた商品群を成立させる。最新型を追う客ではなく、生活コスト全体を見ながら合理的に買い物をする層に向けた設計だ。量販店のような最新機種競争ではなく、「必要十分」を安く届ける。この割り切りは単純な値下げではない。調達力と商品編集力によって、「この店で買う理由」をつくろうとする発想に近い。

 ディスカウントストア間の競争が激しくなるなか、価格だけを武器にした勝負は持続しにくい。必要なのは、低価格を維持しながらも、商品側でどれだけ来店理由と購入理由を生み出せるかである。食品で来店動機をつくり、PB家電や生活雑貨で利益を確保する構図は、単なる売上拡大策ではなく、収益構造を安定させるための再設計でもある。PB比率30%という目標は、同社が今後どこで稼ぐのかを示す指標といえる。

出店は適地適業態へ

 出店戦略にも変化の兆しがある。26年2月期にはSelectユーカリが丘店、別府店を出店し、今後は福岡市東区のSelect和白店、小郡市の小郡店が控える。決算資料では、Select和白店は約2,302㎡のSelect業態、小郡店は約6,650㎡の大型店とされる。取材では、土地の大きさや商圏特性に応じて、スーパーセンターにもSelectにも柔軟に振り分ける考えが示された。従来型の大型店だけでは拾い切れない市場に対し、フォーマットを使い分けながら出店余地を広げる方向にある。

 Select和白店については、競合が多い一方で、同社にとっては空白だったエリアを埋める位置づけとされる。小郡店は大型店として準備が進む。ここで重要なのは、出店数の多寡ではなく、「どこに、どの業態で出すのか」という発想に同社が比重を移しつつある点だ。

 大型店一辺倒では、建設コストや立地制約の面から選択肢が限られる。逆に、小型・中型業態の磨き込みが進めば、小商圏対応や人口密集地での展開余地は広がる。出店戦略は今、量の議論から、適地適業態の議論へと重点が移り始めている。少子高齢化や商圏小型化が進むなか、この論点はさらに重要になる。MrMaxにとって今後の焦点は、Select業態を単なる小型版ではなく、小商圏需要に対応する新たな柱へ育てられるかどうかにある。

人事・ブランドを再編

 今回、「中長期の成長をどうつくるか」という問いに対して、最も示唆的なのは組織面の動きかもしれない。ミスターマックスHDは26年3月1日付で「人事・ブランド戦略部門」を新設し、人事部を「人事戦略部」として移管した。合わせて、ブランド・コミュニケーション室を部へ改組している。会社側はその狙いを「企業ブランドの浸透」「社員の定着率向上」「持続的な人材確保」と説明する。

 商品や店舗だけでは成長が続かない局面に入りつつあるからこそ、ブランドと人材を経営課題として前面に据えたと読むべきだろう。この再編は、単なる名称変更ではない。従来、ブランド発信は広報機能として捉えられがちだったが、今回の改組ではそれが人事戦略と同じ束のなかに置かれた。採用、定着、理念浸透、対外的なブランド認知を切り離さず、一体で設計し直そうとする意思表示とみることができる。

 流通業において、商品と価格だけで差別化する時代が難しくなるなか、人材の質と企業文化、発信力そのものを競争力の一部として位置づけ始めた。その意味で今回の再編は、売場改革の裏側で進む経営基盤の再構築でもある。

平野氏が握る次世代軸

 この再編の中心に立つのが平野泰啓氏である。平野氏は26年3月1日付で、執行役員ブランド・コミュニケーション室長から、上席執行役員人事・ブランド戦略部門管掌兼ブランド・コミュニケーション部長へと役割を広げた。事業会社である(株)ミスターマックスでは代表取締役副社長も務めており、持株会社と事業会社の双方で存在感を強めている。

 平野氏は現代表者の息子であり、次世代を担う経営人材として前面に出てきている。創業者は平野茂氏であり、現社長・平野能章氏は統合報告書で「創業者である私の祖父」と記している。創業100年を超えた企業にとって、次の時代を誰が担い、何を変えるのかは避けて通れない論点だ。

 平野泰啓氏が今回、人事・ブランド戦略部門を担うことになった意味は小さくない。食品、PB、出店といった個別施策を前へ進めるうえで、その実行を支える人材とブランドの設計を任される立場に就いたからである。売場や数字だけでなく、「誰が変革の中核に立つのか」が見え始めた点は注目に値する。

問われる成長設計力

 もちろん、MrMaxの課題が消えたわけではない。食品の質をどう高めるか、Select業態をどう磨くか、出店ペースをどう現実化するか、小売本業の収益力をどう厚くするか。いずれも簡単なテーマではない。

 ただ、少なくとも現時点で確認できるのは、同社が課題を前に立ち止まっているわけではないということだ。食品で集客をつくり、PBで収益を支え、商圏対応型の出店を進め、さらにブランドと人材の戦略を立て直す。個別施策をバラバラに並べるのではなく、それらを次の成長モデルとして束ね直そうとしている点に、現在のMrMaxの本質がある。

 今後の焦点は、足元の好調を維持できるかどうかだけではない。その好調を、持続的な成長モデルへ転換できるかどうかである。食品の伸びを来店習慣に変えられるか。PBを利益の柱へ育てられるか。Select業態を次の出店エンジンにできるか。そして組織と人材の再編を企業競争力へ結びつけられるか。問われるのは、数字の伸びそのものではなく、その先を設計する力である。創業100年を経たMrMaxは今、価格訴求の延長線上ではない次の競争力づくりに踏み込もうとしている。

【児玉崇】

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