【読者投稿】福岡空港国際線延伸論に反響 地下鉄構想をめぐる意見と筆者回答

(株)アクロテリオン 代表取締役 下川弘氏

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 (株)アクロテリオン代表取締役・下川弘氏の寄稿「福岡市地下鉄の福岡空港国際線ターミナルへの延伸について」について多くの反響をいただいた。今回は、ご意見の一部と、それに対する筆者の返信を紹介する。

ご意見1

 福岡市の都市規模、および今後の人口増減推移がまったく考慮されていない記事だと思いました。そもそも、すでに路線が存在する竹下―大橋間を結ぶメリットが薄く、リソースを割くべきではありません。福岡市としての余力は、博多―国際線と姪浜―橋本延伸がベースで、福岡空港国内線―博多の森間を追加できるかどうかのレベルだと思います。それ以上の予算投入は施工完了時点で人口減に突入するリスクが大きいです。そのリソースを割くくらいなら、鉄道空白帯地域に特化した増線計画を考えるか、道路整備(幅拡張、交通整理)にコンスタントに費やす方がまだマシだと考えます。いずれにしても、費用対効果が最大になる施策でないと、市民の理解は得られません。

筆者返信

 ご意見ありがとうございます。おっしゃる通り、費用対効果が最大になる施策が必要だと思います。リソースを活用することも大事だと思います。さらに福岡市の財政の余力がないというのも十分承知しています。それらも踏まえたうえで、現在計画されようとしている七隈線の延伸による博多駅―国際線ターミナルルートは、国際線ターミナルから先の地下鉄ルートが見えないので、いかがなものかと考えるところです。高島市長の発表時にも地下鉄空港線の延伸についても検討するとおっしゃっていたので、ベトナムのような将来的な地下鉄ネットワーク網(全体像)をまとめていただいたうえで、今回のルートの妥当性をご検討いただければよいのではないでしょうか。

 また、「今すぐ大橋までつなげ」と言っているわけではありません。30年後・50年後の福岡の地下鉄インフラを考えるにあたって、まず将来構想/計画がなければ、近視眼的な計画で発展がありません。仮に私たちが30年後・50年後に生きていようが、死んでいようが関係なく、子どもや孫の世代、さらにその先の世代に何を残せるのかを、今の私たちが考えることが重要なのではないでしょうか。

ご意見2

 国際線ターミナルと国内線ターミナルを一緒にして国内線側へつくり直すと滑走路も間隔を広げられ、便数も増やせると思いませんか!?

筆者返信

 ご意見ありがとうございます。福岡空港の歴史を調べてみますと、以前は現在の国内線ターミナルのところに、第1・第2・第3ターミナル(国際線ターミナル)に分かれた建物がまとまって並んでいましたが、国際線旅客の増加に対応するため、1999(平成11)年5月に国際線ターミナルを西側に移転させた経緯があります。そして、現在の福岡空港の周辺は昔と違って市街地化してしまっていますので、これ以上の敷地拡大を見込むことができません。従って、国内線側にしろ、国際線側にしろ、どちらかにターミナルをまとめることは難しいと思います。

 ところが、成田空港では、「新しい成田空港構想」というものが発表され、B滑走路の延伸とC滑走路の新設、そして3つのターミナルを1つに統合する「ワンターミナル化」を進めるという事業が始まりました。(資料-1・2)。

資料-1 新しい成田空港構想 滑走路の検討図(2016年9月発表資料)
(出典:成田国際空港(株)HPより)

 これまで国内線/国際線の乗り継ぎもアライアンス内で乗り換えていたことが、最近ではそのアライアンスの垣根を越えて乗り換える利用者が増えてきたこと。DX化が進んできたことによる広大なチェックインカウンターがもっとコンパクトにできるようになってきたこと、そうした新しいニーズに合わせて、成田空港ではワンターミナル化することで、国内線/国際線の移動も少なくて済むようにしたい。ということのようです。具体的には下記の内容のようです。

1.利便性の飛躍的向上(乗り継ぎのストレス軽減):
現在、第1~3のターミナルに分かれているターミナルを1カ所にまとめることで、国際線同士、または国際線と国内線の乗り継ぎにかかる時間や移動距離を劇的に短縮し、移動のストレスを解消する。

2.「世界最高水準」の機能強化:
2028年度末の滑走路増強(新滑走路)に合わせて、より大きな需要に対応できる巨大な新ターミナルを建設し、国際的なハブ空港としての競争力を強化する。

3.最新技術の導入(スマート空港):
顔認証システムを用いた「Fast Travel」の導入などを最大限に活用し、チェックインから搭乗までの待ち時間を短縮し、スムーズで衛生的な体験を提供する。 

資料-2 新しい成田空港構想 ワンターミナル化概要図 (出典:2024年7月「新しい成田空港」構想検討会資料より
資料-2 新しい成田空港構想 ワンターミナル化概要図
(出典:2024年7月「新しい成田空港」構想検討会資料より

 このように、次の時代を見据えてみると、福岡空港もこのまま国内線/国際線に分かれてしまっているのは、遅かれ早かれ時代遅れの配置システムになってしまう可能性もありますね。

 もう1つ、仮に福岡空港が現在の場所でワンターミナル化することができたとしても、福岡空港の敷地が狭いので、滑走路の間隔(現在210m)をそれほど広げることができません。便数を増やす為には、ある程度の滑走路間隔がないと、航空機の同時離発着ができないのです。オープンパラレル方式という同時離発着ができる方式がありますが、これは、ICAO(国際民間航空機関)の規定では滑走路間隔は1,525m以上、国交省航空局の資料では1,310m以上とされています。しかし安全性や運用を考えた場合には約2,000m以上あったほうが良いとされています。

 従って、今の福岡空港の敷地内では滑走路間隔を広げることはできませんし、規定以下だと意味がないように思います。とても難しいといわざるを得ません。それと増便については、夜の時間帯を使う方法もありますが、過去に最高裁まで争われた福岡空港騒音訴訟の結果、抗告は却下されましたが、地元住民の生活を配慮して、朝7時~夜10時までの運用となっていますので、これまた滑走路間隔を広げられたとしても、やはり難しいでしょうね。今、国交省の方でも1時間あたり45回まで離発着の回数が増やせないか検討されていますが、これが限界だと思います。

ご意見3

 凄く分かります。福岡は地下鉄路線が少な過ぎます。台湾に行ったとき、地下鉄路線の多さに驚き、しかも乗り換えがし易くてビックリしました。福岡より台湾の方がインフラが発達している!と。七隈線や空港線を縦断して百道や大橋方面に向けた路線をつくったり橋本駅を延伸して七隈線と空港線をつなげるなど路線を増やして行って欲しいです。

筆者返信

 ご意見ありがとうございます。約20年前に福岡空港を新空港にするかどうかの議論があったときに、よく比較されていたのは、オランダの国と九州の比較でした。土地の広さも、GDPもほぼ同じということで、「九州はヨーロッパの1つの国と匹敵するぐらいの経済力があるのだ」とよく言われていました。その後、日本国内は失われた30年とよくいわれる通り、日本経済は低迷し、インフラ整備も行われなかった。とくに09年に始まった民主党政権時には「コンクリートから人へ」などというスローガンで、「公共投資・公共工事が悪」とされていた時期がありました。その間オランダはインフラ投資を行い、道路ネットワークを整備し、ヨーロッパでの物流の中心となり、25年時点では、オランダ(約1.1兆ドル規模)に対して、九州(約3,600億〜3,700億ドル規模)となり、かつては同等だった経済規模に大きな差(およそ3倍)が開いてしまいました。台湾も同様ですね。13年ごろには九州の名目GDPを超え、経済規模が逆転しました。25年時点では、約8,000億ドルに伸び、九州の2倍以上になっています。(図-1参照)

 台湾の地下鉄ネットワークも充実していますよね。(図-2 参照)長期を見据えたインフラ投資が、いかに大事か、そして将来の福岡の街がどんな風に整備されると、より良い街になるのかを考えていく必要があるのではないでしょうか。

 ご指摘いただいたように、福岡市交通局・住宅都市みどり局都市計画部には、将来の地下鉄ネットワーク構想の全体図をマスタープランのなかに示していただきたいものです。全体構想案をつくるだけであれば、それほど莫大な費用が必要なわけでもないはずです。

図-1 九州・オランダ・台湾の名目GDPの推移比較図
図-1 九州・オランダ・台湾の名目GDPの推移比較図
図-2 台湾の地下鉄ネットワーク図
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