熊本最大手の不動産会社「二次上昇に転じる可能性高い」

(株)明和不動産
代表取締役社長 川口英之介 氏

(株)明和不動産 代表取締役社長 川口英之介 氏

震災とTSMC進出
熊本市場の現在地

 ──熊本地震(2016)から10年の節目を迎えます。

 川口 当時は震災翌日より全社員を動員し、管理物件の被害状況把握を急ぎました。被害の大きなエリアを中心に、倒壊の恐れがある物件への立ち入り制限や注意喚起など、人命に関わる緊急対応を最優先で進めました。

 その後、約1万4,000件の入居者アンケートを送付し、回収した約9,000件の回答を基に復旧対応にあたりました。発災からわずか1カ月半の間に、管理物件では漏水や設備故障など約3,200件もの被害を確認しました。同期間、オーナーさまや入居者さまからの問い合わせは、約1万7,600件に達しています。震災による特別体制下、まさに極限状態での対応でした。

 未曾有の震災を前に、従来の仕組みでは膨大な情報を集約・共有するまでに時間を要し、刻一刻と変化する状況の正確な把握に苦慮いたしました。この教訓から、情報の入り口と出口を一元化すべく、情報基盤のクラウド化とリアルタイムでの社内共有体制を構築しました。

 ──震災後はTSMC進出もあり、成長都市として熊本に注目が集まりました。

 川口 TSMCの進出発表にともなう期待感から、菊陽・大津エリアを中心にアパート・マンション開発等の不動産投資が過熱しました。しかし、足元では物件供給の先行に加え、入居候補者の流入時期が後ろ倒しになった影響もあり、一部で空室が顕在化しています。急騰した不動産価格もいったんは落ち着き、現在は次なる上昇局面に向けた調整局面にあると捉えています。

 一方で、国内初となる「3ナノ」半導体の量産を担う第2工場の建設開始により、関連企業の進出が本格化することが予想されます。これにともない、需要が再び拡大し、地価が二次上昇に転じる可能性は極めて高いと見ています。

 こうしたなか、当社では熊本全体で28棟のプロジェクトを進行中で、震災復興が進む益城町でも今春2棟が竣工予定です。さらに新たな低層RC住宅のシリーズ展開も始動。建築コストを抑えつつ、洗練されたデザイン性を実現することで、多様化するニーズに合わせた柔軟な提案を加速させていく考えです。

(仮称)ラ・シック大津南外観イメージ
(仮称)ラ・シック大津南外観イメージ

アパートメントホテルを
JR熊本駅エリアに開業

 ──賃貸管理や自社物件開発に加え、アパートメントホテル事業も積極的に展開されています。

 川口 自社企画の「LA CHIC Stay(ラ・シック ステイ)」シリーズを福岡市中央区・博多区、および熊本県大津町で展開しており、今年1月には4拠点目となる『LA CHIC Stay Kumamotoeki』をオープンいたしました。

    熊本エリアでの展開は、昨年11月に始動した新規事業ということもあり、オペレーションの質を担保するため、あえて予約サイトを限定して運用しておりますが、それでも週末にはご家族などのグループ利用を中心に、ほぼ満室の状態が続いています。今後は掲載サイトを順次拡大し、好調な福岡エリアの施設同様、高い稼働率を安定的に確保していく方針です。

 阿蘇の山々や豊かな地下水など、熊本には自然が育んだ観光資源が豊富にあり、それらが多くの観光客を惹きつける大きな要因となっています。TSMC進出による経済発展との相乗効果に期待するとともに、当社としても、従来の賃貸住宅とは異なる「ミドルリスク・ハイリターン」の新たな不動産投資のかたちを、オーナーさまへ積極的にご提案してまいりたいと考えています。

LA-CHIC-Stay-Hakata-Ⅰ
LA-CHIC-Stay-Hakata-Ⅰ

    ──最後に、今後の事業展開についてお聞かせください。

 川口 今後は、とくに法人契約のさらなる拡大に注力していきたいと考えています。労働力の確保が困難な時代において、従業員への快適な住まいの提供は、企業にとって、福利厚生の充実と採用力の強化に直結する重要な施策だと考えております。当社の年間賃貸仲介件数約1万1,700件のうち、法人契約が占める割合は約3割程度ですが、企業の「戦略的パートナー」として、人事・採用課題に寄り添うことで、法人市場におけるシェア拡大を目指してまいります。

 その実現に向けて、既存の法人登録制度(約1,000社登録)を再構築し、サービス内容を拡充した「メイワネットワーク」を今年1月より開始いたしました。提携企業とのつながりをより強固にすることで、BtoBビジネスを一段と加速させてまいります。

 将来的な人口減少が避けられないなかにあっても、熊本はTSMCの進出という大きな好機を得て、転入者が転出者を上回る「社会増」が続いています。当社は、2026年1月末時点で2万7,300戸を超える管理戸数を有するストックビジネスの強みを生かしつつ、DXや新規事業を通じて、オーナーさま、入居者さま、そして提携企業の皆さまにとって、より価値のあるサービスを追求し続けていく所存です。

【代源太朗】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:川口英之介
所在地:熊本市中央区辛島町4-35
設 立:1986年4月
資本金:7,160万円
URL:https://www.meiwa.jp/

月刊まちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)

ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事