木造非住宅に舵を切り今後はCLT建築物の建設にも注力

(株)フォレストヴィラホーム
代表取締役 中安章 氏

(株)フォレストヴィラホーム 代表取締役 中安章 氏

 福岡県内で、輸入住宅の供給を行ってきた(株)フォレストヴィラホーム。近年は木造非住宅建築物に加え、CLTによる中大規模木造建築物の供給にも事業を広げようとしている。住宅事業者には非住宅への取り組みに関心がありつつも、実際には踏み切れない企業が多いが、同社はどのような取り組みを行い、今後どのような展望を描いているのか。同社代表取締役・中安章氏に聞いた。

福岡の輸入住宅をリード

 (株)フォレストヴィラホームは、創業当時からカナダ輸入住宅「セルコホーム」のフランチャイズに加盟し、ツーバイフォー工法による住宅を供給してきた。「当社の顧客には経営者や医師などが多く、創業から早い段階で『事業所や医療・福祉施設などを建てられないか』という相談が寄せられるようになっていました。それが非住宅分野への取り組みを始めるきっかけとなりました」と、同社代表取締役・中安章氏は振り返る。

 中安氏は15年ほど前、宮崎県で開催された木造によるサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の構造見学会に参加する機会があった。「2階建の大きな建物でしたが、住宅建築では考えられないほどの多くの大工や職人が施工に携わっていました。外注に頼り切っていた当時の自社体制では、収益化が難しいと感じました」(中安氏)。

 その一方で、中安氏は構造見学会の様子から、“木造非住宅には未来がある”と直感。加えて、その未来を支えるためには自分たちで大工を育成するしかない、という強い覚悟を固めたという。しかし、この決断を実際にかたちにするための道のりは、決して容易ではなかった。まず、大工を社員として採用し、教育することは、経営的には膨大なコストとリスクをともなうことが予想されたからだ。そのため、この構想について当初は、社内の幹部会議で猛烈な反対が巻き起こったという。

社員大工を育成し強みに

 反対を押し切って施工部門を設立し、社員大工の育成に着手したものの、採用・育成した大工が短期間で退社してしまうなどの問題に直面。施工部門を黒字化するのに、8年を要した。2020年に施工部門を別会社「(株)ジールクラフト」として分社化。現在では自社物件だけでなく、他社物件の施工も手がけている。若い職人たちがツーバイフォー工法だけでなく、多様な技術を習得することにもつながっているようだ。

大工集団「ジールクラフト」
大工集団「ジールクラフト」

 非住宅の積極化にあたって大きな課題となったことの1つとして、「社員の意識」もあった。「たとえば、営業部門。住宅専門でやってきた担当者は、どうしても住宅の顧客だけを見がちになります。しかし、当社の顧客のなかには、事務所やクリニック、倉庫、社宅といったさまざまな非住宅建築のニーズをお持ちの方がいました。担当者に彼らのニーズを探り、適切な提案を行う意識がなければ、収益機会を逃してしまうことになります。そのため、2年ほど前から、会社が非住宅に舵を切るというメッセージを、勉強会などを通じて強く発信し続け、意識改革に努めました」(中安氏)。

 一般的に木造の法定耐用年数は22年で、RC造の47年に比べて短い。このため、木造の資産価値はRC造に比べ低く見られがちだが、法定耐用年数の短さは不動産取得税や固定資産税の低減といった節税効果なども期待できる。そのような利点について理解を深め、顧客に説明する力を全社的に高めることで、木造非住宅の供給実績を増やしてきたという。

 近年は、土地価格の上昇や資材価格の高騰、住宅ローンの金利上昇など、住宅取得にあたって厳しい環境にある。また、加えて25年4月に施行された「4号特例の見直し」により施工期間が長期化しており、戸建住宅事業では受注・完工棟数が減少し、1棟当たり単価の上昇で補っている状況だ。そうした状況をカバーしているのが非住宅事業であるが、「中小企業において、こうした大きな方向転換はトップが先頭に立たなければ絶対に成功しません」と、中安氏は話す。

 この意識改革は徐々に浸透し、現在は常時10棟近くの非住宅案件を抱えるほか、ゼネコンなどからの依頼も相次いでいるという。「職人不足が深刻化し、30歳未満の大工が5年で半減するといわれる今、若手大工を抱えていることが、当社の優位性となっています」(中安氏)。

(株)フォレストヴィラホーム

「日本初」のプロジェクト

 同社ではさらに新たな挑戦として、CLTを活用した中大規模建築物の供給に向けた取り組みを進めている。24年に2階建モデルハウス(太宰府市)を竣工させたのに続き、CLT・純木造による5階建の本社オフィスビルを建設するプロジェクトを推進中。これは、林野庁の補助金事業「CLTを活用した建築物等実証実験」に採択されたものであり、すべての階をCLTパネルで構成する「日本初」の建物となる計画である。

 木材の利用量は359m3になり、CO₂貯蔵量は249t- CO₂になると試算。「これは、社員23人(毎日7時間45分勤務)が呼吸により排出する90年分のCO₂を貯蔵する量に相当します。今後、LCA(ライフサイクルアセスメント※)制度の導入や、炭素賦課金(脱炭素税のようなもの)が導入されるものと見られており、CO₂貯蔵量の多さはこのような環境規制が強化される流れのなかで、木造建築物の優位性を示すものとなります」(中安氏)と述べている。

CLTモデルハウス

 このプロジェクトの大きな目的の1つには、コストと工程のすべてを自社で実証・確認することがある。「木造建築物はRC造に比べて躯体重量が軽いため、基礎の鉄筋量を減らせますが、それによるコスト低減効果がどれくらいあるのかなど、実践して初めて確認できることがあります。現に設計段階でも、壁の厚みを減らしても構造計算上では問題がないことが確認でき、コスト低減が実際に可能であることがわかりました」(中安氏)。

 CLT工法はRC造やS(鉄骨)造に比べて、少ない職種・職人で施工でき、かつ熟練技能を必要としないのも特徴の1つだ。具体的にはRC造で100人の人手が必要だとすると、CLTならその4分の1程度の人員でこなせる可能性があるという。中安氏は、「当社の強みである大工集団、ジールクラフトがCLT建築物の建設を担うことで、さらにどのくらい建設コストを下げることができるのかも、プロジェクトにおいて確認します」と述べている。

※LCA:建築物を構成する各部材・設備の製造・施工・使用・解体に至るまでの建築物のライフサイクル全体において発生するカーボン(CO₂)を算定・評価するもの。28年度をメドに建築物LCAの実施を促す制度の開始を目指すこととなっている

トップランナーに

 CLTは依然として認知度が低いことが課題であり、中安氏はプロジェクトがそうした状況を改善するきっかけになれば、と考えている。加えて、これまでの建設事業者の建設システムの在り方も課題になっていると、中安氏は指摘する。たとえばRC造の場合、ゼネコンは過去の実績から見積もりを作成する。一方、CLT工法では施工事例が多くないことからそれが難しく、建築主にCLTによる建設メリットを明確に説明することができない状況にある。同社ではプロジェクトを通じて、CLT建築物のより正確な見積もりを作成できるようにすることで、その課題の解消に努めようとしている。

 本社オフィスビルはまもなく着工、27年3月末の完成を目指している。「これを皮切りにCLT建築物の普及に一層取り組むことで、木造非住宅のトップランナーとして福岡のまちなみを塗り替えていきたいと考えています」と、中安氏は意気込みを述べた。

本社オフィスビルの完成イメージ
本社オフィスビルの完成イメージ

【田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中安章
所在地:福岡市南区横手南町2-18
設 立:2008年1月
資本金:2,000万円
TEL:0942-39-1118
URL:https://www.forest-v.jp

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