【BIS論壇】国家情報局創設、その2

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は4月30日の記事を紹介する。

イメージ    3月14日の首記論説に続き、弊見解を再度下記に論じたい。高市政権の悲願ともいえる国家情報局設置はいよいよ具体化しつつある。連日新聞やテレビなどで報道され、国民の関心も高まっている。しかし、個人情報保護の観点からも、『赤旗』などは批判的で慎重な対応を力説している。

 諜報先進国である英国や米国、さらにファイブ・アイズ(英国、米国、豪州、ニュージーランド、カナダ)のアングロ・サクソン5カ国が1940年代に設立した、衛星を活用したスパイ組織「エシュロン」(梯子の隠語)などに比べると、日本の諜報組織設置は大幅に出遅れ、効果的な活用は至難の業だと憂慮される。

 国家情報局の論点は内調など組織の一体化や、人事、米国CIAや英国MI6などの諜報、スパイ取り締まりなどを主体に、情報専門家、非専門家などが、にわか仕込みでメディアで連日論じている。日本の国家情報局創設に関しては、時流に流されず、日本の情報戦略の大幅な出遅れを意識し、慎重に対応することが肝心だ。

 過去35年、日本ビジネスインテリジェンス協会を中心に、インテリジェンス、なかでも国際競争力の要となる経済情報(ビジネスインテリジェンス)を国内外で研究を継続してきた筆者としては、軍事諜報を主体とするMilitary Intelligenceに偏るのではなく、国家競争力、軍事力に強い影響を与えるビジネスインテリジェンス(経済情報)の収集、活用にも注力することを強調したい。

 米諜報機関が初めて経済情報に関心を示したのはカーター大統領時代だった。1977年にカーター政権のCIA長官にスタンスフィールド・ターナー海軍提督が任命された。ターナーの最大の功績は、経済情報の重要性を歴代CIA長官のなかで初めて説いた先見性だといわれている。ターナーは、経済情報が国防情報よりも米国の国防と国家安全保障にとってより重要になると予言した。以上より、高市政権が経済情報にも注力することを強く進言したい。
(『知識情報戦略』石川  昭・中川十郎 編著、税務経理協会 49ページ参照)

 あわせて、この機会に米国のAcademy of Competitive Intelligence(競争情報学院)、EUのEcole Europeenne d’Intelligence Economique(ヨーロッパ経済情報大学院)などを見習い、まず国家情報局に勤務する諜報員に徹底した情報教育を行うことが先決だ。

 せっかく金と時間をかけて鳴り物入りで国家情報局を創設するのであれば、まずそこで働く人間の情報、諜報教育に全力を注ぐことこそが最も重要であることを強調する次第だ。

 まず人間の情報教育こそが国家情報局の成否を左右することを強く認識すべきだ。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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