北九州・再開発の現在地 人口減の政令市の生き残り策とは──(中)

北九州市もPark-PFI 東田大通り公園

 福岡市では現在、主に都心部の公園において、Park-PFI(公募設置管理制度)を活用した民間事業者の資金とノウハウによって都市公園の賑わい創出や魅力向上を図ろうとする取り組みが複数進んでいるが、北九州市でもPark-PFI活用の動きが見られ始めた。

 北九州市ではこれまで、Park-PFIの全国初の事例となった勝山公園(小倉北区/18年7月供用開始)のほか、到津の森公園(小倉北区/23年3月供用開始)の市内2公園でPark-PFIによる整備を実施してきた。そして今回、新たに東田大通り公園(八幡東区)でもPark-PFIを活用した事業者公募を行う予定だ。

東田大通り公園
東田大通り公園

 東田大通り公園は、官営八幡製鉄所の遊休地を活用し、環境をテーマにした「北九州博覧祭」(2001年開催)の跡地に造られた都市緑地で、東田地区における貴重な緑のオープンスペースとなっている公園だ。周辺にいのちのたび博物館やイオンモール八幡東、スペースLABO、ジアウトレット北九州などが立地しており、市内外から多くの人が訪れるエリアである。そのため市は、東田大通り公園北側エントランスにおいて、民間活力を活用してランドマークを有する空間を整備することで、快適な滞在時間を提供するサービスを充実させ、公園空間の質の向上を図りたいとしている。現在、6月15日までの期間で参加登録が行われており、計画の受付は6月16日~6月30日まで。その後、事業者選定の検討を経て、今年8月上旬ごろに、事業者の決定がなされる予定だ。

ジ アウトレット北九州
ジ アウトレット北九州

 北九州市が八幡東区・東田地区で今回のようなPark-PFIを行おうとしている狙いは明確で、アウトレット施設や博物館など各施設への来訪者を公園空間へ引き込み、滞在性を高め、都市空間の質を向上させることで、公園を単なる通過空間ではなく、消費と滞在を生む結節点へと転換していこうという発想だ。これは、北九州市の再開発政策が、都心部における建物単体だけでなく、エリア全体の回遊設計にも視野を広げていることを示す。東田地区は製鉄所跡地再生の象徴的地区であり、商業、文化、学び、緑地が混在する。その場所で、公園のエントランスをランドマーク化し、民間サービスを導入することは、来訪者を単施設の消費にとどめず、地区全体へ回遊させる都市戦略といえる。小倉・黒崎などの都心部の再生とは別のかたちで、八幡東区・東田地区でも「点を線に変える」ようという試みが始まっているのである。

徳力公団前駅周辺を再編
モノレール沿線のまちづくり

 前述のリビテーションなどの都心更新策と並行して、北九州市が本格化させているのが、交通結節点の再編である。そしてその象徴的なプロジェクトといえるのが、徳力公団前駅周辺を対象とする北九州モノレール沿線のまちづくりだ。
 25年12月、北九州市、UR都市機構、北九州高速鉄道(株)、西鉄バス北九州(株)の4者は、未来を見据えたまちづくりを目指し、北九州モノレール沿線のまちづくりに関しての連携協定を締結した。

 北九州モノレール沿線ではこれまで、大規模住宅団地の整備や、土地区画整理事業による宅地整備など、モノレールを主軸としたまちづくりを推進してきた。なかでも、徳力公団前駅周辺は、駅近くに大規模団地が立地し人口が集積していることに加え、モノレールと路線バスが交わる交通結節点であることから、生活機能・交通機能ともに高いポテンシャルを有する地域とされている。一方で、近年では若者の車離れが進み、共働き世帯が一般化するなど、人々のライフスタイルは大きく変化し、暮らす場所として生活と交通双方の利便性を重視する傾向が一層強まっている。そうしたなか、今回の協定締結によって4者が連携・協力して、徳力公団前駅周辺での新たな機能の集積、公共交通の再構築に取り組み、「まち」と「交通」を未来志向でアップデートしていくことで、次の世代に選ばれる持続可能なまちづくりを推進していく方針だ。

 具体的には、徳力公団前駅周辺地域を対象として、①「日常生活を支える高次な都市機能の集積」、②「持続可能な公共交通体系の実現に向けたネットワークの再編」、③「多様な交通サービスを快適に利用できる交通結節機能の強化」、④「UR賃貸住宅ストック活用・再生ビジョンに基づくストック再生の推進その他まちづくり関連等の取り組み」──の4つの事項について、4者で連携・協力しながら検討を進めていくとしている。

(左)北九州モノレール・徳力公団前駅/(右)徳力団地
(左)北九州モノレール・徳力公団前駅/(右)徳力団地

 この施策の価値は、老朽化により住む人が減っていく郊外住宅地を単に縮む場所として扱うのではなく、交通拠点として再生しようとしている点にある。徳力公団前駅周辺は、大規模団地とモノレール、路線バスが交差する場所であり、生活機能と交通機能の両面でポテンシャルが高い。若年層の車離れや共働き世帯の増加を踏まえれば、移動のしやすさと生活利便を両立する結節点の価値は今後、むしろ高まっていくだろう。郊外再生は道路整備ではなく、生活圏の再設計へとフェーズが移っているのである。

 この方向性は、北九州市における立地適正化計画とも整合する。人口減少下で重要なのは、医療、商業、福祉、交通が近接した暮らしを維持できるかどうかである。徳力公団前の再編は、郊外を切り捨てるのではなく、拠点へ機能を寄せることで持続可能性を確保する試みであり、北九州市のコンパクトシティ政策が郊外部で具体化し始めた例といえるだろう。

駅南側の民間開発が本格化
「オリオXcite」開始

 交通結節点再編の長期大型プロジェクトとして、折尾地区総合整備事業についても触れておきたい。

 折尾駅周辺では、鉄道による市街地分断、踏切渋滞、都市基盤の遅れ、学園都市の玄関口にふさわしい機能不足といった構造課題を背景として、鉄道高架化を進める連続立体交差事業や、住環境を改善する土地区画整理事業、駅周辺道路を整備する街路事業などを一体的に進めてきた。その総事業費は約935億円、事業期間は2004年度から28年度までおよんでいる。

 そして25年4月、駅南側の民間開発が本格化する段階に入ったことを踏まえ、新たなコンセプト「オリオXcite(エキサイト)」を掲げ、魅力的なまちづくりを進めることになった。その第1弾として、駅前の大規模用地を所有する民間企業3社(九州旅客鉄道(株)(JR九州)、高松産業(株)、東宝住宅(株))と北九州市は、折尾駅南側の駅前にぎわいゾーンのまちづくりに関して相互に連携・協力する体制を構築するため、連携協定を締結。良好なまちなみ景観の形成や、土地の高度利用、広報活動、地域のまちづくり活動などに関する相互協力を進めていくとしている。

JR折尾駅南側で進む「オリオXcite」
JR折尾駅南側で進む「オリオXcite」

 25年5月には第2弾として、22街区における開発事業者の公募を実施。25年8月には大英産業(株)が開発事業者に決定し、共同住宅(分譲マンションを予定)の開発を進めていく予定となっている。

 そして今年5月、「オリオXcite」第3弾として、折尾土地区画整理事業地内の18街区における開発事業者の公募を開始した。敷地面積1,248.92m2で、最低売却価格は2億2,580万4,736円。商業系(飲食店舗・物販店舗等)や住居系(集合住宅)、福祉・医療系(保育園・診療所等)、サービス・業務系(オフィス・ホテル等)の立地が望ましいとしている。入札参加表明の受付期間は今年6月末まで。

 折尾地区の価値は、小倉や黒崎とは異なる広域生活拠点としての役割にある。大学群を抱え、遠賀・中間方面を含む生活圏の玄関口でもある同地区を、「住みやすく、魅力的で、賑わいのあるまち」に再編していくことは、北九州市の若年層定着戦略に直結する。駅前空間と道路網の整備、住宅地の改善が一体で進む点に、折尾地区総合整備事業の本質がある。 人口減少都市では、すべての地区を同じように伸ばすことはできない。しかし教育、交通、居住のポテンシャルをもつ拠点を磨くことは、市外流出の抑制には効果的だ。外から人を呼ぶ政策と同程度に、市内で住み続ける合理性をつくる政策が重要なのである。折尾地区の再編はその意味で、北九州市の多核型都市構造を支える要石といえるだろう。

まだ動きが見られない
小倉総合車両センター

小倉総合車両センター
小倉総合車両センター

 官主導の施策ではないが、交通結節点再編に関する話題として、本誌vol.75(24年8月末発刊)で取り上げた小倉総合車両センターの再開発にも触れておきたい。

 JR九州は24年7月、小倉総合車両センター(北九州市小倉北区金田)の移転にともなう新車両基地の建設を発表した。移転先は、日本貨物鉄道(株)(JR貨物)が保有している東小倉駅(貨物駅/北九州市小倉北区高浜)の用地で、投資額は約480億円を想定。新たな車両基地の竣工は、31年度末頃を予定している。

 現在の小倉総合車両センターは、JR九州のすべての在来線車両の解体検査、更新および改造工事などを行う唯一の車両基地だが、1891年の開設からすでに130年以上が経過。そのため今回の移転は、施設・設備の老朽化への対応を行うとともに、持続可能な車両検査の実現を目指した環境配慮型の新たな車両基地を建設することが目的となっている。なお、現在の小倉総合車両センターの敷地面積は約15.8haだが、移転候補地である東小倉駅の敷地面積は約半分の約7.8haしかない。そのため、今回の新車両基地の基本コンセプトの1つに「コンパクト化」を掲げており、新技術の導入および効率的な検査ラインの構築によってコンパクトな車両基地を実現するとしている。ほかに、「効率的な車両検査」として検査日数の短縮および省人化による効率的な車両検査の実現するほか、「地球環境への貢献」として太陽光エネルギーの活用およびZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化の実現も目指すとしている。

 なお、約15.8haもの広大な現小倉総合車両センター跡地の今後の用途については現在、検討中としており、将来的にこの場所がどのように生まれ変わっていくかは、現時点でまだ決まっていない。

陸海空のインフラ生かし
物流機能のさらなる充実を

 北九州市の再開発を経済政策として成立させるには、外から稼ぐ産業基盤の構築が欠かせない。その中核に据えられているのが、22年3月に策定された「北九州市物流拠点構想」だといえよう。

 北九州市物流拠点構想は、北九州港、24時間利用可能な北九州空港、九州自動車道・東九州自動車道、北九州都市高速、北九州貨物ターミナル駅といった陸海空のインフラを統合的に活用し、物流を市の主要産業へ引き上げることが狙いだ。 構想の柱は、港湾・空港の国際物流拠点化、九州エリアの物流集約拠点形成、九州・西中国への配送拠点形成、物流基盤を生かした成長産業拠点形成、人材育成の5つである。

 ここで重要なのは、物流を単なる裏方機能ではなく、半導体や風力発電、次世代自動車、航空関連といった成長分野を引き寄せる前提条件として位置づけていることだ。物流が強いから企業が集まり、企業が集まるから物流需要が増える。その循環を都市の成長エンジンにしようとしている。

 多くの地方都市が物流をインフラ整備の一部として語るのに対し、北九州市は物流そのものを競争優位として打ち出している。空港機能強化や港湾整備、道路整備は、単なる公共事業ではない。人口減少下でも外需を取り込み、雇用と民間投資を呼び込むための産業政策なのである。都心再開発が都市の器を整える仕事だとすれば、北九州市の物流構想はその都市の器に“稼ぐ機能”を実装していく事業であるといえよう。

北九州市物流拠点構想で市が目指す姿(北九州市資料より)
北九州市物流拠点構想で市が目指す姿(北九州市資料より)

(つづく)

【坂田憲治】

< 前の記事
(前)
記者募集

月刊まちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)

ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連キーワード

関連記事