【特別インタビュー】外国人雇用を日本社会の構造問題と合わせて考える 2040年に向けて進む「事務職余剰」と「現場人材不足」

(弁)Global HR Strategy
代表社員 杉田昌平 氏

(弁)Global HR Strategy 代表社員 杉田昌平 氏

 2040年に向け、日本の労働市場では「人が足りない」と「人が余る」が同時に進む。事務職や文系人材には余剰が生じる一方、専門職や地方の現場人材は深刻な不足が見込まれている。こうした構造変化のなかで、外国人雇用は単なる人手不足対策ではなく、日本の産業、教育、地域政策の再設計と結びつく課題となっている。外国人雇用法務に詳しい杉田昌平氏に、2040年の労働市場と外国人材の位置づけを聞いた。

2040年、事務職は余剰 専門職・現場人材は不足

 ──外国人雇用をめぐって、近々で最も重要だと思われる論点は何でしょうか。

 杉田昌平氏(以下、杉田) 経済産業省が2026年3月に出した『2040年の就業構造推計(改訂版)』です。これが示しているのは、40年に向けて就業者数が減るものの、日本全体が “労働力崩壊”に向かっているわけではない、ということです。たしかに、22年の就業者数は約6,700万人でしたが、40年には約6,300万人へ減少する見込みです。ただし、重要なのは、その結果としてすべての職種で人手不足が起きるわけではないということです。

 たとえば、事務職では約437万人の余剰が生じると見込まれています。これはAI・ロボット等の利活用や労働の質の向上、あるいは供給過多によって、都市型ホワイトカラーの中程度の仕事が余るということです。

 一方で専門職全体としては約181万人が不足すると見込まれており、とくにAI・ロボット等の利活用を担う人材に至っては約339万人不足する見通しとなっています。さらに、現場人材も約260万人不足し、そのうち生産工程従事者だけでも約206万人足りなくなる見通しです。つまりAIを導入し運用するために必要な専門職、理工系人材と、建設、製造、農業、物流、食品製造など現場感の強い人材はますます不足感が強まるということです。

 このような事務職は大幅に余るのに、専門職はまるで足りなくなるという職種間のギャップは、教育などを含む日本の労働者の供給構造に根本的な問題があるということを意味しています。

2040年の就業構造推計(改訂版)の概要

人口減少は一律の不足を生まない分野ごとに問われる再設計

 ──働き手不足は「人口減少」、「少子化」という問題と短絡的に結びつけて論じられやすい問題です。

 杉田 たしかに日本の総人口は2008年に1億2,808万人でピークを迎え、その後減少しています。さらに重要なのは、生産年齢人口が総人口よりも早く、1995年の8,716万人をピークに減少していることです。しかも2020年以降は、過去35年間よりも速いペースで減っていくとされています。だから、人口減少は単なる人口学的現象ではなく、経済力、防衛力、技術力、人材力の基礎となる労働力を直接的に削っていくという問題意識になるわけです。

 ただ、ここで注意したいのは、人口減少の話をそのまま「全国一律の労働力不足」と結びつけると、問題の核心を見失いかねないということです。人口減少はたしかに深刻ですが、その衝撃がどこにどう現れるかは、産業ごと、地域ごと、職種ごとに大きく違います。人口減少が進んだ結果、社会は今まで以上に“選別的”になり、どこに人が集まり、どこに人が集まらないかが、極端な落差として表れていることが問題なのです。

 建設、農業、自治体行政、防衛など、さまざまな分野で生産年齢人口減少の影響が出るとされています。でも、それぞれ必要な対応は違う。建設ならi-Construction 2.0、農業なら大区画化やスマート農業、行政なら広域連携や合理化、防衛なら無人アセットの活用といった具合です。つまり、人口減少に対して必要なのは「一律の不足論」ではなく、どの分野をどう持続させるかという再設計です。外国人雇用も、その再設計の一部として見る必要があります。

「働く人が減る」は人口減少と同じではない

 ──生産年齢人口は1995年をピークに減少してきたとのことですが、実際に労働に従事する人も同じように減ってきたのでしょうか。

 杉田 ここに誤解が生じがちです。たしかに人口は減り、早い段階で生産年齢人口も減り始めました。しかし、就業者数や労働力人口については、その後も長い期間、むしろ増加していました。その主な原因は、女性と高齢者の就業が進んだためです。女性就業者は1995年の2,057万人から2023年には2,802万人まで増えています。745万人の増加です。この期間、日本社会は人口減少のインパクトを女性や高齢者の労働参加拡大によってかなり吸収してきました。ですので、これらの状況について「人口が減少したから就業者も減少して人手不足に陥っているのだ」というイメージは正確ではありません。

 現在進行している人手不足は、総量不足ではなく分野別の偏りと理解すべきです。「マクロでは充足、ミクロでは不足」というべき状況です。日本全体で見れば、女性と高齢者の就業拡大で何とか回ってきた。けれど、その間に、建設や農業や地方工場や食品製造といった現場では人が減っていった。建設業では、1997年に680万人いた就業者が、2024年には477万人まで減っています。農業でも基幹的農業従事者の減少は著しい。つまり、“働く人はいる”けれど、“そこでは働かない”という問題です。しかもこのギャップがますます大きくなっていくということを、経産省の『2040年の就業構造推計』は示しています。

都市と地方のギャップ外国人材はそれを埋める

 ──労働者の過不足のギャップは、職種以外に地域によっても見られると思います。

 杉田 経産省の2040年推計では、東京圏では事務職や文系人材を中心に、かなり大きな余剰が出る見込みです。東京圏全体では193万人の余剰といった見通しも示されています。一方で、地方圏では現場人材の不足が強い。北海道、東北、九州など、各地域で不足が見込まれます。

 東名阪や大都市圏には人が集まります。都市部のきれいなオフィスでホワイトカラーの仕事をしたい人は多い。けれど、地方の食品工場、農業現場、建設現場、物流倉庫に行って働いてくれる人は少ないという現実があります。そこには大きな移動摩擦があります。生活基盤も違うし、賃金だけで簡単に動かない。つまり、将来的に都市部の余剰人材が増えても、そのまま地方の不足を埋めるという風には労働人口の流動性は機能しません。

 ここで外国人雇用が重要な役割を果たしています。外国人雇用は、この移動摩擦で埋まらない部分を支える役割を担っているのです。これは能力の問題ではない。居住、家族、文化、キャリアイメージ、生活コストなどを含む社会移動の問題です。だから、このミスマッチは放っておいても自然には埋まりにくい。日本人の国内移動だけでは埋まらないからこそ、外国人雇用が現場の不足を支えているという理解が必要です。

地域別就業構造推計

在留外国人412万人 外国人労働者257万人

 ──外国人雇用は現状、数字で見るとどのくらいの規模感になるのでしょうか。

 杉田 25年の数字がそろった段階で、在留外国人数は約412万人、外国人労働者数は約257万人になっています。在留外国人は総人口約1億2,377万人に対して約3.3%、外国人労働者は労働力人口約7,004万人に対して約3.6%です。もはや“周辺的な存在”ではありません。しかも外国人労働者257万人というのは、国内の派遣労働者数220万人前後と比較しても、決して小さくない規模感です。

 また、在留資格別に見ると、増加しているのは1つの在留資格だけではありません。技能実習と特定技能を合わせた増加が大きいのはもちろんですが、技術・人文知識・国際業務も増えていますし、留学も増えています。つまり、日本の外国人流入は多層的で、現場就労、専門職、留学から就職へのルートなどが複合的に動いている。これは単に1つの制度改正だけを見ても全体像が掴めないということでもあります。

 ──よく「最近、外国人が急に増えた」と言われますが、その背景は何でしょうか。送り出し国で日本人気が高まっているのでしょうか。

 杉田 主要送り出し国側で“日本に行きたい人”が爆発的に増えたというより、日本側の採用意欲が上がったためです。これまで労働人口の減少を底支えしてきた女性・高齢者の労働参加の伸びが頭打ちに近づき、“掘り起こせる国内供給”がかなり出尽くしてきた感があります。22年ごろから賃金が上昇基調に入り、非正規雇用が減って正規化が進んでいるのも、その1つのサインとして読めます。労働経済学でいわれるように、女性・高齢者など追加供給が効いている間は、賃金は抑えられやすいですが、それが枯渇してくると賃金が上がり始める。いまはその局面に近いのではないかと感じます。

 これからの外国人雇用は「足りないところを少し補う」段階ではなくなっていきます。30年以降、日本全体でも就業者数が減り始めれば、「マクロでも不足、ミクロでも不足」という局面に入り得る。ただし、職種別には余剰と不足が混在し、あくまで強く必要とされるのは、現場と地方です。

事務職余剰と理系・現場不足の意味

 ──40年推計では、学歴別のミスマッチもかなりはっきり出ています。

 杉田 理系は大卒・院卒合わせて約123万人不足する一方で、文系は大卒・院卒合わせて約76万人余剰という見通しです。高卒工業科は約91万人不足、高専卒も約15万人不足です。逆に、高卒普通科は約32万人余剰。これは、教育と労働市場の接続が大きく変わることを意味しています。

 この点は外国人雇用にも深く関わります。たとえば、留学生が日本を目指す理由を考えたとき、日本の大学そのもののブランドだけではなく、その先の就職可能性が大きい。もし労働市場の出口が、文系ホワイトカラー中心では狭くなっていくなら、留学生政策も大学政策も、それに合わせて組み替えざるを得ない。逆に、理工系や専門職、現場技術とつながる教育ルートには、今後ますます需要が集まる可能性があります。

 つまり、これから大学をどうつくるか、どんな人材を育てるか、留学生をどこから受け入れ、どこへ就職させるか。それは全部つながっています。労働市場の需要が変わっているのに、教育の出口設計が昔のままだと、ギャップは解消することはありません。

全国版就業構造推計(改訂版)・学歴間ミスマッチ

大学再編の動きと留学生の動向

 ──財務省は大学の再編を打ち出し、「250校削減」案などを出しています。

 杉田 18歳人口は1989年の198万人から2024年には109万人程度まで減っている一方、大学数は増え続けてきた。財政資料では、大学数を250~400校程度減らす必要があるという議論まで出ている。要するに、人口構造と教育供給の規模がもう合っていないわけです。

 このことは外国人留学生の今後の動向とも関わってきます。先述の通り、外国人留学生にとって卒業後に日本で就職できるかは重要です。日本は新卒採用の間口が比較的広く、留学生にとって技術・人文知識・国際業務の在留資格への接続もあります。これは他国と比べても特徴的です。しかし、企業の労働需要の方で文系ホワイトカラーの受け入れが縮小すれば、留学生市場の構造も当然変わっていきます。日本語学校から専門学校、さらに就職へという流れが、これまでのようには機能しにくくなるかもしれません。

 ──留学ルートを厳格化する動きもすでに見られています。

 杉田 26年4月には、留学生のアルバイト実態把握を学校側により強く求める適正化措置が出ています。複数の勤務先で働いている場合の情報提供や、在留状況の把握、日本語教育機関への日本語能力要件の厳格化などがセットになっていて、入口から出口まで管理を強める流れです。

 これまで留学生らが日本語学校から専門学校へ進み、その後、就職へつながるというルートは、日本の労働供給の一部を実質的に担ってきました。留学生は就労時間について週28時間以内という縛りがありますが、制限を超えて働く学生たちもいました。全員が不適切だったという話ではありませんが、学びと就労の境界が曖昧になっていた部分もあった。厳格化はその流れを是正しようとしているわけです。そうなると、今後は留学ルートに頼った人材供給は細る可能性がある。その分、現場に必要な外国人材は、より制度趣旨に合った形、たとえば特定技能や育成就労などで受ける方向が強まるでしょう。

不法滞在者ゼロプラン 企業にも大きな影響

 ──外国人政策の厳格化を印象づける動きとして、25年5月に発表された「不法滞在者ゼロプラン」や26年1月に閣議決定された「秩序ある共生社会の実現に向けた総合的対応策」もありますが、この影響は出ていますか。

 杉田 影響はかなりあります。「不法滞在者ゼロプラン」は外国人労働者への影響ばかりが語られますが、実際には企業側の意識がこの1年で大きく変わったと思います。これまでは、多少無理のある運用でも何とかなるのでは、という感覚をもっていた企業も少なくなかった。しかし、いまは企業が本気で“捕まる”“更新できない”“不法就労助長に問われうる”と感じ始めている。ここは大きいです。

 ただし、この厳格化をもって外国人雇用全体が縮小する、とまでは見ていません。なぜなら、厳格化されているのは主として、都市型ホワイトカラーに近いルートや、留学・専門学校ルートなど、ある意味では周辺部だからです。反対に、建設、農業、食品製造など、日本経済上どうしても必要な現場を支えるラインは止めていない。ここがポイントです。政治介入はある。しかし、本当に止めると日本経済が回らなくなる部分は止められていないということです。

 外国人材の性質を端的に言い表すと、「窓際族の外国人はいない」ということです。日本企業が外国人を雇っている場合、その人はだいたい、実際の仕事を担っています。日本人の正社員なら、組織のなかで何とか抱える、ということもなくはないですが、外国人雇用はもっと切実です。だから、その人が働けなくなる、在留資格が難しくなる、あるいは更新できないとなったとき、その仕事自体が消えるわけではない。必ず誰かが埋めなくてはいけない。その結果何が起こるのかというと、たとえこれまではやや違法・不適切なルートであったとしても、今後はそのまま続けるのではなく、より“ど真ん中”の適法ルートに寄っていきます。

 ──技術・人文知識・国際業務(技人国)の運用は、かなり厳しく見られるようになったと聞きます。

 杉田 とくに、実質的には現場色の強い仕事を「技人国」で処理していたようなケースは、企業側もかなり慎重になっています。更新しない、今後はやめる、という判断も出てきている。これは、在留資格の趣旨と実態を合わせようとする流れの一部です。

 ただ、ここでも繰り返しになりますが、その仕事自体がなくなるわけではありません。だから企業は、現場で必要な仕事については、特定技能や今後の育成就労など、よりストレートな制度へ寄せていく。この変化を単に“厳格化で外国人雇用が減る”と読むのは雑です。厳格化は単なる縮小ではなく、ルートの再編となるはずです。外国人雇用の実態がより“制度の適法化・純化”に動くと見るべきです。

特定技能「外食業」日本人の労働環境改善

 ──外国人労働者の在留資格「特定技能1号」の外食業が受け入れ上限に達するとして、4月に新規受け入れが停止されました。

 杉田 これは枠が足りなくなるほど需要があったことを意味しています。ここで見落としてはいけないのは、この制度を使っていた企業では、外国人材が単に日本人を置き換わっていたのではないという点です。外食企業が外国人労働者を雇用して気づいたのは、特定技能人材が数年定着すると、店舗の基幹要員として機能するということでした。その結果、日本人店長が休めるようになる。深夜帯を分担できるようになる。つまり、日本人の働き方改善につながっていたということです。この現象は非常に重要です。外国人雇用を「日本人の仕事を奪う」という単純な枠組みで見てはいけない理由が、ここにあります。

 これは外食業にかかわらず現場型の仕事ではよく起きる現象です。人が足りないと、既存の日本人社員にしわ寄せがいく。休めない、離職する、さらに人が足りなくなる。その悪循環を止めるのが、外国人雇用であるケースが少なくありません。外国人は“代替人材”というより、職場を持続可能にする人材であるということです。

 この観点はもっと政策議論に入れるべきだと思います。外国人雇用を単純に「日本人から外国人への置き換え」として語ると、現場の実態から離れてしまう。むしろ、外国人が入ることで、日本人が辞めずに済む、日本人が休める、日本人がマネジメントに回れる、そういうケースが現実には多いのです。

人材供給構造を合わせて 外国人労働問題を考える

 ──2040年の就業構造推計と、外国人材の動向を合わせて考えるとき、どのような方向性で感がることが必要でしょうか。

 杉田 2040年に向けて問われているのは、どの産業を残し、どの地域をどう支え、どういう人材を育て、どこを外国人材に頼るのかという、社会全体の設計です。経産省の推計はそこを言っています。総量を見ても何が本当に必要かはわからず、必要とされている部分を見極める必要があります。これは経済社会で求められている人材を供給する構造が大きな岐路に立たされているということです。そのような状況に至った構造としての教育政策、大学政策、労働政策、地方政策、外国人政策をトータルに扱う必要があります。

 これからの流れを大きくいえば、「マクロ充足・ミクロ不足」から「マクロでもミクロでも不足」への移行です。都心の事務職は余り、地方の現場では人材が足りないというギャップの拡大に進んでいます。外国人雇用をめぐる制度は、総量を増やすのではなく、必要とされているところへどうつなげるかという設計になる必要があります。

 外国人雇用を見ていると、日本の労働市場が見えます。どこに人が余り、どこに人が足りないのか。どこが止められて、どこが止められないのか。AIに置き換わる仕事と、人が必要な仕事は何か。地方と都市の差がどう広がるのか。そういうことが、外国人雇用の動きには非常に敏感に表れます。だから、外国人雇用は“外国人の問題”ではなく、日本社会そのものの構造問題として捉えることが必要です。

【寺村朋輝】


<PROFILE>
杉田昌平
(すぎた・しょうへい)
弁護士(東京弁護士会)、入管届出済弁護士、社会保険労務士、行政書士。慶應義塾大学大学院法務研究科特任講師、名古屋大学大学院法学研究科日本法研究教育センター(ベトナム)特任講師、ハノイ法科大学客員研究員、アンダーソン・毛利・友常法律事務所勤務、(独)国際協力機構国際協力専門員(外国人雇用/労働関係法令および出入国管理関係法令)などを経て、現在、(弁)Global HR Strategy 代表社員弁護士、社会保険労務士法人外国人雇用総合研究所 代表社員、慶應義塾大学大学院法務研究科・グローバル法研究所研究員。


<INFORMATION>
(弁)Global HR Strategy

“Beyond Borders with Compliance 国境を越えるというすべての挑戦を、法が支える世界を目指して”をMISSIONに活動するBusiness Immigration Law Firm。東南アジア・南アジアを中心とした諸外国と日本との間の人の国際移動を円滑に行うための一切の手続を行う。在外経験のある専門家が集まり、企業活動に関わる入管業務や外国人雇用に関する法務・労務を従来の企業法務のレベルで提供することを目的に2020年12月設立。

関連記事