樽貯蔵庫と事務所棟を木造化 酒蔵施設が全面リニューアル

リニューアルされた佐嘉酒造の全景
リニューアルされた佐嘉酒造の全景

佐賀県内最古の歴史を有する酒蔵

 佐嘉酒造(株)は、運営する酒蔵の全面リニューアル工事を完了し、4月29日から一般公開(予約制)を始めた。総事業費は約30億円をかけ、2023年4月からリニューアル工事に着手していたもので、旧建物を解体し5棟を新築した。このうち樽貯蔵庫と事務所棟は木造で、それぞれの施設の一部には旧建物の木質部材や県産材も採用されている。4月24日には現地でお披露目会が開催され、雨のなか大勢の来賓が訪れていた。

 同社は、創業1688年(元禄元年)という330年あまりの歴史を持つ佐賀県内最古の酒造会社で、代表銘柄は「窓乃梅」。敷地内には樹齢100 年を超えるご神木や恵比寿像、100 年以上前につくられた水路などが現存。リニューアル工事ではこれらの歴史的資産を生かし、建物配置と植栽計画を総合的に設計し受け継いでいる。また、水路周辺には里山の風景を思わせる植栽や小径を配置し、自然と歴史を感じられる空間としている。

水路などは旧酒造のままに
水路などは旧酒造のままに

    敷地面積は 1万1,269m2で、新たな建物(5棟合計で 3,174m2)は樽貯蔵庫、醸造所、瓶詰工場、冷蔵貯蔵庫、事務所棟で構成されている。建物外観は日本酒の原料の白米や有田焼の白磁を想起させる白と、伝統的な酒蔵の黒塀や黒漆器を思わせる黒でまとめ、酒づくりの伝統を感じられるデザインとしている。樽貯蔵庫と事務所棟は一般流通材を用いながら、約10m×21m、天井高さ約 8.5mの大空間を実現。木構造を現しとすることで樽を貯蔵する空間としての一体感を高めている。

(左)樽貯蔵庫/(右)事務所棟には直売所も設けられている
(左)樽貯蔵庫/(右)事務所棟には直売所も設けられている

 酒づくりに関わるすべての設備、機器は刷新されており、これまではベテラン杜氏の経験や感覚に委ねられていた技術など、属人的な工程はデータ化・自動化された。工程ごとに異なる温度・湿度・時間を徹底管理し、高品質な日本酒を安定的に醸造。冷蔵貯蔵庫では 24 時間高精度な温度管理で品質を保持するなど、伝統と革新の融合で新たな価値の創造を目指しているのも特徴の1つだ。工程を間近で見学できる見学ルートや撮影スポット、ショップ、休憩スペースも備え、来訪者が酒づくりの魅力を体感できる地域に開かれた酒蔵を目指している。

設備もすべて一新
設備もすべて一新

日本酒、佐賀県を世界に発信する場に

佐嘉酒造  木下里美社長
佐嘉酒造  木下里美社長
地域みらいグループ  脇山章太社長
地域みらいグループ  脇山章太社長

    佐嘉酒造の代表取締役・木下里美氏は、リニューアル後の酒づくりについて、「これまでとは異なる、フレッシュさと飲みやすさがあるお酒ができるようになった。今後は、海外にも積極的に販売していきたい」と述べていた。親会社・(株)地域みらいグループの代表取締役・脇山章太氏は、「新しく生産される商品は、ワインに似た味わいのお酒。このように、今まで日本酒を飲んでいただけなかった方々、海外のお客さまにも手にとってもらえるような酒づくりにチャレンジしていく。佐賀の地で300年以上長く酒づくりを行ってきたが、この施設を福岡(3月に福岡市中央区にセレクトショップがオープン)、東京、そして世界に出て行くという、佐賀と日本酒を世界に発信していく場所にしたいと考えている」と述べていた。

 なお、設計・施工を主に担当したのは住友林業(株)で、近年同社は、非住宅分野の木造化・木質化に積極的にと取り組んでいるが、酒蔵を施工したのは今回が初めてである。

【田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:木下里美
所在地:佐賀市久保田町大字新田1640
資本金:3,500万円
TEL:0952-68-2001
URL:https://sagashuzo.co.jp/

記者募集

月刊まちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)

ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事