NHK大河ドラマ『豊臣兄弟』は、歴史好きだけが楽しむ作品ではありません。むしろ経営者や経営幹部こそ、観る価値がある。そう感じたのが、4/12(日)放送の「金ヶ崎の退き口」でした。
まず「金ヶ崎の退き口」とは何か。これは、織田信長軍が朝倉・浅井軍に挟まれる危機的状況で、ただ逃げるのではなく、味方本隊を逃がすために命がけで行った撤退戦のことです。いわば、組織全体を生かすために、誰かが最後尾で踏ん張らなければならない局面です。この1点だけでも、すでに経営の本質にかなり近い話だと思います。
とくに印象的だったのは、秀吉の戦い方です。撤退戦という不利な状況で、広い場所で真正面からぶつかれば、大軍を擁する相手に飲み込まれてしまいます。だからこそ、敵が兵力差を生かしづらい狭い地形に誘い込んで戦う。この発想は、現代でいうランチェスター戦略そのものです。
大手企業と真正面から勝負しても、資本力も人材もブランドもある相手には、なかなか勝てません。だからこそ、戦う場所を絞る必要がある。顧客や用途、地域を絞る。競合が面倒でやりたがらない領域に絞る。要するに、「広く取りに行く」のではなく、「勝てる狭さをつくる」ということです。
当社もまさにそうです。スポーツビジネスや販促ビジネスのなかでも、大手広告代理店がわざわざやらないところ、やれないところをやる。これは逃げではなく、立派な戦略です。むしろ弱者にとっては、それしかないともいえます。
もう1つ、この回が面白いのは組織論です。秀吉が信長の信頼を勝ち取った理由は、単に有能だったからだけではないでしょう。誰もやりたくない役を、自分から引き受けたことが大きい。しんがり(※)は華がない。失敗すれば命も危うい。評価される保証もない。それでも一番に名乗り出る。この姿勢が、最終的に圧倒的な信頼につながるのだと思います。
会社でも似た状況があります。厳しい局面になると、少しずつ距離を置く人がいる一方で、トラブルや苦境の中心に入っていく人もいる。どちらが信頼されるかは明白です。業績が悪化したとき、面倒な案件が出たとき、組織がしんどいときにそばを離れない人は強い。信頼とは、口のうまさではなく、修羅場で逃げなかった履歴の積み重ねです。
出世は目的ではなく手段です。ただ、役職が上がれば、動かせるリソースは確実に増えます。人も、予算も、情報も、影響力も増える。つまり、実現できることの幅が広がるということです。だからこそ、役職を軽く見るのも違う。組織のなかでより大きな責任をもつことは、より大きな価値を生み出すための手段でもあります。
戦国時代も令和も、本質は変わりません。弱者は戦う場所を選べ。信頼は苦しい場面で積み上がる。歴史を見ていると、変なコンサル論より、よほど本質的な学びがあると感じます。歴史は昔話ではなく、今の経営にそのまま使える実践知なのだと思います。
※殿(しんがり):後退する部隊のなかで最後尾の箇所を担当する部隊
<プロフィール>
山本啓一
(やまもと・けいいち)
1973年生まれ。大学に5年在学し中退。フリーターを1年経験後、福岡で2年ほど芸人生活を送る。漫才・コントを学び舞台や数回テレビに出るがまったく売れずに引退。27歳で初就職し、過酷な飛び込み営業を経験。努力の末、入社3年後には社内トップとなる売上高1億円を達成。2004年、31歳でエンドライン(株)を創業。わずか2年半で年商1億2,000万円の会社に成長させる。「エッジの効いたアナログ販促」と「成果が見えるメディアサービス」でリアル店舗をモリアゲる「モリアゲアドバイザー」として、福岡を中心として全国にサービス展開中。

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