政治経済学者 植草一秀
「逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、に・げ・て参ります」というのが高市首相。
「逃げるは恥だが役に立つ」に味をしめていると見られるのが高市首相。
総務省が作成した正規の内部文書。これを高市首相は「ねつ造文書」だと断言。立民の小西洋之参院議員に「ねつ造でなければ議員辞職するということでいいか」と問われて「結構だ」と答えた。その後、文書は総務省の正規の内部文書であることが判明した。しかし、高市氏はごねて逃げ回った。まだ議員辞職していない。
高市事務所が統一協会関係団体からのパーティー券購入を受けたとの指摘についてNHK『日曜討論』で追及するとの予告がなされた件。高市首相は『日曜討論』をドタキャン。リウマチによる指の痛みとのことだったが、同日午後に岐阜まで出向き、指を振り回して街頭演説を行った。これらの事実は高市首相が「平気でうそをつく人物」であるとの人物像を浮かび上がらせている。
首相の座に留まることを困難にするような重大な問題が含まれている。これまでは「逃げの一手」で生き延びてきた。トランプのTACOより高市首相のTACOが知れ渡る状況になりつつある。
TACOは“Takaichi Always Chickens Out.”
「高市はいつも怖気づいて逃げ出す」である。
「小心者」なのだろう。だが、いまは首相の座にある。「逃げて逃げて逃げて逃げて逃げて、に・げ・て参ります」と言っても問屋が卸さない。
二つの重大問題が浮上している。
誹謗中傷動画制作・流布の問題
サナエトークン発行問題
両者は関係し合う問題と見られる。
サナエトークンに三つの問題がある。第一は、仮想通貨の発行に必要な「暗号資産交換業者」としての金融庁への登録がなされていなかった疑いが濃厚であること。
第二は、「サナエトークン」を宣伝していた高市事務所の後援会アカウント「【公認】チームサナエが日本を変える」が、「サナエトークン」運営元「NoBorder」の「サナエトークン」についての投稿をリポストしていること。
第三は、高市氏が自民党党首選で利用したキャラバンカー「高市早苗Veanas号」の運営を任された自民党奈良県第二選挙区支部青年局長である亀岡宏和氏が代表を務めるVeanas合同会社の所在地が自民党奈良県第二選挙区支部と同一であること。また、自民党奈良県第二選挙区支部と高市早苗後援会チームサナエの会計責任者である木下剛志氏は高市早苗氏の公設第一秘書であること。
現在開会中の特別国会の会期は7月17日まで。まだ40日間ある。高市首相はこれまでの首相が対応してきたような「ぶら下がり会見」を忌避している。「小心者」と見られる高市首相は「逃げ恥」を心に刻んで「逃げの一手」に徹していると見られる。しかし、サナエトークンも誹謗中傷動画も法に触れる犯罪行為である疑いが指摘されるもの。うやむやに済ますわけにはいかない。
「国会でやらなアカンことなんですか?」と発言する太鼓持ち芸人がいるがお里が知れる。太鼓持ちでどれだけ恩典があるのか知らないが、身をやつす卑劣な行動は自己嫌悪を増幅させるだろうから心配だ。
Zoom音声を週刊誌が報道した。Zoomに登場する人物が木下剛志氏であることが確認されると疑惑追及は次の次元に進む。「誹謗中傷動画」も「サナエトークン」も違法行為が疑われている。刑事罰が科される重大犯罪行為の可能性が指摘されている事案。高市首相の議員辞職にもつながりかねない問題だ。
国会が取り上げるべきことは当然。「首相の犯罪」あるいは「首相秘書の犯罪」につながる可能性のある事案。高市首相風に表現すれば「どう考えても犯罪事案になり得るケース」と考えられる。
疑惑が取りざたされているなら、積極的に対応するのが問題解決の近道だ。「逃げる」ことは問題解決を遅らせる。11月7日の国会答弁も同じ。
「どう考えても存立危機事態になり得るケース」
と述べたのは失言=暴言だった。「場合によっては」と述べていれば、ぎりぎりセーフであったかもしれない。しかし、「どう考えても」は「あらゆるケースを想定しても必ず」ということになるから、完全にアウトだった。直ちに「発言の一部に誤りがあったので撤回して謝罪します」としておけば、問題は収束した可能性が高い。
「逃げる」から「追いかけられる」。「有料会員になるのがいや」などと言って逃げようとしても逃げ切れない。「事実無根」なら堂々と前に出て勝負すべきだ。
事実関係を週刊誌等に明らかにしている当該人物と木下剛志秘書の国会への参考人招致を高市首相が主導すべきだ。「逃げも隠れもいたしません」と言明すればよい。何も問題がなければ、そう対応できるはずだ。
対応できずに「逃げる」なら疑惑はますます拡大する。まだまだ決定的な証拠が明らかにされるだろう。他方、金融庁は「資金決済法」の規定に基づいて「手心」を加えずに違法事案に対応することが必要。首相に関わる事案だから違法の疑いのある事案を闇に葬る対応を取ることは許されない。
自民党内部からも誹謗中傷動画の流布に関する疑惑の事実解明を行うべきとの声が出ている。首相だから何でも許されると思わない方がいい。そもそも、2月の総選挙比例代表選で高市自民に投票した主権者は5人に1人しかいない。全有権者の20%しか高市自民に投票していない。自民議席が激増した主因は「小選挙区マジック」。投票数に占める自民得票率は37%。37%の得票で68%の議席を付与する選挙制度に問題がある。与党がその選挙制度をさらに「改悪」する検討を進めている。この問題については投稿を改めて論じる。
<プロフィール>
植草一秀(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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