「ゲスの極み」は誰か!?
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NETIBでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、甘利明経済再生担当相をめぐる金銭授受疑惑に関して言及した、1月23日付の記事を紹介する。
耳を疑う発言だった。甘利明経済再生担当相をめぐる金銭授受疑惑に関し、自民党山東派の山東昭子会長が発言した。その模様が報道された。
「政治家自身も身をたださなければならないが、(週刊文春に)告発した事業者のあり方も『ゲスの極み』。まさに『両成敗』という感じでたださなければならない」
こんな発言をする人物が参議院議員を務め、自民党の派閥の領袖を務めている。さすがは金権腐敗体質の政党の派閥領袖であると、称えるべきか。
週刊誌を通じて告発した人物は氏名も公表している。どのような人物であるのかははっきりしない。しかし、公職選挙法や政治資金規正法に抵触する可能性のある犯罪性の高い事案を告発したのである。問われるべきは、この問題事案であって、内部告発という行為ではないはずだ。これまで公表されている内容からすると、告発者はいわゆる贈賄側の実行人物であるということになる。汚職は金品を提供する贈賄側と金品を受け取る収賄側の二つによって成立する事案であるから、収賄側の責任が問われるだけではなく、贈賄側の責任も問われることになる。
贈賄側の責任が問われるという意味で発言したのならともかく、発言そのものは、こうした機密案件を告発した、その行為を批判しているように見える。
このような事案が明るみに出るきっかけの多くは内部告発である。犯罪性の高い事案があり、その事案を告発する人物が存在する場合、この告発者は隠ぺいされていた犯罪性の高い事案を、広く世に知らしめたことで、称えられることはあっても、批判されるべき存在ではない。内部告発を促進することが、このような汚職=経済犯罪を抑止する、重要な抑止力になる。公益通報者保護法が制定されたのは、こうした内部告発を積極的に支援するためである。
山東昭子氏の発言は、こうした内部告発の行動そのものを「ゲスの極み」であると批判するものである。「ゲスの極み」のスキャンダルが広がっているが、思わぬかたちで、さらなる展開を示してしまった。山東昭子氏の心情は、「賄賂の贈呈という、何よりも隠ぺいしなければならない行為を告発することなど、「ゲスの極み」だ」ということなのだろうが、驚愕の発言と言わざるを得ない。
甘利明氏は、問題になっている企業の社長と面会したことを認めているが、週刊誌が指摘する現金の受領については、記憶が定かでないと述べている。この程度の金額の受領は、記憶の外にあるというのは、日常茶飯事であるから、いちいち覚えてはいられない、ということなのだろう。そのような現金受領は一切行わない、と言うなら、この事案についても、現金受領はない、と断言できるはずだ。しかし、記憶があいまいではっきり答えられないということは、少なくとも、類似した事案が多数存在することを想起させるものである。
1月20日の記者会見で甘利明氏は、「私は、今日まで政治家として法に反するようなことはやってきていない」と述べていたが、1月21日の国会質疑では、これが、「私は、今日まで政治家として法に反するようなことはやってきていないつもり」に変化した。「やってきていない」と「やってきていないつもり」では天と地の開きがある。
これまでの発言を見ると、いわゆる「あっせん利得罪」に該当する犯罪行為は、すべて秘書の責任として処理し、現金受領は正規の政治資金受領として押し通す算段なのだと思われる。告発者は、写真、録音データなど、多くの証拠を保持していると見られるから、甘利氏が事実に基づかない逃げ道を作ろうとしても、容易ではないと推察される。
菅義偉氏、麻生太郎氏、甘利明氏の3名は、第二次安倍政権を支える三本の矢と呼べる存在である。その一角が重大な経済犯罪事案で転落するということになれば、政権の命運は一気に暗転する。現段階では、まだ真相が明らかではないから、今後の真相究明が何よりも強く求められるが、この事案を契機に、政局の流れが劇的に転換することになるなら、主権者にとって悪いことではない。
※続きは1月23日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1348号「甘利明氏が小沢一郎氏だったらと考えてみる」で。
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