「悪魔の瞳」が出現 猪苗代湖の変貌

福島自然環境研究室 千葉茂樹

画像1

 8月13日、この夜の「令和8年8月千葉豪雨」を暗示するかのように「悪魔の瞳」が現れた(画像1)。8月13日午後の猪苗代湖の姿である。いつもは美しい猪苗代湖である(リンク1の画像12)が、この日は不気味な姿であった。まるで「悪魔の瞳」であった。この夜、関東圏、とくに千葉県では猛烈な豪雨となり、市街地は泥の海と化して、大被害となった。その前触れのような姿であった。

 いつもの猪苗代湖は優美で美しい。その別名「天鏡湖(てんきょうこ)」のように、天空を美しく映し出している(リンク1「雪解けの磐梯山(前)─異常に早い雪解け─」)。

 この日は、久しぶりに磐梯連峰が麓から望めた。早速、赤埴(あかはに)林道を車で登り、赤埴山に行った。歩き始めて20分ほどは日が射して、東側にある吾妻連峰が望めた。ところが、30分過ぎから、ガス(霧・雲)がかかり始めた。眺望が利く場所まで行くと、足元までガスがかかり、ガスの彼方に霞んだ山麓の風景が見えた(画像2)。

画像2

画像3

 さらに進んで、猪苗代湖が望める場所まで行くと、一時的にガスが切れ、強い日差しに照らされた猪苗代町中心部が見えた(画像3)。ただ、猪苗代湖には日が差しておらず「灰色」であった。その1分後、猪苗代湖の色が「灰色から青色」に変わった(画像4)。撮影場所はガスのなかで、手前の斜面は薄暗く、猪苗代湖のみが「青色」に輝き、その上の雲は「灰色」であった。暗闇のなかで「青く輝く猪苗代湖」、極めて幻想的で「不気味」であった。このように見えたのは、ほんの1分程度で、その後はガスのなかに消えた。

画像4

 余談である。この撮影の直後、雷鳴が響き渡った。南東側約10kmにある川桁山塊からである。山の上での雷鳴は、とにかく大きく聞こえ恐怖感が強い。雲の移動方向が北西方向なので、間違いなく雷雲がやってくる。この直後、私は走り出した。私は70歳近くの老人であるが、下りの山道約1kmを3分30秒で駆け抜けた。退避中に撮影した写真(撮影日時がある)および地図を見ると、間違いなくその距離と時間であった。人間は面白い動物で、恐怖にかられると思わぬ力が出る。ただし、「ここまでくれば大丈夫」と思った場所から車までの約150mは2分もかかった。その後、磐梯連峰も麓の猪苗代町も大粒の雷雨に襲われた。


<プロフィール>
千葉茂樹
(ちば・しげき)
千葉茂樹氏(福島自然環境研究室)福島自然環境研究室代表。1958年生まれ、岩手県一関市出身、福島県猪苗代町在住。専門は火山地質学。2011年の福島原発事故発生により放射性物質汚染の調査を開始。11年、原子力災害現地対策本部アドバイザー。23年、環境放射能除染学会功労賞。論文などは、京都大学名誉教授吉田英生氏のHPに掲載されている。
原発事故関係の論⽂
磐梯⼭関係の論⽂
ほか、「富士山、可視北端の福島県からの姿」など論文多数。

関連記事