地域医療の充実に向け一世一代の移転計画
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(医)輝栄会 理事長 中村 吉孝
地域に根ざして半世紀
現在、福岡市東区千早で福岡輝栄会病院を運営しています。当院は1961年に小児科診療所を開設し、以降、増棟増床を行いながら、地域医療に取り組んできました。一部施設の経年、また十分な医療遂行には手狭であるため、このほど2015年冬着工をメドに、同区内に新病院の建設と移転を決めました。現病院は、病気や傷病での緊急入院などの一般床が186床、回復期リハビリが28床、寝たきりの高齢者療養が45床で構成されています。本部機能は新病院に移しますが、一度に全機能を移すわけではありません。一期工事で186床移し、残りは現病院に残します。その後、2年から2年半、新病院の様子を見ながら、最終的には二期工事で残りを移転する予定です。
民間病院はそれぞれ特長を打ち出しながら、地域住民に医療サービスを提供していますが、現在、民間病院は大きな岐路に立たされています。補助金のない民間病院としては、過大な借入金は避けたいところですが、地域の医療ニーズに対応するためには、どうしても一定の設備投資は避けられません。療養の道を選べば、抱えるスタッフ、投資も少なくて済みますので、楽ではありますが、父が創業したこの地で仕事をするのであれば、厳しい道を選ぶべきではないかと思いました。
地域住民にとって身近な病院でありたい
高度先進医療、難病は高度急性期病院と連携し、「Common Disease」と言われる普通の人が普通にかかる病気を診ていきたいというのが、基本コンセプトです。胃腸炎や腎炎、脳卒中、心臓病など誰でもかかる可能性があるが、超高難度の技術が必要ではない患者さんを対象に考えています。特定の症例に特化することも特長を生かす1つの方法ですが、当院としては、地域における「コンビニエント」な病院でありたいと思っています。
そのうえで、医師の確保が重要な仕事の1つになります。人材確保はどの病院でも大きな課題となっており、競争も厳しくなっていますので、当法人でも今後の課題となっています。病気や傷病を治療することはもちろん、地域の雇用を支えるという意味で、医療機関の果たす役割は大きいと感じています。介護はロボットではできません。人が人の手でお世話をせざるを得ません。今後も50年、100年先でも事業としては必要とされる領域です。
生涯一度のチャンス
先代―父の時代は、経営のことをあまり考えなくても利益が残せていた頃もあったと思いますが、今は違います。医療費の問題もありますが、総じて世間の見る目が厳しくなったと感じます。施設の充実や細やかなサービスも求められます。
私も、病院を運営する意義や責任といったものを意識しながら取り組んでいます。経営が揺らいでいる病院も少なくないなか、「地域のために誰がやるべきか」という視点が最終的に重要になってきます。
今回の病院移転に関しては、リスクもともなうことから周囲からの助言のなかには「あまりに背伸びしすぎではないか」という反対意見もありました。しかし、私にとっては「生涯一度のチャンス」であると同時に「絶好の時期でもある」と説得して、計画をスタートさせました。今後とも、地域の人に信頼されるように、さらに医療体制を充実させていきたいと思います。(談)
<INFORMATION>
医療法人 輝栄会
代 表:中村 吉孝
所在地:福岡市東区千早5-11-5
設 立:2007年4月
TEL:092-681-3115<プロフィール>
中村 吉孝(なかむら よしたか)
1960年生まれ。福岡県出身。福岡大学医学部卒後、福岡大学病院で外科医として入局。その後、九州大学附属生体防御医学研究所病院、国立病院九州がんセンター、(財)天理よろず相談所病院を経て、現法人の設立に至る。法人名
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