韓国経済ウォッチ~危険度ナンバー1は、やはり家計負債?(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
2016年1月の韓国輸出は、前年同月比で18.5%も減少し、韓国政府にショックを与えている。また、日本銀行は2月5日に急遽マイナス金利を導入し、海外で日本と競合することの多い韓国にとっては、その影響に神経を尖らせている。それに、韓国の最大の貿易相手国である中国も、景気失速で世界経済の懸念材料になっているし、資源国は原油価格の暴落で資源関連企業の破綻が心配されている。
このように、韓国を取り巻く世界の経済状況はとても厳しく、今後、韓国経済は低成長が固着する可能性が高いと言われている。韓国経済が予想外の低成長に陥ったときに、一番問題になるのは何だろうか。多くの専門家は、韓国の家計負債を一番に挙げている。また海外でも、家計負債についてはずっと警鐘を鳴らしている。
負債は、現在の状況では実現できないことを、他人の力を借りて実現してくれるので、社会が発展していくなかでは、とても有効な手段である。とくに事業が成長する過程では、負債をしてでもその成長にペースを合わせないと、チャンスを失うことさえある。また個人レベルでも、社会が成長するときには、銀行からお金を借りて住宅などを購入すると、値上がりして個人の資産形成に貢献することがある。このように、負債には良い機能もある。しかし、負債は条件が変わると、まったく逆の機能が働くことになる。
不動産がずっと上がり続けていた時代とは違って、今のように景気が悪くなってくると、不動産の値上がりを予想して負債で不動産を購入したことによって大損害を蒙ることが、今、韓国で起ころうとしている。これから韓国の家計負債を取り上げる前に、韓国の家計負債の範囲についてまず触れておこう。
韓国には、他の国では存在しない独特な賃貸制度がある。「全貰(ジョンセ)」という制度だ。住宅を借りる人は、入居するときに、まとまった金額を家主に預ける。そのお金は、住宅を明け渡す際に全額そのまま返してもらう。この制度は、韓国が高金利であった時代に定着した制度である。
家主はテナントからは何の収益も発生しない代わりに、その保証金を高利で貸して収益を得ていたのだ。低金利時代になった今では、この制度は崩壊しつつあり、毎月の家賃にシフトしつつある。すなわち、保証金は金融機関から借りたお金ではないため統計には表れていないが、保証金は実は統計になっていない負債だという事実だ。この金額が今の家計負債には含まれていないので、韓国の家計負債は実際より金額が少なくなっていると言うことだ。(つづく)
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