2024年11月26日( 火 )

名門「筑女」、内部対立の背景~財務を脅かす学生減少

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創立110周年を前に理事長と教職員が対立

学校法人事務局がある大学キャンパス<

学校法人事務局がある大学キャンパス

 福岡県内で大学、高校、中学、幼稚園を運営し、「筑女」の略称で知られる学校法人 筑紫女学園で、理事長と教職員が学園運営をめぐり対立。その内容を地元紙(西日本新聞)が報じ、来年(2017年)に創立110周年を迎えようとしている看板に泥を塗るかたちとなった。

 学校法人 筑紫女学園は、加盟する法人と教育機関の数で日本最多と言われる浄土真宗本願寺派(西本願寺派)系列の龍谷総合学園グループに属する。現理事長の笠信曉氏は龍谷大学大学院卒。福岡県糸島市にある法林寺の住職で、学校法人 法林学園 アソカの森幼稚園(福岡市西区)の理事長も兼任している。西日本新聞によると、教職員側は、笠理事長について「独善的な運営が目立つ」「経営判断能力に欠けている」として早期辞任を要求。理事長に対する不信任決議は、中学・高校の教職員も含めて昨年11月から半年のうちに計4回上がっており、これに学園教職員の95%が賛同しているという。

 対立の背景を財務面から探った。同法人の財務内容【表Ⅰ】は、2015年3月期において、借入もわずかで長期借入金はゼロ。約36億円のキャッシュ、固定資産は土地が約18億円、建物・構築物が約80億円を含めて約200億円。極めて盤石な財務基盤を形成していると言える。しかし、学生数の減少による収入減によって、その将来には暗雲が漂い始めている。帰属収入から消費支出(人件費、教育研究経費、管理経費、借入金等利息、資産処分差額など)を引いた収支差額の帰属収入に占める割合(帰属収支差額比率)は、14年度で1.9%。近年減少が続いており、10年度8.4%であったがマイナス寸前まで落ち込んだ。

減少する収入と抑えられない人件費

 収入減の要因は、減少に歯止めがかからない学生生徒等納付金(授業料、入学金、施設設備資金収入など)と、上昇傾向の人件費にある(【表Ⅱ】参照)。入学者数は、15年5月1日現在、大学587名(入学定員720名)、高校504名(同550名)、中学197名(同250名)、幼稚園89名(同80名)、合計1,381名(同1,610名)と定員割れの状況だ。

 減少やむなしの学生数に対して、人件費をどう抑制していくか、まさに経営判断が問われるところ。同学園もこの問題は認識しており、前出の帰属収支差額比率1.9%が、全国平均(医歯系法人を除く)の5.2%、同規模法人の7.7%に比べて低いことを指摘した財務分析を公表している。また、同学園の帰属収入に占める人件費の比率が14年度66.5%と、全国平均52.4%、同規模法人50.7%に比べて高いことも示されている。笠理事長は07年に就任し、現在で3期目。上記した経営悪化への責任が問われる。身を切る改革を断行するにはトップの倹約も求められる。

 なお、取材に対し、学園側は、「皆さまへご心配をおかけし、申し訳ありません」(広報担当)としたうえで、「事実関係を学内で精査中のため個別の取材には応えかねます」(同)との回答があった。

【山下 康太】

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