新たな都市空間へと生まれ変わる、箱崎・九大跡地の未来は
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九州大学・箱崎キャンパス跡地周辺一帯にあたる「福岡箱崎地域」が12月22日、規制緩和や税制優遇などによって民間開発を促す「都市再生緊急整備地域」の候補地域となった。内閣府からの指定による。現在、同地では、伊都キャンパスへの統合移転完了後に残される広大な敷地の有効活用をめぐって協議・検討が重ねられているが、今回の「都市再生緊急整備地域」の候補地域への指定により、今後の再開発および新たなまちづくりに弾みがつきそうだ。
今回、「福岡箱崎地域」が候補地域に指定された「都市再生緊急整備地域」では、建設される建物の容積率や建ぺい率が緩和されるほか、不動産取得税や固定資産税、都市計画税などの軽減措置や金融面での優遇措置が受けられる。現在、全国53カ所が指定されており、ここ福岡ではすでに博多港やJR博多駅周辺を含む博多・中央区の都心地域と、東区のアイランドシティの2カ所が指定されている。今回の候補地域の発表は、今後整備地域に指定される可能性が高い地域として早い段階でアピールすることで、より多くの民間投資を呼び込むことが狙いとされている。
箱崎キャンパスより先行して、2009年10月に移転が完了した六本松キャンパス跡地では、福岡市科学館や蔦屋書店が入居する複合施設「六本松421」が17年9月にオープン。JR九州による、同社沿線以外での初めての大規模開発ということもあり、一躍脚光を浴びた。六本松キャンパスに遅れること10年弱、18年度中の移転完了を予定している箱崎キャンパス跡地の今後についても現在、注目が集まっているが、ここで改めて同地を取り巻く現状について見てみよう。
同地は、福岡市の都心部にもほど近い東区の箱崎地区に位置しており、周辺には多々良川、宇美川が流れ平坦な市街地を形成。福岡空港や博多港、博多駅、福岡インターチェンジなどが6km圏内にあり、地下鉄箱崎線、JR鹿児島本線、西鉄貝塚線の駅からも近い交通至便地となっている。また、陸海空の物流拠点が近隣に位置しており、キャンパス周辺の幹線道路は、それらを結ぶ重要な動線でもある。さらに、ルミエールやドン・キホーテ、マックスバリュなどのディスカウントストア、食品スーパーが乱立する激戦区でもあり、ゆめタウン博多やイオン香椎浜などの大型商業施設も比較的近い場所にある。
こうした周辺環境に加えて42.6haという広大な敷地が、福岡市街地に残された21世紀最大の大規模開発用地として注目されており、跡地利用をめぐっては計画的なまちづくりと円滑な跡地処分に向けて、12年3月に「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン検討委員会」が設置。13年2月に同委員会より「九州大学箱崎キャンパス跡地利用将来ビジョン」が提言され、この将来ビジョンの実現に向けて「箱崎キャンパス跡地利用協議会」が設立され、協議・検討が重ねられている。すでに17年12月までに12回の協議会が開催され、少しずつ再開発後のビジョンの輪郭が現れてはきているが、まだまだこれからといったところだ。現在、検討されている都市基盤の整備案は、箱崎キャンパス跡地のみならず、貝塚駅周辺や現・箱崎中学校の敷地などのエリアも含めた全体を、北エリア(約20ha)と南エリア(約30ha)の大きく2つのエリアに分けて都市基盤を進めていくというもの。北エリアでは福岡市による土地区画整理事業が、南エリアではUR都市機構による開発行為がそれぞれ行われる。
今後のスケジュールの見通しについては、18年度までに環境アセスの手続きを終えるとともに、まちづくりガイドラインを策定。また並行して、用途地域や土地区画整理事業などの都市計画の変更を進めていく。そうしたことを踏まえて、南エリアは19年度の公募を経て22年度の引き渡しを、北エリアでは20年度の公募を経て24年度の引き渡しを目指している。こうした動きと並行して、16年秋には福岡市の新プロジェクト「FUKUOKA Smart EAST」が発表された。これは、広大な敷地で新たなまちづくりを行うことができる強みを生かし、「跡地利用将来ビジョン」や「跡地利用計画」を踏まえながら、モビリティやセキュリティ、エネルギーといった最先端の技術革新による、快適で質の高いライフスタイルと都市空間の創出に向けて取り組むもの。本格的な検討についてはまだこれからの段階だが、このエリアを世界一のスマートシティにしていこうというプロジェクトだ。
さらに福岡の財界からは、現在博多駅東地区の福岡合同庁舎に入居している九州地方整備局や九州経済産業局などの国の出先機関を同地に移転するよう求める声もある。このように九大・箱崎キャンパス跡地をめぐっては現在、さまざまなプロジェクトが複合的に絡み合いながら進行している状況にある。
箱崎キャンパスが位置する箱崎のまちは、古くは筥崎宮を中心とした千年以上の歴史を有するほか、唐津街道の宿場町としても栄えてきた地域。1911年に九州大学がこの地に創立されて以降は、大学とともに発展してきた“百年の知の歴史”をもつ場所でもある。今後、この地で新たなまちづくりを行っていくにあたっては、いかにして福岡らしさを残していくかも問われてくるだろう。本格的な都市の形成はまだまだこれから先にはなるが、これまでの福岡の歴史を継承しつつ、どのような新たな都市の魅力を付加していけるか。100年、200年先の未来にまで受け継がれる都市基盤となるような、世界に誇れる新たな都市空間の誕生に期待したい。
【坂田 憲治】
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