父親に敗訴した大塚家具の久美子社長を襲う「売上激減」の衝撃(前)
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(株)大塚家具の経営権を巡る父娘の対立はひとまず終結した。大塚勝久前会長(72)が、長女の久美子社長(48)が役員を務める資産管理団体(株)ききょう企画に15億円の支払いを求めた訴訟で、東京地裁(小野瀬厚裁判長)は4月11日、請求通り15億円の支払いを命じた。敗訴した久美子氏側は控訴せず13日に全額を支払った。法廷での親娘の対決は終わったが、新たな家具販売会社を立ち上げた勝久氏との商売対決が始まる。
法廷対決は父親が勝訴
大塚家具の経営権を巡る父親の勝久氏と長女の久美子氏の対決は、2015年3月の株主総会で委任状争奪戦(プロキシーファイト)にまで発展した。一族の資産管理会社ききょう企画の支配権を握った久美子氏が多数を得て経営権を掌握した。
ききょう企画は大塚家具の189万株(発行済み株式の9.75%)を保有する筆頭株主。勝久氏が130万株の大塚家具株をききょう企画に譲渡した際、ききょう企画が発行した15億円分の社債と交換する形で譲渡していた。2013年4月が社債の期限だったが、期限になっても償還されないとして、15年2月に勝久氏がききょう企画を提訴していた。
東京地裁は4月11日、勝久氏の主張を認め、ききょう企画に15億円の支払いを命じた。
ききょう企画は勝久氏の妻の大塚千代子氏が10%、長女の久美子氏、長男の大塚勝之氏ら兄弟5人が各18%を持つ。勝久氏についた妻、長男と、久美子氏と弟妹3人との間で骨肉の争いがあり、久美子氏がききょう企画の支配権を握った。
長女側が背負った17億円の借金
敗訴した久美子氏側の選択肢は3つあった。1つは、代物弁済で130万株を勝久氏に返す。勝久氏が経営権を取り戻すことになるから、これは絶対に避けたい。
2つは、ききょう企画が保有株を大塚家具に売却して現金をつくる。大塚家具は2月12日に100万株、18億円を上限とする自社株取得を決議した。保有株を勝久氏に渡すことは阻止できるが、ききょう企画が筆頭株主でなくなる。これも避けたい。
3つが、ききょう企画が大塚家具株を担保にカネを借りる。ききょう企画は筆頭株主にととどまることができるが、その代わり莫大な借金を背負う。
久美子氏が採ったのは、3つ目の借金をして、社債分を返すだった。久美子氏側は、ききょう企画が保有する大塚家具189万株を担保に銀行から借り入れ、4月13日、勝久氏に利息を含む17億円を支払った。これを受けて、勝久氏側は、久美子氏がききょう企画の大塚家具株を自分名義にしたことを無効にするよう求めた訴訟を15日に取り下げた。
これで法廷での父娘の対決は、父親の勝利で終結した。ききょう企画は17億円の巨額な借金を抱えることになった。ききょう企画は大塚家具の株式を保有している資産管理会社。大塚家具の配当金が収入になる。大塚家具の15年12月期の配当金は1株80円。高額配当は委任状争奪戦の産物で、通常は1株40円。ききょう企画が受け取る配当金は7,560万円。株主である親兄弟姉妹の取り分になる。
しかし、彼らは一枚岩ではない。配当金を全額、借金の返済に充てるわけにはいかない。最も望ましいのは、株価を引き上げて、ききょう企画名義の大塚家具株の一部を高値で売却し、借金を完済するというシナリオだ。借金は消え、株式は大半が残るからだ。そのためにも大塚家具の業績を伸ばして結果を出さなければならない。
(つづく)
【森村 和男】関連キーワード
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