2024年11月06日( 水 )

父親に敗訴した大塚家具の久美子社長を襲う「売上激減」の衝撃(後)

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問われるビジネスモデルの転換

 昨年3月の株主総会で父に勝利してから1年。久美子社長の経営者としての手腕が問われ始めている。

 大塚家具の2015年12月期単独決算は売上高が前期比4%増の580億円、営業利益は4億3,700万円の黒字(前期は4億200万円の赤字)に転換した。経営権をめぐる混乱に対するおわびとして昨年春に実施した「お詫びセール」や昨年末の店舗改装前の「全館全品売り尽くしセール」が堅調だった。特に全体の売上高に占める割合が高い応接家具やダイニング家具が伸びた。

 しかし、今年に入ってからは業績が振るわない。店舗改装後の売り上げは前年割れが続く。月次の売上高は、1月は前年同月比10.7%減、2月は3.7%減、そして3月は11.8%減。これは衝撃的な数字だ。

idc_ootukakagu 前年3月は、父娘のバトルが連日ワイドショーを賑わし経営が大混乱に陥った時。3月の売上高は37.8%減と激減した。今年はプラスに転じてしかるべきだが、逆に減少幅が強まった。騒動前の水準と比べると、単純計算で5割近く売り上げが落ちていることになる。
 
 久美子社長が正念場を迎えるのは5~6月だろう。昨年は「お詫びセール」で5月の売上高は70.0%増、6月は49.6%増と爆発的に伸びた。今年は、その反動で減少幅が大きく出ることは避けられない。経営者は結果がすべてだ。「お詫びセール」の反動で売り上げが激減するのは仕方がないという言い訳は通じない。

 久美子氏は勝久氏がつくり上げたビジネスモデルの変革を掲げてきた。気軽に立ち寄れるように会員制を廃止し、高価格帯の商品を縮小して中価格帯を強化した。久美子氏のビジネスモデルの成果が問われる正念場である。5~6月の売上高が前年の5割を割る事態になれば、久美子氏はピンチに立たされるだろう。

父親の高級家具販売店が開店

 一方、父親の勝久氏は、新たに立ち上げた家具販売会社匠大塚(株)(東京・日本橋)の営業を4月22日に始める。会社は15年7月に設立。勝久氏が会長で、長男の勝之氏が社長。妻の千代子氏、大塚家具前総務部長の池田真吾氏と前財務部長の所芳正氏が取締役だ。

 軍資金は勝久氏が保有していた大塚家具株。昨年8月から同社株の売却を進め、年末までに163万株あまりを売った。今年はさらに20万株を売った。これに久美子氏側に勝訴して手に入れた17億円がオンされる。

 匠大塚は高級家具を扱い、予約制で内覧を受け付け、対面販売という勝久氏がつくった大塚家具の販売手法を採り入れる。

 会員制をやめた久美子氏と、会員制を復活させる勝久氏。顧客戦略は、どちらに軍配があがるか。父娘バトルの第2ラウンドのゴングか鳴った。

(了)
【森村 和男】

 
(前)

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